ウォン・カーウァイ臭ぷんぷんの「恋する惑星」風ドラマ、ん? パクリに近いか…。
「風の電話」以降「恋恋豆花」の予告編で見かけたくらいでどうしたんだろうと思っていたモトーラ世理奈さん、映画.comでその後の出演作を見てみてびっくり! むちゃくちゃ売れているじゃないですか?!
でもあまり作品に恵まれているようにはみえないですね…(ペコリ)。
ウォン・カーウァイ臭ぷんぷん…
監督は千原徹也さん、アートディレクターの方です。
見始めてしばらくはおもしろいかもと思っていたんですが、次第に既視感にとらわれ始め、中頃になりますと物語の展開の仕方や映像の端々がなんだかウォン・カーウァイっぽいなあといった気がし始め、なんとラストの「100万年君を愛す」のオチで映画を振り返れば、何だ「恋する惑星」のパクリかとさみしくなってしまいました。
で、映画タイトルとウォン・カーウァイでググってみましたら千原監督自身がそう語っていました。
いわく「カーウァイもゴダールも好きだけど、彼らの画作りを追求するというより、大切にしたのは「気分」です(TOKION)」だそうで、何だ、気分かい…(涙)。
もうひとつ同じ記事からの引用
映画ってそういう他愛のないもののほうが記憶に残りやすいと思うんです。『恋する惑星』もたいした話じゃないし。映画と日常がつながっている感じがいいんですよ。
(TOKION)
日常とつながっている映画って、この「アイスクリームフィーバー」は日常とつながってます?
それはともかくとしても、私は他に気づきませんでしたが、このセンスですとウォン・カーウァイだけじゃなく、また映画だけじゃなく、他にもなにか使われているものがあるかも知れませんね。
ざっとあらすじを…
同じアパートメントの一室の3つの時間が交錯して進みます。きっちり何年とつめられてはいないと思いますが、およそ1年から2、3年おきの時間感覚です。
菜摘のパート
時間軸順でいきますと、まず常田菜摘(吉岡里帆)のパートです。アイスクリーム屋の店長候補として働いています。以前はデザイナーとして会社勤めをしていたようですが、映画的にはほとんど意味はありません。
客として橋本佐保(モトーラ世理奈)がやってきます。菜摘が一目惚れします。菜摘は頻繁にやってくる佐保に、私アイスクリームつくれます!とアタック(死語…(笑))します。佐保はつくりに来てよと自分のアパートメントに誘います。
キスしそうな二人のビジュアルはその時のものです。その後二人が関係を持ったかどうかは描かれませんが、翌朝、菜摘が目覚めたときにはすでに佐保はいなくなっており、そのまま消えてしまいます。実は佐保は作家であり、デビュー作が注目されたままその後書けずにいるのか、ネットにはそのことを中傷する書き込みがあります。
3つの時間をアパートメントのベランダの天井の花模様で示しています。まず菜摘がアイスクリームがついた手でジャンプし指4本で花びら模様をつけます。ごていねいに菜摘のジャンプには前ぶりがあります。花模様は次のパートで変化します。
傷心の菜摘は一旦実家に帰ります。バスの中から二人の女性がアイスクリームを食べている様子を見ます。高島優(松本まりか)と姪の高島美和(南琴奈)です。もちろん一風景として見ているという設定です。
優のパート
その時の優は姉の葬儀のために実家に戻っており、姪の美和といたということです。
優はコンサルタントのような仕事かと思いますが、優秀な社員として期待されているようです。優の住まいは佐保が住んでいたアパートメントです。優は日々の疲れを癒やすために近所の銭湯に通っています。
ある日、突然美和が優のアパートメントを訪ねてきます。美和は渋谷で父親を探すと言っています。美和の父親古川イズミはもともとは優が付き合っていた男性ですが、その後姉と付き合うようになり美和が生まれたということです。その後、イズミは行方知れずになっているという設定です。要は仕様もない男ということらしく、後のシーンでは女性と一緒にいるところに優が出くわすということもあります。優は姉にイズミを奪われたと思っているようです。
もう書いていて面倒くさくなってきました(笑)。
ベランダの花模様ですが、美和がその模様を見つけて、ガムテープで茎と葉っぱをつけて花模様を完成させる流れになっています。映画ではこのシーンが先になっていますので、花模様がなぜあるのかは後にわかるということです。
ある日、ふたりで銭湯にいきますと閉店のビラが貼られています。店主との会話などもあるのですが省略して(笑)進みますと、優はその銭湯を買おうかと思いつき、結局そうします。会社も辞めたんでしょう。アパートメントも引き払い、美和は美和でもう父親のことはどうでもよくなったと言い、一緒に銭湯をやることになっていました。
佐保宛の宅配が置き配されており、アパートメントの移り変わりを示すシーンがあります。荷物は天井などから吊り下げる蝶の飾り物で、これもごていねいに、菜摘の手にアイスクリームがつくのは舞い込んだ蝶をつかもうとしてアイスクリームの中に手を突っ込んだためという蝶つながりになっていました。
おまけのパート
という時間軸の物語なんですが、映画は優が引き払ったアパートメントに新しく入ることになった男のシーンから始まります。
映画的にはほとんど意味はないのですが、電話で話しながら(だったと思う…)ベランダに出ますと、道路から見上げている女性と目が合います。菜摘です。その後、男は天井の花模様に気づき、葉と茎のガムテープを剥がし、花模様のアイスクリームをこすって取ろうとします。
後日、その男がアイスクリーム屋にいきます。菜摘は正式な店長になっています。男の手には「100万年君を愛ス」のタイトルの本を持っています。著者は橋本佐保です。
チャンチャン。
これだけの能力があるのなら…
いろいろ考えられていますし器用につくられているとは思いますが、「気分」ということなんでしょう、内容が薄っぺらいですね(ペコリ)。このシナリオなら今どきの AI でも書けそうです。
原作ではなく、原案:川上未映子「アイスクリーム熱」となっています。何ヶ所か川上未映子さんの文章ではないかと思えるナレーションが入っていました。
ひとつよくわからなかったことで、佐保が消えた後にナレーションのように、あるいはモノローグのように流れていたのは誰のものなんでしょう? 内容的には実は佐保が自分と付き合っているというようなことのようにもとれたんですが、もしあるとするとアイスクリーム屋のアルバイトの人(詩羽)しかいませんね。どうなんでしょう。
ということで、これだけの能力(映画全体でという意味…)があるのなら、もっと内容にこだわって欲しいと思う映画でした。