一度見ただけではすべてを理解することはできず、かといって難解というわけでもなく、特別感動はないのだが、つまらないというわけでもなく、多分「断絶」も見るでしょう一度見ただけではすべてを理解することはできません。かといって、難解というわけではありません。
二重構造、いや三重構造(ひょっとして四重?)になっています。我々が見ている映画、その中で撮られていく映画、そして、その映画が題材としている実際に起きたらしい事件、その3つが何の説明もなく、つなぎ合わされて提示されます。四重かもというのは、冒頭とラストで、映画の中の映画監督ミッチェル・ヘイヴン(タイ・ルニャン)が見ている映像が自分の撮った映画なのかもうひとつはっきりしなかったので、もしやもうひとつひねってあるのかも知れないという意味です。
まあ、こんなことを書くと、そんなややこしい映画見たくないと思われそうですが、最初に書いたとおり、割とすんなり入っていけると思います。
映画監督というのは、結構枕詞のつく人が多いのですが、たとえば、巨匠、奇才、鬼才、異才、他にもあったような…、で、伝説もそうなんですが、モンテ・ヘルマン監督も必ず伝説のとつく監督のようです。略歴はウィキを読んでもらうのが一番ですが、現在80歳、まだこういう映画が撮れるというのはすごいことだと思います。この「果てなき路」が21年ぶりの作品ということもあるのでしょうが、こういう、何というか、若々しいんですよね、とても80歳とは思えないつやといいますか、古さがないというか、巨匠らしくないといいますか、やはり伝説の映画監督というのは当然かも知れません。
ただ、一体この映画は何なのかという点において、何だかはっきりしない、ぼんやりしているんですよね。
エンドロールにトゥルーストーリーとありましたが、一体何が実話なのか、それも判然としませんが、大まかなストーリーは、ある地方都市で男女が自殺した事件があり、それを期待(らしい)の映画監督ミッチェルが映画化しようとし、その主役に素人同然のローレル(シャニン・ソサモン)をスカウト、ローレルの魅力に入れ込んでいくミッチェルの話と、元ネタの事件の女ヴェルマと相手の男の話が、まあいろいろあれやこれやと絡み合っていくわけで(全然説明になっていない)、その元ネタの男女をローレルと映画内映画の相手役の男がやっているという、で、そこに保険調査員の(ウェイロン・ペイン)男がからんで、この調査員は元ネタの事件の調査員なのか、ミッチェルが撮っている映画の出資者に雇われた調査員なのか、あるいはその両方なのか分からないまま進み、ついに最後に(唐突に)破局が訪れ、結局、元ネタの事件の真相も分からずに終わるという、とても不思議なサスペンス(かな?)映画です。
といったわけで、サスペンスとも言えないし、ミッチェルがローレルに執心していく様も特別異様な感じもなく普通の恋愛に見えますし、何に焦点を絞っていいのかよく分からない映画でした。
ああ、ただ、ローレルのファーストカット(だったと思う)、ベッドの上のミステリアスなシーンはとても良かったです。確か音楽がかぶっているだけだったと思いますが、音楽もとても良く、かなり期待を持たせました。その期待が叶えられたかどうかは微妙ですが、まあ最後まで飽きずに見られたのですから…。