ふたごのユーとミー 忘れられない夏

美しきタイ ナコーンパノムと美しくもほろ苦きユーとミーの青春物語…

タイ映画です。タイトルや画像のとおり、双子のユーとミーのちょっとほろ苦い青春物語です。高校生の年齢設定だと思います。制作会社は「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」や「ハッピー・オールド・イヤー」のGDH559です。この会社の映画はどれもレベルが高いです。

ふたごのユーとミー 忘れられない夏 / 監督:ワンウェーウ & ウェーウワン・ホンウィワット

ティティヤー・ジラポーンシンさんの一人二役が見事…

双子の姉妹ユーとミーはティティヤー・ジラポーンシンさんの一人二役です。そうと知っていましたのでいろいろ驚きながらみていたわけですが、知らなければ双子の俳優と思うんじゃないかと思います。

見事に二人を演じ分けています。次第に顔や姿全体まで違って見えてきます。この映画がスクリーンデビュー作になりますが、モデルとしても活躍しているそうです。2005年生まれですので現在19歳です。俳優としての才能を感じます。

映画の出来がいいのは、そのティティヤー・ジラポーンシンさんの印象がいいこともあるのですが、当然ながら最終的には監督の力ということになります。俳優は一人二役ですが、監督の方が双子の姉妹で、ワンウェーウ・ホンウィワットさんとウェーウワン・ホンウィワットさんです。二人の名前は、日本語表記でもそうですが、英語表記ですと WANWEAW と WEAWWAN と WAN と WEAW がひっくり返っているだけですね。

その姉妹監督の演出にそつがありません。やはり実際に双子であることの感覚は当事者じゃないとわからないところもあるのでしょう、ティティヤー・ジラポーンシンさんにもかなり細かく演出しているものと思います。

ありがちな双子物語だがそれでも飽きない…

物語は、いつも一緒の仲良し姉妹ユーとミーの前にひとりの男子が現れることから二人の間に亀裂が入り、さてどうなるかということです。おおよその想像はつきますしほぼ予想通りに進みます。

それでも飽きることなく集中して見られます。映画のつくりにそつがないということです。

時代は1999年です。ノスタルダムスの大予言もありましたし、この映画でも頻繁にでてくるY2K問題もありました。単に世紀末というだけでもなんとなくざわざわした年でした。タイでも同じだったようで、ユーとミーが世界が滅びたらどうしようと話をしていました。

映画はまず双子であることの利点をぽんぽんぽんと語っていきます。最初のシーンは、レストランにひとりが入り、なになにを2人前、なになにを2人前とすべての料理を二人分頼んで、ひとりがたらふく食べてからトイレに入り、入れ替わってもうひとりが残りを食べるというシーンで、ん? どういうこと? 2人前頼むのなら二人で食べればいいんじゃないのと思いましたが、あれは食べ放題の店ということだったんですね。その時は思い浮かびませんでした(笑)。

そんな仲良し姉妹のあれこれが語られ、その流れで学校での試験シーンになります。ミーは鉛筆を忘れてきています。その時、マーク(アントニー・ブィサレー)が声を掛けてきて、持っている鉛筆をポキっと折り、削られている方を貸してくれます。マークは先生にカッターを借ります。

そして試験です。ミーはなんとなく困った素振りのマークを察して答案用紙を見えるように差し出します。終了後、再び声をかけようとするマークですが、先生に呼び止められてタイミングを逃します。

この試験も双子の利点(?)を生かして、数学の得意なミーがユーの代わりで受けたものです。

美しいナコーンパノム…

そして学校が休みに入ります。タイの学校は2学期制で前期が5月中旬から10月中旬まで、後期が11月初旬から3月中旬までで、その間の休みは10月中旬~10月末と3月中旬~5月中旬になっているそうです。ですのでそのどちらかの休みだったのでしょう。

あるいは休みは関係ないのかもしれません。というのは、二人の両親が離婚の危機にあり、母親が二人を連れて実家ナコーンパノムへ帰るところから物語の本題が始まります。

このナコーンパノムというのがとてもいいところなんです。日本でいえば都道府県を指す名称のようです。母親の実家はその地域の行政機関のあるムアンナコーンパノムという市街地にあり、おばあちゃんが雑貨屋のような店をやっているという設定です。

