アメリカ映画らしい熟年夫婦の会話劇、許す?別れる?結婚する?…
ダイアン・キートン、スーザン・サランドン、リチャード・ギア、ウィリアム・H・メイシー、平均年齢75.75歳の俳優たちが二組の熟年夫婦を演じる映画です。
マイケル・ジェイコブス監督って誰?
これだけのキャストですのでそれなりのキャリアがある監督かと思いましたら、映画としては初監督作品みたいです。ただ、年齢も68歳ですし、舞台やテレビでは第一線で活躍されているようです。映画では1994年の「クイズ・ショウ」にプロデューサーとしてクレジットされています。ロバート・レッドフォードさんが監督だった映画です。1995年のアカデミー賞に作品賞など4部門でノミネートされています。
で、この「アバウト・ライフ 幸せの選択肢(Maybe I Do)」は、1977年に初演され、翌年ブロードウェイでも上演された「チーターズ」というマイケル・ジェイコブス監督自身の戯曲を下敷きにした映画とのことです。
プロデューサーでもあるダイアン・キートンさんがこの戯曲を映画にしたいとオファーしたのかもしれませんね(想像です…)。
俳優たちは楽しそうだが…
ロマンティック・コメディのジャンルでしょうか。それに舞台劇ベースということもあり室内の会話劇でほとんど動きはありません。
結婚生活に飽きている二組の熟年夫婦が、Aの妻とBの夫、Aの夫とBの妻といった具合に男女交錯する形で浮気をします。誰も気づいていないという設定です。A夫婦には娘、B夫婦には息子がいます。二人は愛し合って一緒に暮らしていますが、親同士は会ったことがありません。女の方は結婚を望み、男の方は親のようにはなりたくない、愛し合っている今のままでいいと言っています。女が結婚か別れかと男に最後通牒を突きつけて両親のもとに帰ります。成り行きで男の両親をディナーに招待することになります。夫婦であり、浮気相手である4人がかち合います。
さてどうなるか?!
というわけでもなく、なにせコメディですので修羅場などにはならずに、謝ったり、許したりの大人の会話(笑)が続きます。
そして結局、若い二人は結婚、夫婦のうち一組は元の鞘に収まり、もう一組は別れを予感させて終わります。
という、日本じゃ成立しそうもないコメディ映画です。それに面白いかどうかも含め、かなり微妙な映画です。ほとんどのシーンが一対一の会話シーンで構成されていますので、会話劇としての面白さもアンサンブルというところまではいかず、俳優たちが楽しんでやっているなあと感じる程度の映画です。
多分そうします、え、どうするの?…
4人の人物像にはそれぞれ変化がつけてあります。
グレース(ダイアン・キートン)は宗教心が厚く、浮気と言っても、一人で映画を見に行き、映画を見て泣く男サム(ウィリアム・H・メイシー)に同情して(というわけでもなく、よくわからない(笑)…)話しかけ、その後サムがモーテルへ行こうとするも断って二人で街を歩きながら話をしただけです。それでもその浮気心を後悔して、落ち着かない時間を過ごすという人物です。
そもそもグレースが一人で映画に行ったのは、夫ハワード(リチャード・ギア)がモニカ(スーザン・サランドン)と会っているからです。ハワードとモニカの方は4ヶ月前からだと言っておりセックスのある関係です。ハワードは後にセックスだけの関係だと言い訳します。
ハワードとモニカのシーンはベッドの上での会話から始まり、モニカがセックスを求めるもののハワードがいっこうに応える気配もなく、新聞か雑誌を読みながら社会情勢がなんて言っていますので、てっきり夫婦の会話かと思いましたらホテルでの密会シーンでした。結局モニカは怒って帰っていきました。
ハワードの人物像は、リチャード・ギアさんがただ楽しんで演じているだけ(笑)みたいなところがありよくわかりませんが、モニカの方は精力的な人物でまだまだ人生を謳歌したい、精神的にも肉体的にも愛を感じたいという人物です。
モニカとサム夫婦は完全に冷え切っているようです。サムがモニカにコーヒーを入れてくれというシーンがあり、ただそれだけですが、サムには家父長主義的なところがあるような描き方がされています。グレースと街を歩きながらの会話でも若い頃に最愛の人がいたという話ばかりしており、つまりはモニカとの結婚を後悔しているということですので、そうした人物として描いているんだと思います。
ラストシーンは、グレースとハワードの娘ミシェル(エマ・ロバーツ)とモニカとサムの息子アレン(ルーク・ブレイシー)の結婚式となり、グレースとハワードは互いを許し合いともに生きていくようです。ハワードがケーキのクリームをグレースにつけてキスしようとしていたのはリチャード・ギアさんのアドリブじゃないですかね(笑)。
もう一方のモニカとサムの方は、モニカが素っ気なく立ち去っていき、サムがなるようにしかならんといった素振りでしたので別れることになるのでしょう。
Maybe they do.