エンディングノート/砂田麻美監督

しあわせな最期を演じる砂田知昭さんと家族たち

「エンディングノート」でググってびっくり! 映画情報が出てくると思いきや、「正しい書き方」だの「自分らしい葬儀」だの「終活」だの、その手のサイトがわんさか! それだけ、いまや「どう死ぬか」が人の重要課題になっているということなんでしょうか。

で、映画なんですが、人のリアルな死を、これだけ軽やかに爽やかに描いて、なおかつ興行的にも成功させるってのはすごいですね。是枝裕和監督がプロデューサーについていることが大きいのでしょうか。

宣伝がうまいです。ポスターやチラシの砂田知昭さんの笑顔がいいですし、そのキャラクターを前面に出して「死」のネガティブイメージを打ち消しつつ、その落差でドラマを予感させ、旧来のドキュメンタリーのイメージをうまくぬぐい去っています。何をおいても、この手の映画にしては、メディアへの露出量がかなり多いのではないでしょうか。

映画自体も、退屈させない構成と編集がうまいです。基本的にはセルフドキュメンタリーの範疇ですから、広く受け入れられようと思えば、あまり個的な領域に入りすぎても引かれてしまいますし、一般に共有できる何かがないと共感は得られません。それに対して、砂田監督は「ユーモアにこだわった」とインタビューに答えています。確かに、私自身、笑いをこぼしたりしながら見たわけですから、つくり手としてはしてやったりというところでしょう。

ただ、それだけにドキュメンタリーとしては突っ込みは浅く、しあわせな最期でよかったですね以上の感想はなく、誰もが自分を重ね合わせられる砂田知昭さんと家族たちが演じられています。もちろんそれは非難ではなく、だからこそ、これだけ広く皆に受け入れられているんだと思います。