女王陛下のお気に入り

女性三人の愛憎劇とみるのが妥当かな…

これ、基本的な話は史実なんですね。

ウィキペディアを読みますと1705年から1710年くらいの話で、日本では元禄、徳川五代将軍綱吉の時代です。アン女王がサラと幼馴染であることや、17回も妊娠し、流産、死産、早世でひとりも成人しなかったことも事実のようですし、アビゲイルもサラの従妹として実在の人物です。

女王陛下のお気に入り

女王陛下のお気に入り / 監督:ヨルゴス・ランティモス

それにしてもこの映画の意図は何なんでしょうね。

アン(オリヴィア・コールマン)とサラ(レイチェル・ワイズ)、そしてアビゲイル(エマ・ストーン)女性三人の愛憎劇? それを利用したグレートブリテン王国内の権力闘争? あるいは、そうしたすべてを含んだ馬鹿馬鹿しくも切ない人間存在そのもの?

ほとんどのシーンが(どこかわからない)宮殿内ですすみますので確かに絵面には重厚さはあります。衣装も豪華というべきなのか、かなり重そうです(笑)。それに、特徴的なのが映像処理で、超広角(魚眼?)レンズを使った映像はGoogleのストリートビューのようです。

で、ふと思うことは、それらを取り払ってこの映画を考えてみれば、なに、このつまらないドラマは!? となります(ペコリ)。

だって、国を統治したり人の上に立つ能力のない人物がただ家系というだけで女王になっているわけで、それに取り入ってといいますか、どうも映画では切っても切れない幼い頃からの人間関係があるように描かれてはいましたが、そのいずれにしても思うがままに女王を操ろうとしているわけで、あるいはそこにこんな思惑があったんだよといった解釈でもあれば見ごたえもあるのでしょうが、何度も言いますように、切っても切れない愛憎としかいいようのない関係しか見えてこず、一方のアビゲイルにしても、いったい何が狙い?と首をひねるほどにのし上がっていこうとする力のようなものは感じられず、一貫した人物として描けてはいません。せいぜいが没落貴族(ウィキペディアでは商人)から復権したいことかと思いますが、サラに毒を盛ったり、サラを追いやってからの放埒ぶりなど、そんなことが目的だったの? 最初は素直だったじゃん! と思えて、とても物語の軸を担える人物には描かれていません。

ということで、この映画、ドラマは三流だと思います。

ただ、この映画、昨年2018年のベネチア映画祭で審査員大賞の銀獅子賞とオリヴィア・コールマンさんが最優秀女優賞を受賞しています。

Biennale Cinema 2018 | Official Awards of the 75th Venice Film Festival

確かに、オリヴィア・コールマンさんの方、ラストカットのアン女王の悲痛な表情は、好きで女王になったんじゃないかもねと、人間、生きることの辛さみたいなものがにじみ出ていたようには思います。

ヨルゴス・ランティモス監督、前作が「聖なる鹿殺し」です。今読んでみますと、この映画もあまりいい評価はしていないんですが、家族愛憎ものと書いています。

www.movieimpressions.com

やはり、この「女王陛下のお気に入り」も女性三人の愛憎ものと見るのが正しいのかも知れません。

それにしても男たちが大した役回りを与えられていないのは面白いですし、女性も混じってはいましたが、男たちがアヒルレースに興じたり、ホイッグ党の重鎮のおじいちゃんがアヒルを大切に抱いていたり、何とも意味不明な裸の男に果物をぶつけて喜んでいるシーンとか、それが監督の本心なのか茶化しているだけなのかはわかりませんが、かなり意図的ではありました。