在りし日の歌

編集のまずさが映画を壊している

この単調さで3時間超はちょっとばかりつらいですね。

その上、編集が時間軸をあっちへ行ったりこっちへ行ったり(来たり?)と最後まで散漫です。これでは伝わるものも伝わりません。

もし見ようと思われるのであれば、少なくとも公式サイトには目を通しておいたほうがいいと思います。

  

在りし日の歌

在りし日の歌 / 監督:ワン・シャオシュアイ

とにかく、なぜこんな編集をする? と気になって最後まで集中できません。編集に必然性が感じられません。回想でもなんでもありません。ただ行ったり来たりするだけです。

時間軸を移動するたびに、えーと、この時のヤオジュンとリーユン(主人公の夫婦)の心情はどうだったっけ? と頭の中を整理しなくちゃならなくなります。

そんなリスクを冒してその代わりに得られるものは何なんでしょう?

私にはわかりません。

相当怒っていますね(笑)。

そりゃ確かに、何も知らなくてもしばらく見ていれば基本的な物語はわかります。でもそういう映画じゃないはずです。30年(以上?)にわたる、「一人っ子政策」に翻弄される市井の人々の心情を描く映画でしょ。奇をてらったことをしなくても(基本、)普通に時間軸にそってじっくり描いていけばいいじゃないですかね。

気を静めて(笑)、時間軸に沿って整理していきますと、基本の物語はこういうこと(だと思います)です。

文革後の国営工場で働くヤオジュンとリーユンにはシンという男の子がいます。同僚には同じ日に生まれたハオという男の子を持つインミン、ハイイエン夫婦もいます。ふた家族はお互いを義両親(違う訳だった)と言い合うほど親しくしています。

そんな時リーユンが二人目を妊娠します。時は一人っ子政策の時代です。罰則覚悟で生むつもりのリーユン夫婦ですが、班長となっていたハイイエンが自分の責任になると言って無理やり中絶させます。

そうしたわだかまりも消えた頃(だと思う)、ため池へ水遊びに行ったシンが溺れて死にます。直接の原因は一緒に遊んでいたハオがシンを突き飛ばしたことです。

その後、工場で人員整理があり、リーユン夫婦は解雇され、海辺の町に引っ越します。ふたりは養子をむかえ、亡くなった息子と同じ名前でシンと呼んでいます。しかし、シンは反抗的でトラブルが絶えず、家を出ていきます。

そして(映画の始まりから)30年後、インミン、ハイイエン夫婦は経済的に成功し裕福になっています。しかし、ハイイエンは病床にあり長くはありません。リーユン夫婦も故郷に戻ってきます。ハイイエンはリーユンに許しを請い亡くなります。

葬儀の日、成長し医師となっているハオはシンが溺れた日の真相をリーユン夫婦に打ち明けます。自分がシンを突き飛ばしたことが原因だと。

養子のシンから電話が入り、今恋人とともに家に戻ったと言います。

翌日、リーユン夫婦は丘の上のシンの墓を訪れ感慨にふけります。

というのが基本の物語で、原題は「地久天長」英題は「So Long, My Son」です。

海外版のトレーラーの出来がいいですね(笑)。これは無茶苦茶見たくなります。


SO LONG MY SON by Wang Xiaoshuai (Official international trailer HD)

このトレーラーのようなつくりにすればよかったのに(笑)とは余計なこと。ただ、くどいようですが、はっきりとどういう時のどういう状況か掴みきれなく、うまく時間軸の中におさめられないシーンがいくつもあり、とても残念な映画です。

ヤオジュンとリーユンの結婚前の出会いののようなシーン、シンが生まれたあたりのシーンも何シーンかありました。同僚のカップルの出会いのシーンもありました。ある種群像劇的ともいえるつくりにも見えました。残念ですね。

ヤオジュンの工場作業の生徒でもあり、ハイイエンの親族(よくわからない)でもあるモーリーという女性がいます。ヤオジュンが作業を教えるシーンが何シーンかあり、パーティーのようなシーンではモーリーがヤオジュンを異性と見ていると思えるシーンもありました。

こういうことです。ヤオジュンたちが故郷を去って移った町にわざわざモーリーが訪ね、ホテルで会うシーンがあります。後日、モーリーはあの時の一回で妊娠したのとヤオジュンに告げに来ます。

なにこれ? その子どもはどうなったのでしょう?

映画を見ている時は、リーユン夫婦が養子としてむかえたシンがその子どもかと思ってみていましたが、それですと年齢があわないですね。

なお、ラストシーンではハイイエンの葬儀のときだったかにモーリーがアメリカからスカイプで息子を皆に紹介していましたが、字幕ではその子をハーフと入れていましたのでヤオジュンの子ではないですね。

そういえば、リーユンがヤオジュンにあなたが離婚したいのなら私は受け入れると強い口調でいうシーンがありましたが、あれはどの時点だたのでしょう?

というように、見ていてもうまく収まらないシーンがいっぱいありとても気持ち悪い映画です。

で、描かれているのは、結局のところ、現在の経済的に繁栄する中国から苦しかった過去を振り返る現状肯定の感傷映画だと思います。

ワン・ジンチュン(リウ・ヤオジュン役)さんとヨン・メイ(ワン・リーユン役)さんが昨年2019年のベルリンで最優秀男優賞と最優秀女優賞を受賞しています。

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  • 発売日: 2011/02/25
  • メディア: DVD