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ラストレター

(ネタバレ)岩井俊二監督らしい叙情的感傷映画…でいいのか?

2020/01/18

構成力はさすがです。

見る前にどんな話かと公式サイトのあらすじを読んでみましたら、読み方もよくわからない役名が並び、過去と現在を同じ俳優の二役で配役したりとなんだかややこしい話だなあと思ったのですが、実際に見てみれば、現在と過去の行き来も自然ですし、二役にもまったく違和感がありません。

それと俳優、特に松たか子さんでもっています。

基本、物語はありえないことの連続です。でも気になりません。この裕里(松たか子)ならあり得るかもと自然に思えてきます。過去の裕里(森七菜)との連続性もうまくいってしますし、夫の宗二郎(庵野秀明)の演技感のない自然体がそれを助けています。

ラストレター

ラストレター / 監督:岩井俊二

と、さすが岩井俊二監督と思う反面、未だにこんなに叙情的、かつ感傷的でいいのか? と思います。

失った過去への追慕や憧憬、程度の差はあるにしても、この感情を持たない人間はいないでしょう。それを刺激すれば誰だってうるっときますし、感動もします。そういう映画になっていないかということです。

それが岩井俊二監督だと言ってしまえばそうなんですが、「ラブレター」から25年ですからね。

この映画の失った過去は「未咲」という存在です。映画の現在時点で亡くなっているという意味ではなく、鏡史郎(福山雅治)が未だ強く追慕する25年前の「未咲」(広瀬すず)です。鏡史郎は、裕里(松たか子)や裕里の娘、颯香(森七菜)、そして未咲の娘、鮎美(広瀬すず)と手紙を交わすことでその「未咲」との初恋を追体験するという物語です。

で、この映画が単なる叙情的感傷映画であるかどうかは、鏡史郎が何を追体験し、何を感じ、どう変わるかにかかっています。

ラスト近く、鏡史郎が廃校になった思い出の学校で「未咲」そっくりの鮎美と颯香を見かけ、その後小雨の中、ふたりを写真に収めるシーンがあります。

これですね。当然、鏡史郎は鮎美に「未咲」を重ねています。

ただ、ちょっと映画から離れた視点で言いますと、この画は岩井俊二監督のノスタルジック、さらに言えば少女的なるものへの憧憬だとは思います(笑)が、とにかく映画の中では、鏡史郎はこのシーンの前に、「未咲」が鏡史郎と別れた後、あるいは別れる原因なのかも知れませんが、陽市(豊川悦司)というDV男と一緒になり、子どもまで産んでいるその男にさんざんやり込められているんです。

その後にこれです。陽市に、お前は本当の「未咲」を知らないと罵倒されてもなお、鏡史郎の心の中の「未咲」はこの画だということです。

鏡史郎は未だ淡き初恋の夢から覚めていません。

たしかに映画はその写真を裕里に渡し吹っ切ったかのように終えていますが、陽市が語る「未咲」は、鏡史郎の心の中の「未咲」とは相容れない姿であるにもかかわらず、すごすごと引き下がってくるということは、自分(鏡史郎)はそんな未咲は知らない、そんな未咲は存在しないと、「未咲」の実像を見ないようにしているということです。

夢から覚めていれば、陽市と一緒に暮らすサカエ(中山美保)とすれ違う時、その姿に「未咲」を見ないわけがありません。そのように見せていないということは、岩井俊二監督が見ているものも上の写真の「未咲」なんだと思います。

18歳の高校時代が25年前だとしますと、おそらく鏡史郎が知っている未咲はそのうちの2,3年でしょう。ある人物の43年の人生のうち、18歳からの2,3年をその人物そのものとして懐かしむことは感傷以外のなにものでもありません。

なんだか感傷がだめだと言っているようになってしまいましたが、そんなつもりはなく、実在する「未咲」を描こうとしないのはだめなんじゃないの言いたいだけです。

この映画、本当は鏡史郎の映画だと思いますが、最初に書いたように松たか子さんのせいで(おかげで)裕里の映画になっています。

姉の同窓会のシーンでのこのこと挨拶までしてくるあたりは、大丈夫か、この映画? と思いましたが、その後の家に戻っての夫、宗二郎とのやり取りで一気に挽回していました。

「挨拶までさせられちゃった(台詞は適当)」の一言でそれまでの映画の空気を一変させていました。さらには、その後に続く過去のシーンでの森七菜さんがそのキャラクターと見事に一致しているのです。

たまたまの偶然なのか、演出力なのか、俳優の計算なのかはわかりませんが、このふたりの裕里がいなければ、この映画、感傷どころじゃなかったように思います。

ということで、さすがに次は違うの撮ってねという感じはしますが、岩井俊二監督らしい映画ではありました。

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