さすらいの女神たち/マチュー・アマルリック監督

クリスティーナ・アギレラの「バーレスク」とは雰囲気も随分違い、ダンサーたちがとても魅力的でした。こちらは大人の映画という感じです。


さすらいの女神(ディーバ)たち 予告編

マチュー・アマルリックさんは、監督としても活躍しているんですね。これが4作目とのことですが、多分、日本では初めての劇場公開作なんでしょう。

とググっていたら、今年の初めに東京日仏学院で「マチュー・アマルリック監督特集」が行われており、短篇5本と長篇5本を一挙上映したようです。4作目どころか、かなり撮っているんですね。

で、映画ですが、ドラマ性を意図的に排した反ハリウッド的なつくりです。

マチュー・アマルリックさん本人演じるプロデューサーのジョアキムは、敏腕でならしたようですが、トラブルメーカーのようで、いったんパリを逃れ(?)アメリカへ渡った後、今はキャバレー・ニューバーレスクを率いてフランス各地を回りながらパリ興行を目指しています。

映画は、そのツアーの成功如何に特別焦点を当てようとはしていませんし、ジョアキムの過去、たとえば仕事上のトラブルや、妻や子供とのことや、元恋人(かな?)とのことなど、いくつかの伏線(というほどのことでもないですが)はそれなりに曰くがありそうなのですが、それらを取り立てて説明しようとも、またドラマチックに扱おうともしていません。

それは、まるで、そんなことなど人生にはつきものなんだと言っているようです。

ジョアキムとパリの友人の再会シーン、二人で罵り合い殴り合いながらも、翌朝酔っぱらったまま友人のベッドで並んで眠っているあたり、あるいは、唐突なシーンではありますが、入院中の元恋人を訪ね、これまたお互い罵り合い、それでも本当に憎しみあっているとは思えないようなところなど、とてもいいシーンで、確かに人生には浮き沈みや諍いや何やかやといろいろありますが、そんなことなど大したことではないのかも知れません。

個性豊かなダンサーたちは、ニューバーレスクの現役らしく、それゆえなのか、個々の描写にやや物足りなさを感じますが、逆に言えば、ドキュメンタリータッチのような雰囲気もあり、一人頑張っている(演技している)マチュー・アマルリックと(彼女たちの)日常そのもののディーヴァたちという構図がとても面白いです。

ショーのシーンもややワンパターンの撮り方で、正直もう少し何とかならないかとも思いますが、これも上と同じような意図で、つくりもの臭さを排してリアルなニューバーレスクを撮りたかったのでしょう。

全体的には、もう一つ何かが足りない感じがしますが、味わい深い良い映画でした。

ああ、そうそう、引きの2カット、ピザ屋が楽屋口にピザを配達にくるシーンとジョアキムとミミが波止場でキスするシーンはとても良いです。