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グロリア 永遠の青春

ネタバレレビュー・あらすじ:自由に生きることと依存の束縛にまどろむこと

2021/12/11

ジュリアン・ムーアさんがリメイクを熱望した(らしい)セバスティアン・レリオ監督の「グロリアの青春(Gloria)」のジュリアン・ムーア版「グロリア永遠の青春(Gloria Bell)」です。

オリジナルはもう7、8年前の映画ですのであまり細かいところは記憶していませんが、俳優が変わっているだけで物語や展開はほとんど同じじゃないかと思います。

でも、映画の印象は随分違います。

グロリア 永遠の青春 / 監督:セバスティアン・レリオ
  • 俳優で映画は変わる
  • ジェンダー、あるいは自由
  • グロリア・ベルの求めるものは自由か?
  • 新しい作品を提供すべきだったのでは
  • 余談 WordPressに移行

  

俳優で映画は変わる

映画は監督(プロデューサーも含め)のもの、舞台は俳優のもの、ということは基本的には間違ってはいないと思います。もちろん、映画の場合のそれは俳優の存在を軽んじている意味ではなく、俳優を生かすも殺すも監督次第という意味合いではあるのですが、それを、ときに俳優が監督を越えてしまうような映画というものがあります。

それが良い方へ出た映画でふっと浮かぶのは「エル ELLE」のイザベル・ユペールさんなんですが、この「グロリア 永遠の青春」のジュリアン・ムーアさんは映画を下世話(ペコリ)にしちゃっています。一概にムーアさんのせいということでもなく、ムーアさんのアメリカ映画的(ハリウッド的?)価値観が出過ぎちゃったのではないかと思います。要は楽しませなくっちゃという意識が強いということ(でもないか…)かもしれません。

 

ということで、オリジナルのグロリアは現実感がありながら不思議にも見える人物だったのですが、ムーア版グロリアは何を考えているのかよくわかる映画的に単純な人物になってしまっているということです。オリジナルのグロリアを演じているパウリーナ・ガルシアさんの持ち味ということもあるかとは思いますが、下のリンクのインタビューを読みますと演じながら作り上げたグロリアのキャラクターであり、ガルシアさん自身「グロリアを演じながら発見することが多かった。それに様々な人との出会いがあり、楽しかった」と語っていることから、ああそういうことかなと感じます。

  • パウリーナ・ガルシアさんインタビュー

ムーアさんはグロリアを演じようとしてグロリアを演じています。パウリーナ・ガルシアさんのグロリアを見て「グロリア」というキャラクターを作り上げた上で演技に入っています。

その差で映画の印象がガラリと変わってしまったということじゃないかと思います。まあそれに、チリのサンティアゴとアメリカのロサンゼルスという、単に地理的な違いではない生活感、ひいては価値観の違いということもあるとは思います。

ジェンダー、あるいは自由

セバスティアン・レリオ監督の映画を「グロリアの青春」「ナチュラル・ウーマン」「ロニートとエスティ」と見てきた印象としては、性別としてのセックスや社会的性別としてのジェンダーへの意識を強く感じます。

どの作品も主人公は女性です。現実社会で女性が置かれている状況へのメッセージなのかもしれません。「グロリアの青春」では50代の女性、「ナチュラル・ウーマン」ではトランス・ジェンダーの女性、「ロニートとエスティ」では同性愛の女性、なにか共通するものがあります。

そして、そのどの作品も女性たちは社会(的視線も含め)に抗い自由を求めています。

グロリア・ベルの求めるものは自由か?

では、この映画のグロリア・ベルは何を求めているのでしょう?

恋愛そのものです。

グロリア・ベル(ジュリアン・ムーア)は、それなりの収入がありそうな(保険会社?)職業につき、娘と息子はすでに成人し、かなり昔(20年?)に別れた夫ともこだわりなく会うことができる自由人であり、そうあるべきだと考えている人物です。寂しくなればクラブへ行き、男性との出会いを求めます。

アーノルド(ジョン・タトゥーロ)と出会い、恋に落ちます。アーノルドは離婚し、娘二人も成人していますが、元妻や娘たちとは相互依存関係が続いており、断ち切れないでいます。断ち切りたくないということでしょう。そのふたりの恋愛模様が描かれていきます。

お互いに求めあって愛し合うも、アーノルドはグロリアの自由さが理解できず、グロリアはアーノルドの束縛にまどろむ優柔不断さに我慢が出来ず、求め合いと別れを繰り返します(2、3度だけど)。そしてついにグロリアはブチ切れてアーノルドの携帯をスープに突っ込んで大笑いし、アーノルドはその仕返しにグロリアを放置して自分の繭の中に帰っていきます。

この映画で描かれるのは自由になることの難しさではなく、自由と束縛の対立関係です。そして、アメリカ映画ですので勝利のファンファーレは自由に鳴り響きます。

新しい作品を提供すべきだったのでは

リメイクするのであれば他の監督に任せるべきでした。自ら監督するのであれば新しい作品を提供するべきでした。

そう感じる「グロリア 永遠の青春」でした。

  

余談 WordPressに移行

昨日からブログシステムをはてなブログからWordPressに変え、サーバーもConoHaWingに変えています。しばらくは WordPress のブロックエディタ Gutenberg になれるのが大変です。

はてなブログからWordPressへの移行については別ブログ IMUZA.com に書いていきます。

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