レダ・カテブの演奏シーンはすごい!
2018年です。
昨年何本の映画を見たか数えてみましたらおよそ120本でした。127記事書いていますがDVDも何作品か入っていますからそれくらいだろうと思います。そのうち「おすすめ映画」にピックアップしたのはわずかに9本でした。
「永遠のジャンゴ」
ジャズ・ギタリスト ジャンゴ・ラインハルトさんの実話ベースの映画とのことです。ヴァイオリニストのステファン・グラッペリさんつながりで名前はよく目にしている方ではあります。
監督:エチエンヌ・コマール
ナチス支配下の戦争の時代を生きた不世出の天才ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの知られざる真実の物語を映画化(公式サイト)
伝記映画というわけではなく、第二次大戦中の数年が描かれています。
出自がロマということでナチスから迫害されるのですが、多くのロマ族の人々がいわゆるユダヤ人への迫害と同様にアウシュビッツなどの絶滅収容所へ送られたりしていることに比べますと、有名なミュージシャンであったからなのかよく分かりませんが、ベルリンでの演奏を求められたり、ドイツ軍人たちのパーティで演奏したりと、特別扱いされているようでもあります。
ところで、日本語ではロマ、あるいはジプシーと呼ばれる移動民族の呼称ですが、差別用語かどうかがなかなか難しく、記憶では、過去にジプシーという呼称は差別用語だからロマを使うべきという時代があったのですが、実はそのロマもある一部の民族を指す言葉で移動民族全体ではないらしいです。
考えてみれば、移動型の生活をする民族は世界各地にいるわけですから、それをひとつの呼び方で済ませてしまうこと自体が無茶な話ですし、仮にどの呼び方をするにしろ、ジプシーがそうだと思いますが、ある集団を外部の人間が呼ぶ時に使う言葉でしょうから、多かれ少なかれそこには差別や蔑視の意味合いが含まれていると思われます。
で、映画ですが、率直なところ、映画としての出来はよくないです。
エピソードが羅列されているだけで映画としての流れやリズムがありません。
導入からして、ん?と躓かされます。
冒頭、森の中のロマたちの生活空間でしょう。子どもたちが森の中を駆け回り、大人たちはギターやヴァイオリンを奏で、歌い、平和な日常が提示されます。そこへ、いきなり子どもの頭に拳銃が突きつけられるカットが入り、大人たちの場面に切り替わりますと遠くで銃声、続いて歌っていた老人も撃たれてしまいます。
シーン変わって、パリの劇場でしょうか、演奏時間なのにジャンゴ(レダ・カテブ)が来ないと皆大騒ぎ、一方、ジャンゴは(おそらく)セーヌ川で釣りをしています。連れ戻されたジャンゴは母親やマネージャー(?)に衣装を着せられ、一杯引っ掛け、舞台へ上がっていきます。
(おそらく)この二つのシーンに物語としてのつながりはなく、ロマの人々がナチスに迫害されていること、そしてジャンゴの人となりがドラマチックに紹介されているのだと思います。
こんな感じで、パリでの生活に迫る危機、フランスからの脱出を目指しスイスとの国境付近への移住、その住まいをナチスに接収されロマのキャンプへ移動、ナチスによるキャンプの焼き討ち、そしてついにスイスへの脱出といった、おそらく事実であろうことが細々としたエピソードによって語られていきます。
こういうリズムのない映画は見ていてもつらいですね。
監督のエチエンヌ・コマールさん、脚本家ではかなりのキャリアのようですが、これが初監督作品とのこと、脚本も自分で書いているようで、そのあたりがマイナスに出ているのではないでしょうか。
おそらく自分の頭のなかでは気持ちよく流れているのでしょうが、(失礼ながら)映画を客観的に見られていないということです。
収穫は、レダ・カテブの演奏シーンです。
顔が出ないカットは吹き替えでしょうが、まさか顔が出ていて指先の動きを加工することは出来ないでしょうから、あれ、本人の演奏でしょう。ギターの経験はまったくなかったそうで1年前から猛練習したとのことです。
すごいですよ。
謎の女性(?)ルイーズをやっていたのは、セシル・ドゥ・フランスさん、「少年と自転車」「ニューヨークの巴里夫」以来ですが、重要な役ではあっても何だかよく分からない役回りでした。
- アーティスト: ジャンゴ・ラインハルト,E.レイノルド
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2002/10/23
- メディア: CD
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