恋する都市 5つの物語

若手中国人監督5人によるオムニバス映画。ウォン・カーウァイを思わせる映画もあり…

若手中国人監督5人によるオムニバス映画です。

プラハ、上海、パリ、小樽、フィレンツェの5都市を舞台にして、それぞれ男女の様々なラブストーリー(的交流)を描いています。

基本的には5つの物語に関連性はないのですが、エンドロールでそれらをうまい具合に結びつけてひとつの映画としての余韻をもたせています。

具体的にどういう関わり方かは分かりませんが、岩井俊二、スタンリー・クワン、ウェイ・ダーションの3人が監修とクレジットされています。

  

5本それぞれに特徴があり楽しめますし、どれもつくりがしっかりしていて、中にはふくらませれば長編にでもできそうなものもあります。

岩井俊二プロデュース作「恋愛中的城市」カップル版ポスターが公開–人民網日本語版–人民日報、ここにあるそれぞれのポスターがよく雰囲気を捉えています。ちなみに中国語タイトルで検索しますと本編が見られます。

第1話はプラハ。

男(基本、主役の俳優はみな中国人)はプラハの街で仲間とともにひったくりをやって暮らしています。そこに女の旅行者がやってきます。女は男の相方にバッグをひったくられますが、男が仲間だと気づき、バッグを返してと執拗に追ってきます。その必死さに男は相方が捨てたというゴミ処理場まで行き探しますが見つかりません。

街に戻った二人は偶然バッグを持った男たちを見つけ取り返します。

女はバッグの中から小さな袋を取り出し、父親の遺灰が入っていると語ります。女の父親は世界中を旅することが夢だったのですが亡くなってしまい、女は父親のかわりに世界中を旅してその遺灰を撒いているのです。

男がどれだけまわった?と尋ねますと、女はわからないと答えます。女のバッグにはまだたくさんの小さな袋が入っています。そして女は列車に乗り旅立っていきます。

って書いてみましたが、あらすじだけじゃ、無茶苦茶ベタな話に見えてしまいますね(笑)。

この作品はカメラワークと編集がうまいです。街中をバイクで走り回りますし、アクションや追跡シーンなど、手持ちでかなり動き回るのですが、スピード感があってうまいです。

それに、映画自体短くはありますが、展開の強弱の付け方もうまくメリハリもあります。ラストシーンの切ない別れもほどほどでなかなかうまいです。

女性はヤン・ミーという俳優さんなんですが、若い頃の中山美穂さんに似ているように思います。

第2話は上海。

これはコメディタッチの映画です。女がオーナーシェフとしてフランス料理店をひらき、有名評論家にも評価されますが、なぜか悪い方へ考えてしまい自分がシェフだと言い出せず、身代わりのシェフを立てるという話です。

第3話はパリ。

基本シリアスな話ですがコミカルさを入れつつ哀感もあってとてもいい出来です。

男が失恋します。やけっぱちで婚約指輪をセーヌ川に投げ入れ、バーで酒をあおり急性アルコール中毒になり入院します。夜中に目を覚ましタバコを吸おうと屋外の喫煙室にいますと、突然女が現れキスをしてきます。男は驚いて引きますが、女の不思議な魅力にひかれて女のバイクの後ろに乗り行動を共にします。

まず女はおもちゃ屋に忍び込み、男が止めるのも聞かずにたくさんのぬいぐるみを盗みます。女は夜の街をバイクで走り回りぬいぐるみを子供の部屋に投げ入れていきます。

次に、女は男に気持ちのいいことをしようか(だったかな?)といい、男に入れ墨をします。(と、ちょっとよくわからないけど)

深夜のカフェでの二人の会話シーンもとてもいいです。女役の俳優チャン・ロンロンの細かな表情が魅力的です。男の俳優ホアン・シュアンは、「ブラインド・マッサージ」のシャオマーでした。 

男はそのカフェで、交通事故がありバイクの女性が生死の境をさまよっているとのニュースを見て、女がその女性であると気づきます。

女は言います。今日は自分の誕生日で、やりたいことがいくつかあり、それは、子どもたちにぬいぐるみをプレゼントすること(だったかな?)、入れ墨をすること(?)、そして断崖ダイビングだと。

二人は(おそらく)セーヌ川に飛び込みます。男は水中で光るものを見つけて手に取ります。男がやけっぱちで投げ入れた婚約指輪です。男は女を抱きしめ、女の指に指輪をし、キスをします。

この水中シーンの水疱にまみれる二人のシーンと、病院に搬送された女が電気ショックでのけぞるシーンが幾度か切り返されるのですが、このシーン、よかったですね。

「Can’t Help Falling In Love」のカバーが流れます。これですね。


張靚穎《Can’t Help Falling in Love》(電影《戀愛中的城市》英文主題曲)

男は病院で目覚めます。

そして一年後、男は偶然パリの街なかで、その女に似た女性と出会い、手を振りかけ寄ります。しかし、女は一瞥したきり、何事もなかったようにすれ違うだけです。

人違いかと残念がる男、しかし、その女の胸にはあの指輪がネックレスとして光っているのです。

こんなに詳しく書くつもりはなかったのに書いてしまいました(笑)。こういう話、だけではなくこういう映画のつくり、こういう俳優、こういうセンスは大好きなんです(笑)。

第4話は小樽。

新婚の夫婦が新婚旅行で小樽にきますが、喧嘩になり危機におちいります。しかし、たまたま出会った老夫婦を見てやり直すという話です。

第5話はフィレンツェ。

元カレの結婚式に招待されてフィレンツェにやってきた女と、ガイドを頼まれた男の話です。

そしてエンドロール、5つの物語がちょっとずつ関連しているように語られ、第3話のラストシーンの続き、男は立ち止まり、おもむろに女を追いかけ、突然キスします。

女「どこかで会った?」

男「いや、今初めて会った」

ちょっと違うかもしれませんがこんな感じです。

おしゃれな終わり方でした。

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