カトリーヌ・ドヌーブさんと堺正章さんが幽霊になるお話し…
「カトリーヌ・ドヌーブ、竹野内豊、堺正章、風吹ジュン」これ、どういうキャスティング? それにエリック・クー監督って誰? という不思議な映画です。

ネタバレあらすじ
エリック・クー監督
特にこれを見せたいという意志も感じられませんし、シナリオも演出もぎこちないですし、そもそものテーマもありきたりですし、なぜこの映画がつくられたのか、それが一番気になります。
昨年2024年の東京国際映画祭のガラ・セレクションという括りで上映されています。直前開催の釜山国際映画祭がプレミア上映です。
エリック・クー監督の名は初めて目にしますが、現在60歳、シンガポールでは著名な監督さんのようですし、海外の映画祭への出品も多いみたいです。それに過去に斉藤工さんと松田聖子さんの「家族のレシピ」という映画があります。
この映画についてのエリック・クー監督のインタビュー記事を読んでみましたが、それでもどこの誰に何を伝えたくてつくった映画なのかよくわかりません。ただ、映画のテーマについてこんなことを話しています。
Wouldn’t it be nice if you finally met your soulmate in death if you hadn’t had the opportunity while you’re alive? This is a positive spin on death and the afterlife which I hope the viewers will take away with them.
(VOGUE)
生きている間には会えなかった運命の人に死後に会えるとしたらそれは素敵だとは思いませんか? これは死と来世を前向きにとらえた映画です。ご覧になる皆さんにも感じ取っていただければと思います。
そのヴォーグシンガポールの記事によれば、シャネルからの資金援助と一部ジュエリーと衣装提供があったそうです。
悩める人を見守る幽霊
ということで物語は、インタビュー記事にある「運命の人に死後に会える」というよりも、死んだ人間が生きている悩める人を導くという内容かと思います。いや、導いていないので見守るですね。
まず死ぬ人はフランスの歌手クレア(カトリーヌ・ドヌーヴ)と日本人のユウゾウ(堺正章)です。ユウゾウは若い頃にバンドをやっており、クレアの生涯のファンです。
ユウゾウには離れて暮らす息子ハヤト(竹野内豊)がいます。ハヤトはアニメーションの監督であり、過去に2本のヒット作を出しています。しかし、次作の制作に行き詰まっています。
ユウゾウはハヤトの母メイコ(風吹ジュン)とはハヤトが生まれてすぐに別れており、今は一人暮らしです。メイコはユウゾウのバンドのヴォーカル(多分…)でした。
という設定で、クレアとユウゾウが時を同じくして死にます。ユウゾウは一人暮らしの自宅で、クレアは何十年ぶりかの日本公演のために訪れた高崎で亡くなります。クレアは公演後に立ち寄った居酒屋で突然死します。その瞬間、クレアの魂は幽体離脱します。そしてユウゾウの魂と出会います。
ですので、あえて言えばユウゾウにとって運命の人クレアに会うということではあります。これ以降、クレアとユウゾウは幽霊です。
父の死の知らせをうけて実家に戻ったハヤトは、父が残した「思い出のサーフボードをメイコに届けてほしい」との書き置きを見つけます。ハヤトはメイコが暮らす千葉(らしい…)に向けて父が残した愛車を走らせます。
メイコのもとを訪ねたハヤトはメイコが再婚し孫までいることを知ります。当初はショックをうけた(ようだったけどよくわからない…)ハヤトですが、その後、メイコの夫や孫とも打ち解けてしばらく千葉に滞在します。しかし、次作の構想がまとまらず、プロデューサーからの催促もあり悩んでいます。
そんなハヤトがついに行き詰まったのでしょう、酒をがぶ飲みし、そのまま海に入っていきます。たまたま見つけたメイコの孫が救います。
というような悩めるハヤトを見守る幽霊のクレアとユウゾウという映画です。そしてクレアとユウゾウは成仏していきました。
こんな物語だったと思います。
感想、考察:未完成過ぎる
とにかく、いろんな点で未完成の映画です。
幽霊のクレアとユウゾウはフランス語と日本語でやり取りするわけですが、この間合いの悪さはもう表現しようのないくらいです。台詞もよくありませんし、カット割りもすべて切り返しですので、これ、別撮り? と思うくらいです。
カトリーヌ・ドヌーヴさんも、まあ、その存在感だけで意味はあるとは思いますが、この映画をどの程度理解しているんだろうという感じがします。
堺正章さんのゆっくりした台詞回しが俳優の役作りなのか演出なのかはわかりませんが、うまくいっていません。演出ミスです。
とにかく、どこの誰をターゲットにしているかわからない映画です。
ああ、見に行った私みたいな人ということですかね(笑)。