実話ベースの音楽ものはテッパン!
実話ベースのサクセスストーリーで音楽ものとくれば鉄板でしょう。
イギリス、ポート・アイザックの漁師たちのバンド「フィッシャーマンズ・フレンズ」がメジャーデビューし、全英チャートトップ10入りを果たすまでの物語です。2010年に発売されたこのCDがそれです。
Port Isaac’s Fisherman’s Friends
- アーティスト:Port Isaac’s Fisherman’s Friends
- 出版社/メーカー: Universal Import
- 発売日: 2010/05/04
- メディア: CD
映画はそこまでですが、バンドはその後も「One and All (2013)」「Proper Job (2015)」「Sole Mates (2018)」と立て続けにアルバムを発表し、そして2019年にはこの映画のサントラ「Keep Hauling-Music from the Movie」もリリースしています。
イギリス南西部コーンウォール地方のポート・アイザック、公式サイトの Location Map にもありますがいいところですね。映画では割と簡単にロンドンとの間を行き来していましたが、実際には 400kmくらいあります。
ロケもこの地で行われたようです。上のストリートビューは、ロンドンから来たダニーが入り江に車を停めるなと言われていた入り江でしょうか、たくさん停まっていますね。
音楽業界で働くダニー(ダニエル・メイズ)たち4人がポート・アイザックにプチ旅行でやってきます。こうしたドラマのパターンですが、都会の人間は地元の漁師たちには胡散臭がられます。無謀に海に出て村人たちに救助されたりしていました。
ロンドンへの帰り際、漁師たちのバンド「フィッシャーマンズ・フレンズ」が入り江で恒例の慈善コンサートを開いているところに遭遇します。うまいなあと聞き入っているダニーに、一緒に来た上司が契約してこいとケツを叩きます。上司のいたずらです。上司はうまさは認めていてもヒップホップやR&B全盛ですので売れるものかと、ダニーを残して笑いながら他の仲間とロンドンへ帰ってしまいます。
ダニーは(それなりに)真剣です。リーダー格のジム(ジェームズ・ピュアフォイ)に契約を持ちかけます。当初はダニーがどこの誰ともわからないわけですから笑って洟も引っ掛けない態度でしたが、誰かが調べたのでしょう、(音楽プロデューサーとして)本物らしいと満更でもない様子に変わっていきます。
ドラマの軸が契約を交わす苦労話ではないということです。こういうドラマですと、田舎の閉鎖性対都会人の上から目線といった関係を中心に描くことが多いのですが、この映画では、ダニーを気取りのない率直なキャラクターにして、そうした面はかなり抑えられています。
じゃあ何がドラマの軸になっているかといいますと、まずは、契約はしたものの上司に梯子を外されたような格好のダニーが、どうやってデビューさせるかがひとつ、そしてこうしたドラマの定石である恋愛話、ジムにはオーウェン(タペンス・ミドルトン)という今はシングルマザーの娘がいます。オーウェンは自宅でB&Bを経営しており、置いてけぼりを食ったダニーがそこに泊まることとなり、さらにオーウェンが音楽オタクであることから次第に親しくなり愛し合うようになります。そしてもうひとつ、村のみんなの憩いの場であるパブが経営難となり、その売却にダニーが関わり、パブがなくなるのではないかと、一度は村に溶け込んだかに思えたダニーが再び冷ややかな視線で見られ始め、さてどうなるかというドラマがあります。最後の最後のオチにはこのパブの件が使われています。
といった3つの軸が交錯しながら進みます。
フィッシャーマンズ・フレンズのメジャーデビューには若干の紆余曲折がありますが、最後はテレビへの出演の動画がネットで評判となり、その視聴回数が切り札となってCD発売となります。この時すでにダニーは所属していた会社を辞めて、そのライバル会社に売り込み、そこからのデビューとなっています。そして、いきなりデビューCDが全英チャートトップ10入りを果たします。
ダニーとオーウェンのラブロマンスは、オーウェンの娘もダニーになつき、順調にいくかと思われましたが、パブの売却がふたりの間に水を差します。ダニーはパブの売却先に知人(同僚の父?)を紹介したのですが、その買い手がパブを継続しない(とははっきり描かれていないけれど)ことがわかり、村のみんなから疎外されることになります。だから都会人は信用ならないということです。
真面目なダニーは悩みます。そして決断します。ロンドンの自宅を売り、パブを買い戻します。
よかった、よかったのハッピーエンドで映画は終わります。
こういう映画は結末もおおよそ想像でき安心して見られます。音楽映画ではありますが、音楽がメインという映画ではなく、ほどよいドラマ加減が心地よい映画です。ただ、もう少し「フィッシャーマンズ・フレンズ」の曲を前面に出してもよかったのではないかとは思います。