原作の詩集には興味は持つが、映画はダメ
「川の底からこんにちは」ではボロクソに書き、「舟を編む」では褒めまくった(それほどでもない)石井裕也監督の新作です。
原作は、最果タヒさんの詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』ということですので、多分、原作というよりも詩に触発されてのオリジナル脚本に近いのではないかと思います。
映画のタイトルに「映画 夜空は~」とわざわざ「映画」を入れています。
監督:石井裕也
最果タヒは詩を生んだ。彼女は2008年当時21歳で中原中也賞を受賞。2016年5月の発売以来、現代詩集としては異例の累計27,000部の売上げを記録している最果タヒの「夜空はいつでも最高密度の青色だ」が映画として生まれ変わった。詩をドラマとして表現することに挑んだ脚本・監督は、33歳にして本作で12本目の長編映画となる石井裕也。(公式サイト)
基本ストーリーは、昼間は看護師、夜はガールズバーで働く美香(石橋静河)と建築現場の日雇い労働者慎二(池松壮亮)の今どき恋愛話です。
と言っても、今どきの恋愛を知っているというわけではありません(笑)。
舞台は、渋谷、新宿、いわゆる今どきの若者の街ということでしょう。美香は、どこかは語られていませんが、日帰りで行き来できるくらいの地方都市から東京に出てきています。
田舎には、父親と妹がおり、母親はすでに亡く、美香が仕送りをしています。母親は病死とも自殺とも判然とせず、美香はそのことをかなり気にしており、自殺なら自殺と言ってよといういらだちを持っています。父親は失業中なのか、働く気がないのか、美香の仕送りに頼っている(?)ようでもあります。
現在の美香には彼氏はいなく、映画の中頃、美香をふった元カレから「まだ、愛している。結婚を考えている」といったメールが入ります。
一方の慎二は、日雇いの建築労働者として働いており、池松壮亮の地のキャラクターもあって、その現状をあえて選んでいるのか、結局そうなってしまったのか、そんなこと何も考えていないのか、とにかく判然としません。
こちらも中頃に、高校時代(かな?)の同級生から「愛していた」とメールが入ります。このあたり、意味不明ですが、まあこういうこともあるのでしょう。
で、原作の詩がどう生かされているかは、読んでいませんので間違いかもしれませんが、二人の台詞に使われているのだと思います。
特に美香がやたら悟ったような台詞を吐くキャラとなっているのは、詩からの台詞なのではないかと思います。
ということで、ふたりの恋愛が進展するのかしないのか、その間に、社会への不満やらなんやらかんやらが語られ、何とも、いうなれば「うざい」パターンで進行していきます。
つまり、この進展を「うざい」と感じる者(私)にはわからない映画です(笑)。
早い話、そんなごちゃごちゃ言っていないで、社会に異議申し立てでもしたらと言いたくなるということです。
さらに、え、何!? 付き合うことになれば、不満も解消するの!?
恋愛が全てを解消する!?
石井裕也監督、しっかりした脚本で撮った方がいいよ、と言いたくなる映画でした。
ただ、詩集、読んでみようかとは思いました。