ロケーションもいい、テーマもいい、良いところはいっぱいあるのに、一向に映画的なものが生まれてこない
こういった設定、イタリアやフランスの片田舎の青春ものは大好きなんですが、この「海と大陸」は何ともはっきりしない映画でした。何に焦点を絞って見ていいのか判然とせず、かと言ってさほど画力があるわけでもなく、それはひとえに編集のまずさから来ているのではないかと、私は思います。
主人公の母ジュリエッタが、地球儀を見て「そこにはこの島はない」と語る地中海の小さな島、リノーサ島が舞台です。
20歳のフィリッポ(フィリッポ・プチッロ)は、祖父と共に漁師をしていますが、水揚げも大したことはなさそうで、生活はかなり貧しいようです。すでに父親は亡くなっており、母ジュリエッタ(ドナテッラ・フィノッキアーロ)との3人暮らしです。叔父はすでに漁師をやめて、今は観光業でそこそこ良い暮らしができており、フィリッポにバイクをプレゼントしたりして、常日頃から気にかけ面倒をみているようです。
父親の何回忌かの日、ジュリエッタは、家を改装して夏だけ観光客に貸すと宣言し、その通り実行します。本土から3人の若者たち、男2人に女1人がやってきます。その女性とフィリッポとの間に恋が生まれそうな感じを漂わせています。
と、まあ、前段でひととおり状況説明(説明的という意味ではない)があるのですが、ここまでが何ともぎこちないというか、迷路みたいなもので、ちょっと進めば壁、曲がってもまた壁の繰り返しのような感じです。
で、どうもこれがこの映画の主題であるらしい難民との出会いとなります。ある日、漁に出たフィリッポと祖父は、アフリカからの難民船と出会い、そのうちの幾人かを自らの船に乗せ助けます。その中に妊婦がいて、家に匿って出産させます。
ここらあたりまで来れば、もう一直線でしょうと思って見ていても、相変わらず迷路状態で、フィリッポの淡い恋(かな?)であったり、ジュリエッタの迷いであったり、祖父の健康の問題であったり、難民を助けたことによる警察のといざこざであったり、それに対する漁師たちの抵抗であったり、再度出会った難民船の話であったり、匿っている親子の身の上話であったり、公式サイトのトップページの画像の妙に陽気な船上の叔父と観光客たちであったりと何ともとらえどころがありません。
で、ラストは、フィリッポが匿っていた親子を船に乗せて本土に向かうところで終わります。
ロケーションもいい、テーマもいい、良いところはいっぱいあるのに、一向に映画的なものが生まれてこない、そんな映画でした。もちろん、材料も道具もそろっているわけですから、想像力で補うことはできるでしょう。しかし、私にはその気力がわいてこない映画でした。