オアシス

過去に見た映画の残像を頼りにつくっても…

「山戸結希、松居大悟、三宅唱ら数多くの監督たちの映画やドラマ作品に助監督として参加してきた岩屋拓郎監督が、映画企画コンペで新人賞を獲得した自身の企画をもとに(映画.com)」撮った映画とありますので何のコンペかとググりましたら…

オアシス / 監督:岩屋拓郎

物語が足りない…

「グラスゴー15」という制作会社の「第1回映画企画募集」っていうもののようです。

どんな企画か、映画から想像してみますと、

  • 幼馴染の男女三人が今は裏社会で生きている
  • 男二人は対立関係にある組織の一員である
  • 女は記憶を失っている
  • 組織間の抗争が勃発し、一方の男が組織か友情かの選択を迫られる
  • その男は友情を選択し、もう一人と女を救い、壮絶な戦いの末、組織を壊滅させる
  • 三人は友情を確かめ合う

こんな感じかと思います。なぜ、リストにして文章にしていないかは、各項目をつなげる要因や背景といったものが映画からは読み取れないからです。

ときどきフラッシュバックが入り、中学生時代(かな…)の三人が何らかのトラブル、女の母親絡みのトラブルのようでもありましたがあまりはっきりしておらず、その際、一人の男はヤクザ(のような男…)に暴行され、もう一人の男は逃げたようです。女の記憶障害はその時にヤクザに突き飛ばされたようなカットがありましたので(違うかもしれない…)頭でも打ったのかもしれません。あるいは本人がトラウマとか言っていましたのでなにかあるのでしょう。

また、企画ということではバイオレンスシーンが多いですので、それを手持ちカメラのアップでリアリティを出すみたいなことがあるのかもしれません。

ただ、これらが企画のポイントだとしますと、映画にするには物語が足りません。その結果が映画に出ています。率直に言えば、映画にするには無理があるということです。

物語というのは人物やものごとの背景や何かことが起きたりする要因ですので、それがないと映画に深みが生まれません。映画を見てそれが具体的にわからなくてもあれば俳優も画も変わります。逆に言えば、この映画に物語があるとするならば映画づくりや演出が未熟ということになります。

過去に見た映画の残像に頼っても…

男のひとりをやっている清水尋也さん、ピリピリした感じがよかったと思います。冒頭シーンの夜の繁華街を歩くシーンは映画としても期待をもたせていました。おそらく人物造形するほどシナリオに書き込まれていないのでしょう。それに、もし上に書いたように物語のないシナリオだとしますとあれ以上に演じるのも難しいと思います。

リボルバー・リリー」の死神男や「さがす」の名無し男の俳優さんです。それらの映画では名前で記憶できていませんが今後は顔を見れば名前が浮かぶでしょう。

もうひとりの男を演じているのは高杉真宙さん、この俳優さんは「」や「君が君で君だ」で見ているからなのか、名前の読み方まですぐに浮かびます。好青年の印象が強い俳優さんです。

そして、女を演じている伊藤万理華さん、「サマーフィルムにのって」がかなり印象に残っている俳優さんです。この「オアシス」ではなにをどう演じていいのかわからなかったんじゃないでしょうか。

ということで、岩谷拓郎監督にはなにか、おそらく映画だとは思いますが、過去に見た残像のように残っている画があるんだと思います。それを頼りに撮った映画じゃないかと思います。