俳優の自然さ、ていねいな作り、滞るところのない編集、(原案、脚本、監督、編集)是枝裕和ワールドなんでしょう
親子ものも家族ものもあまり好みではない(好き嫌い多すぎ)のですが、是枝監督、一度も劇場で見たこともないのもどうかと思い出掛けました。
昨夜、ネット予約した時にはガラガラだったのですが、行ってみれば、100席あまりの劇場が満員です。
ああ、木曜日、女性サービスデイです。
男性は1割にも満たないくらいで、男性一人客は2、3人くらいといったところじゃなかったでしょうか。
笑ってしまうほどのダメ人生を更新中の中年男、良多(阿部寛)。15年前に文学賞を1度とったきりの自称作家で、今は探偵事務所に勤めているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳している。元妻の響子(真木よう子)には愛想を尽かされ、息子・真悟の養育費も満足に払えないくせに、彼女に新恋人ができたことにショックを受けている。そんな良多の頼みの綱は、団地で気楽な独り暮らしを送る母の淑子(樹木希林)だ。(公式サイト)
母淑子の同年代の女性客が多かったせいか、樹木希林さんの演技がかなり受けていました。
個人的には、樹木希林さんの演技はやり過ぎ感が強いと思いますが、すべての俳優の演技がよく作りこまれており、台詞ともつかない極めて日常的なぼそぼそ台詞も自然で、その点ではとても良く出来た映画でした。
とにかくていねいに作られていますし、編集も全く引っかかるところもなく自然で、ひとつひとつの台詞もうまいですし、原案、脚本、監督、編集すべて是枝裕和さんとなれば、是枝ワールド以外の何ものでもありません。
台風シーンの風雨にも妥協はないですし、一夜明けた街のシーンに、ややわざとらしいとはいえ、飛ばされた傘を何本か置いているところなど、(よく知らないので多分)是枝監督の真骨頂なんでしょう。
この映画の良さは、それぞれ登場人物の非常に細かい繊細な機微みたいなものでしょうから、あらすじなど大した意味はなく、映画を見ないと分からないといったそんな良さなんだろうと思います。
あえてひとこと言えば、家族関係、元夫婦関係がいかにも甘すぎるといったところですが、それでも、阿部寛さんと真木よう子さんのうまさで違和感なく見られます。
いい映画でした。