トランプよりも、ロイ・コーンのキャラクターにびっくり!
これから4年間、毎日のようにテレビや新聞でその名を目にすることになるドナルド・トランプ大統領、その若き頃の伝記的映画です。20代半ばから40歳くらいまでが描かれています。監督は「ボーダー 二つの世界」「聖地には蜘蛛が巣を張る」のアリ・アッバシ監督です。
トランプではなく、ロイ・コーンにびっくり!…
アッバシ監督はいろんな映画を撮ります。「ボーダー 二つの世界」では北欧に伝わる怪物的妖精を描いたダークファンタジー、「聖地には蜘蛛が巣を張る」ではイランの女性蔑視的連続殺人犯を描いた犯罪映画、そして今回はつい2、3日前にアメリカ大統領に就任したドナルド・トランプの若き頃の伝記的映画です。
アッバシ監督にはこういう映画が撮りたいといった信念みたいなものがないのかも知れません。いや、別に、面白い映画を撮ってくれればいいわけですのでそれで何も問題はありません。
この「アプレンティス」は脚本を書いているガブリエル・シャーマンさんから声を掛けられたといった記事がありました(ソース未確認…)。ジャーナリストみたいです。
この映画、1週間前の1月17日に公開されていたのですが、当初はアッバシ監督の映画だとは気づかず、また特にトランプさんに興味もありませんのでスルーしていたのですが、え? そうなのと気づき見てみました。
見てびっくりしました。いや、トランプではなく、ロイ・コーンのキャラクターの濃さにです。そもそもトランプの過去に興味などありませんし、どういう人脈を持っている人かもまったく知りませんでしたので、こんな人がいたの?! とびっくりしました。ただ、事実ならばの話です。
まあトランプの方は実在人物の方がインパクトが強いですので驚きはありませんし、若い頃(20代後半から40歳くらいまで…)の話ですのでいわゆる成り上がっていく姿が描かれているだけです。
そのトランプをトランプたらしめる指南役がロイ・コーンです。アッバシ監督や脚本のシャーマンさんはむしろロイ・コーンを描きたかったんじゃないかと思うくらいです。
トランプだって移民三世じゃない…
20代半ばのドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)が会員制クラブできょろきょろと落ち着かない様子です。多分、会員の推薦がないと入れないエスタブリッシュメントのためのクラブなんでしょう。
トランプは1946年生まれですので、冒頭のシーンが公式サイトから借りた下の画像の1971年だとしますとわずか25歳です。父親の不動産デベロッパー業を継いだということのようです。父親はドイツ系アメリカ人、つまり祖父がドイツからの移民ということです。
言うまでもなくアメリカ人の多くは移民です。トランプは移民三世ということになります。映画のレビューで言うことではありませんが、ドナルド・トランプ大統領の価値観は「早い者勝ち」「強い者勝ち」ということです。
ひとりの男と目が合います。弁護士のロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)です。コーンは多くの男たちに囲まれ、まるで王様のように振る舞っています。コーンはトランプを席に呼びつけその鋭い目つきでトランプの度量をはかります。
アメリカ映画ですのでもう少しなにかドラマ、たとえばトランプが見栄を張って失敗するとか、逆になにか鋭さを見せるとかのつくられたドラマがあるのかなと思いましたが、わりとあっさりしておりトランプの素直さが出ていました。
これも余計なことですが、現実のドナルド・トランプ大統領も素直といいますか幼さのようなものが見え隠れしているように感じます。
とにかく、この出会いを機に、コーンがトランプの何を気に入ったかわからないままに(笑)トランプはコーンを慕い(頼り…)、コーンはトランプを可愛がるという関係になります。
3つのルールって事実? 創作? …
コーンは一言で言えば悪徳弁護士です。勝つためには脅迫も辞さず、相手の弱みを握るために盗聴までしています。上の画像の1973年にある人種差別行為で政府から訴えられている裁判では判事の夫の同性愛行為をバラすぞと脅して訴えを取り下げさせていました(取り下げじゃなかったかも…)。
コーンはトランプにのし上がるための3つのルールを教えます。
- 攻撃、攻撃、攻撃
- 非を絶対に認めるな
- 勝利を主張し続けろ
これ、事実なのかどうか知りませんがなんだかつまらない3つですね(笑)。むしろ現実のドナルド・トランプ大統領が言う「辞書の中で最も美しい言葉は関税だ Tariff is the most beautiful word in the dictionary.」とか「掘って、掘って、掘りまくれ We will drill, baby, drill.」の方がインパクトがあります。マジかよ、この男?! と思います。
ところでこのロイ・コーンという人物、1927生まれですからトランプの20歳くらい年上です。トランプにしてみれば父親みたいな感じがしたのかも知れません。
ウィキペディアによりますと、大学卒業後マンハッタンの連邦地方検事局に勤務して共産党関係の重要事件を扱っていたようです。映画の中でも出てきました「ローゼンバーグ事件」の働きが認められて(いいことではない…)、マッカーシー上院議員の下で、いわゆる「赤狩り(マッカーシズム)」の急先鋒だった人物です。その後1954年にマッカーシー失脚とともに検事から弁護士に転身したということです。
映画で描かれているような人物であったかどうかはわかりませんが高圧的な人物だったのは間違いないでしょう。
ということでトランプはコーンの教えを受けて(という描き方がされている…)のし上がっていきます。なんとかホテル(忘れた…)の買い取りでは税金を免除させるためにニューヨーク市長を脅したりします。プラザホテルを買い取るといった話も出ていました。実際に1988年に買収しているみたいです。
事業面の描き方としてはあまりメリハリなく進んでおり、代わりに(笑)、例によって女性が登場します。まあ事実なんですが、モデルのイヴァナ(マリア・バカローヴァ)と出会い、いわゆる口説き落としてという描き方がされ、そして結婚します。イヴァンカ・トランプの母親です。
このイヴァナとは後に離婚しますが、その離婚訴訟の際にイヴァナがトランプからレイプされたと証言したらしく映画にはそのシーンが入っていました。
トランプの兄フレッド・トランプ・ジュニアもドラマのひとつとして扱われていました。8歳年上の兄でパイロットです。アルコール依存症だったという記事もあり(ソース未確認…)、映画の中では失職して落ちぶれた様子でトランプに泣きついてくるシーンがありました。1981年に43歳で亡くなっています。
ところで、トランプの父親フレッド・トランプのウィキペディアを読んでいましたら、トランプの姉マリアン・トランプ・バリーは1999年にビル・クリントン大統領に指名されて第3巡回区合衆国控訴裁判所上級裁判官になっているそうです。第3巡回区というのが何なのかはわかりません。2011年に亡くなっています。
驕れるものは久しからず、なんだけれど…
世の常、驕れるものは久しからずで、コーンの精彩がなくなっていきます。トランプではありません(笑)。現実のドナルド・トランプはいまだ勢いとどまるところを知らずでアメリカ大統領に返り咲いています。
ロイ・コーンは1986年にエイズによる合併症で亡くなっています。
精彩がなくなっていったのはエイズを発症したからです。実際にもそうだったらしいのですが、映画の中でも自分は肝臓癌だと言っていました。
という映画で、映画としては飽きずに見られますが、そもそも興味がない話ですのでどうやって終わっていたか忘れてしまいました(笑)。
それにしてもなぜこの映画を撮ったのか理由がわかりません。