ナコーンパノムはメコン川に面しており、対岸はラオスです。映画ではバンコクからバスで移動していましたが、車で約10時間、飛行機ですと1時間20分と出ています。結構な観光地のようです。

そのおばあちゃんが暮らしている設定の建物から時計台を望むメコン川沿いのカットです。

多分この建物ですね。ストリートビューですので画像をワイドにしてぐるりと回せば時計台が見えます。欄干の角の突起が同じです。時計台は「ベトナム記念時計塔」といい、

この時計塔は、インドシナ戦争中にベトナムの人々がナコーンパノムに避難していた際、この町の人々に感謝の気持ちを伝えるために、1960年代に祖国に戻る前に建てられたといわれています。シンプルなスタイルで、高さは約50mあります。

タイ国政府観光庁

とのことで、リンク先にもこの映画のロケ地となったことが記されています。

ということで、ナコーンパノムでユーとミーとマーク3人の物語が始まります。

You & Me & Me …

ユーがタイの民族楽器ピンを習いたいと言います。ピンというのは三弦のリュート型弦楽器でギターのようにピックで演奏していました。その先生の助手としてマークがいます。マークは学校を退学してきたというようなことを言っていました。田舎で家の仕事をすることにしたという設定なんでしょう。

で、マークはユーをミーと思い込み、再会できたと喜んでいます。ユーはそれと知りながらマークに好意を持ち始めます。また、そのことをミーにも話します。ミーが、マークが試験の時の男子であることに気づいたのがどのタイミングであったかは忘れましたが、次第に複雑な気持ちになっていきます。

この3人のやり取りがとても自然でいいのです。その自然さにナコーンパノムの風景がとてもあっています。ピンの先生は農村地域で教えている設定で、辺りは稲穂のようなものもある田園風景です。その風景も、そして3人も美しいです。3人の心の動きがていねいに描かれています。

ピンの教室では子どもたちがたくさん学んでいるのですが、そこの二人の子どもがとっても可愛いんです。ユーへのラブソング(You & Me?)をまじで歌うさまが楽しいですし面白いです。

で、結局、3人で遊んだりしつつも、やはりうまくいかなくなり、そして、ミーがあの試験の時はユーではなく私ミーだったと言い、マークが混乱することになります。マークはひとりの女性として相手に好意を持っているのですが、それがミーであるのかユーであるのかわからなくなっているのです。

さらにそこに両親の離婚の話を交錯させてきます。

両親が離婚することになり、それぞれがユーとミーのどちらかひとりを育てることになり、母親がミーを選んだことをユーが知ることになります。ユーは、みんなミーを選ぶと落ち込んでいます。3人の関係も混乱の極み状態になり、マークがもううんざりだと去っていきます。

ミーがやや投げやり状態になり、ひとりでバンコクの父親のもとに帰る決断をし、長距離バスで帰っていきます。

ひとり残された失意のユーです。その時、テレビから長距離バスの事故のニュースが流れ、乗客名簿からミーの死亡が伝えられます。ユーはバスターミナルに向かい、無人のバスターミナルで誰か!誰か!と叫び続けます。どうすることもできなく座り込み呆然とガラス窓を見つめるユー、そこには自分の姿が写っています。その姿の後ろに何かが動く気配が…。ミーの起き上がる姿がユーにかぶさってきます。ミーはバスターミナルのベンチで眠っていたのです。

おおよその流れは予想通りではありますがきれいにまとめられていました。

そして、エンディング、両親が離婚することになり、父親は二人に携帯電話1台を渡し、二人とも母親のもとで暮らせと言います。二人は、ミーが母親とともに暮らし、ユーが父親のもとで暮らすことを自分たちで決めたと言います。そのためにもう1台携帯電話がほしいと言います。

これで終えていたのか、その後何かあったのかは忘れました(笑)。

ところで、邦題に「忘れられない夏」と副題がつけられていますが、本当に時期は夏なんですかね。