ヨーロッパ映画の自転車は、なぜこんなにも美しいのでしょう?
監督:クリスティアン・ペッツォルト(クリスティアン・ペツォールト)
さほど強い印象は残らないかも知れません。ですが、間違いなく良い映画です。ベルリンの壁崩壊から四半世紀、単に東ドイツ時代の暗黒面だけを取り上げていない、こうした映画が生まれることに私は好感を持ちます。
それにしても、ヨーロッパ映画の自転車は、なぜこんなにも美しいのでしょう? はやり(日本で)のクロスバイクやロードバイクでもない、変速機など付いてもいない、一見ママチャリに毛の生えたような自転車に見えますが、バルバラ(ニーナ・ホス)が風で草木の揺れる田舎道を疾走する姿は、本当に画になります。
自転車は物語的には本題ではないのですが、美しい自然、道路沿いの十字架、質素な生活、それらとともに結構じわっときいています。何気ない日常の風景やちょっとした人間の心の動きを丁寧にとらえています。
登場人物、皆寡黙ですが、映画もまた寡黙です。