新世紀ロマンティクス

行き詰まるジャ・ジャンクー監督…

前作「帰れない二人」が2018年製作ですから6年ぶりのジャ・ジャンクー監督になります。

んー、もう新作は撮れません宣言みたいな映画ですね。

新世紀ロマンティクス / 監督:ジャ・ジャンクー

満ち足りてノスタルジー…

どうしちゃったんですかね、ジャ・ジャンクー監督。前作「帰れない二人」と同じことをやっています。

2001年の大同、2006年の三峡ダムの町奉節、そして珠海を挟んで2022年の大同へと時代の波にもまれながら生きる男女を描いています。いや、男女という人間を描いているわけじゃなく、中国という国の20年を描いているという方が正しいです。

同じじゃないかという「帰れない二人」の方はと言いますと、2001年の大同、2006年の奉節、そしてウルムチを挟んで2017年の大同へと戻ります。人物配置は同じく男女の愛と別れ、そして再会ですが、こちらはその男女関係が中心であり、その背景としておよそ15年という時代の変遷を置いています。

大同という町は2002年の「青の稲妻」、三峡ダムや奉節は2006年の「長江哀歌」の舞台となる町ですから相当思い入れが強いということなんでしょう。

物語のつくりという点で言えば、その前々作である2015年の「山河ノスタルジア」も1999年、2014年、2025年という3つの時代を使って描いているという点では同じです。この映画では男女ではなく母と子の関係を軸にしてはいますが、やはり描こうとしているのは時代の流れということですので、ジャ・ジャンクー監督には同じような思いがあるということだと思います。

2000年代の中国という国の変遷とジャ・ジャンクー監督自身の人生がどこかでリンクしているのかもしれません。ただ、その結果としてのこの映画や「帰れない二人」からは何かしら閉塞感みたいなものが感じられます。

いずれにしても若い頃にはあった精神的な飢餓感がなくなっている感じはします。55歳ですから誰でもそうなります。もっと気楽にフィルム・ノワールものでも撮って欲しいなあと思います。

その意味はこちらの記事にあります。

どこへ行く、ジャ・ジャンクー監督…

という映画ですが、ジャ・ジャンクー監督のうまさとからしさは感じられますので二番煎じ的ではあっても結構見られます。二番煎じと言っても自分の作品のですからどうこう言うことではないかもしれません。

2001年の大同、2006年の三峡ダム、奉節、珠海のシーンは過去の映像のようです。詳しくは調べていませんが、「青の稲妻」や「長江哀歌」に使われていた映像もあったように思います。

今回も主人公のチャオを演じるのはチャオ・タオさんです。男の方のビンも「青の稲妻」や「長江哀歌」で恋人役だったリー・チュウビンさんです。二人の関係の説明などはありませんし、そう言えばチャオは一切台詞がなかったんじゃないでしょうか。あるいはビンの方もなかったのかもしれません。

いずれにしても二人の関係の詳しいことなどあまり映画的意味はありません。大同で付き合っていたふたりですが、ビンが他に稼げる仕事を求めて旅立ち、その後チャオがそのあとを追って奉節に行き、再会は果たすもののビンには他に女がいてチャオは去り、そして時は流れ、珠海でそれなりに羽振りをきかせていたビンも何らかの理由で体を壊して大同へ戻り、そこでチャオと再会するという話です。

それにしてもジャ・ジャンクー監督が撮るチャオ・タオさんっていつもチャオ・タオさんですね。変わらないです。褒め言葉という意味なのかどうかは微妙なところですが、チャオ・タオさんあってのジャ・ジャンクー監督という意味ではブレがなくていいですね。

ラストシーンでは、チャオが深夜の集団ランニングで「はっ!(だったと思う…)」と声を出して終わっていました。

全く関係ないとは思いますが、そう言えばしばらく前に

というニュースが流れていました。

※スマートフォンの場合は2度押しが必要です

関係ないかな?

ジャ・ジャンクー監督、是非フィルム・ノワールでお願いします。