二大スター共演もバディムービーにもならず…
タランティーノ監督のつくる映画の特徴は、話は単純なんだけれども、いろいろ知っていないと面白さがわからないというところだと思います。この映画もそうで、シャロン・テート事件を知っているくらいでは映画についていけません(笑)。
落ち目の俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とクリフ・ブース(ブラッド・ピット)にもモデルとなった俳優(バート・レイノルズ)とスタントマン(ハル・ニーダム)がいるらしく、まあ仮にそれを知っていても、その程度の認知度では楽しめる映画ではありません。
簡単にいってしまえば、ディカプリオやブラピのファンか、あるいは1969年当時のハリウッドに興味がなければ、ただだらだらと長く感じる映画でしかありません。
これ、批判しようとしていっているのではなく、タランティーノ監督はそういう映画を撮る監督だということで、あのシーンはあの映画のオマージュだとか、あの人物はあの映画の誰々だとか、そういう映画の楽しみ方ができる方のための映画です。
実際、ディカプリオとブラピという二大スターとも言うべき俳優を使っていながら、ではなく、二大スターだからなんでしょうが、ほとんど絡みのシーンはなく、二人の共演の面白さなどまったくありません。バディムービーでもありません。映画の見せ場はそれぞれ単独のシーンばかりです。
リックの方は、落ち目となった俳優のなんとも素直な姿が描かれます。ディカプリオさんはこういう役はうまいですね。映画に真面目な人なんだと思います。
クリフの方は、スタントマンの悲哀など感じたこともないような脳天気な人物のようです。ブラッド・ピットさんもこういう役ははまります。
という、ふたりのはまり役と大掛かりなセットによる古き良きハリウッド(知らないけど)の雰囲気を楽しむことはできます。
ただ、それだけです。
シャロン・テート殺害事件にしても、何をどうしたかったのかよくわかりません。実際に50年前に起きた事件があり、その人物をその名前のまま登場させながら、架空の人物であるリックとクリフがその事件の関係者となって、事実とは正反対に襲撃したヒッピーたちを惨殺してしまうという結末にどういう意味があるのでしょう。
この描き方、面白いですか?
当時、6歳くらいのタランティーノ監督に、シャロン・テート事件に対してそれほどの思い入れがあるとは思えませんので、この結末のつけ方には何だかいやーな感じがつきまといます。リックが火炎放射器で襲撃者を焼いてしまうところなど、リックの出演作からのギャグとは言え、実際にあった事件にどうよ? と思います。
とにかく、タランティーノ監督というのは、過去に囚われた価値観から抜け出られない映画が多い監督です。