男女残酷物語/サソリ決戦

こんな映画、誰が見つけてきたんだ?!女は愛で復讐する!

1969年、55年前のイタリア映画です。監督のピエロ・スキヴァザッパさんも特別名の知れた監督というわけでもなさそうですし、どこかの映画祭で取り上げられた気配もありませんし、いったい誰が見つけてきた映画なんでしょう(笑)。

男女残酷物語/サソリ決戦 / 監督:ピエロ・スキヴァザッパ

配給がノリノリだぁ…

配給の公式サイトを見ますとそのノリノリ感がよく伝わってきます。

「それは終わることのない男女の対決。永遠の闘いが今、幕を明ける!」
「征服と報復-満たされない欲求の哀しき流転が可憐な音を立てて、サイケデリックに舞い刺す!」

なんて煽りのコピーが舞い刺しています(笑)。

作品解説を読んでみることをおすすめします。きっと「顎が外れ」ます(笑)。

まあ、でも嘘じゃなかったです。コピーどおりの「イタリア製ウルトラ・ポップ・アヴァンギャルド・セックス・スリラー」映画でした。

ピエロ・スキヴァザッパ監督というのはどういう人かと調べてみました。

1935年生で現在89歳、ウィキペディアでは存命となっています。この映画「男女残酷物語/サソリ決戦」、原題は「Femina ridens」、英題ですと同じ意味合いの「The Laughing Woman」なんですが、この映画が長編デビュー作で、TVドラマの監督が多いようです。日本では1972年に「別れ」という映画が劇場公開された(かもしれない…)という記事があります。また、1986年の映画「真夜中の貴婦人」がDVDで発売されています。

活動歴は1994年あたりまでで終わっています。

ニキ・ド・サンファル「ホン」

で、本題の「イタリア製ウルトラ・ポップ・アヴァンギャルド・セックス・スリラー」ですが、プロダクションデザインという面ではポップではありますが、アヴァンギャルドやサイケデリックというわけでなく、ミニマム・ポップです。ただ、この映画独特というわけじゃないような気がします。あの時代(1970年ごろという意味…)のセンスのひとつじゃないでしょうか。

ラストシーンの巨大な女性の下半身像はニキ・ド・サンファルさんの「ホン(スウェーデン語で彼女の意味らしい…)」です。現物はもう取り壊されていますので、レプリカといいますか、本人が同様のものを作ったのか、許可を得て美術部が作ったのか、そういうことじゃないでしょうか。

確かに IMDb を見ますと美術部門に Niki De Saint Phalle さんの名前がクレジットされています。

映画の中のワンカットです。オリジナルとは形状も違います。

オリジナルは1966年にストックホルム近代美術館の依頼を受けて制作したもので、その時の写真が美術館のサイトにあります。

全長約27メートル、幅約9メートル、重さ6トンの巨大な《ホン》の内部には偽物の絵を展示した画廊、音楽室、映画館、水族館などがあり、右の乳房は「ミルクバー」、左はプラネタリウム、そして膣が入口になっている。

ウィキペディア

ところで、タイミングよく、今年2024年の8月31日から9月23日まで三重県総合文化センターで「ニキ・ド・サンファル展」が開催されるそうです。

それに、この三重県総合文化センターのエントランス前の広場には「ナナ」像が展示されていますね。

セックス・スリラー

物語は、ひとことで言えば、セックスを囮にした女(たち…)の男(たち…)への復讐劇です。

ですのでたしかにセックス・スリラーと言えばそうなります。ただ、55年前にどのように見えたかはわかりませんが、現在の価値観ではスリラーではなく、寓話のようにもコメディにも見える映画です。

ひとりの女が車の中で傷ついた太ももに軟膏を塗っています。運転席の男は女に小切手を渡し、また来週の金曜日にと言い去っていきます。女は運転手付きの白いロールスロイスに乗り込みます。

ロールスロイスはともかくも、まあ男女関係がどういうことはわかりますわね。

続いて、慈善団体の会議のようなシーンがあり、ジャーナリストを名乗るの女マリアが幹部セイヤーに取材を申し込みます。建物や部屋は一貫してミニマムです。

ここだったか、後日セイヤーのオフィスだったかは忘れましたが、セイヤーが男性の不妊手術についてどう思うかと尋ね、マリアが賛成だと答えますとセイヤーが激怒します。これがマリアを自分の欲望の対象者として目をつけるきっかけだったかもしれません。セイヤーはマリアを自宅に誘います。

セイヤーはサディストです。マリアがその犠牲者(マリアにその性癖はないので…)となります。ただ、セイヤーはハードサディストではなさそうで、あれこれいろんなシーンはあるのですが、見ていて怖くなったり、痛くなったりするようなシーンはありません。サディスティックシーンもポップです

で、マリアが「愛」で持って反撃に出ます。セイヤーは女性恐怖症です。子どもの頃にサソリの雌が性交後に雄を食べてしまうことを知った(見た?…)ことからと言っていました。

セイヤーは初めて知った(かどうかは知らないけれど…)愛を感じ、お花畑になります。

そして、プールの中で愛し合うふたり、セイヤーは昇天します(だったかな…)。

マリヤがセイヤーの屋敷を出て白いロールスロイスに乗り込みます。そこには映画冒頭の女がいます。

という映画で、面白いと思って見れば面白く、乗り切れないと引いてしまうという映画でした。