アルモドバル監督のクィア西部劇。パエリア・ウェスタンとなるか…
アルモドバル監督が西部劇? さらに短編? という映画です。ただ、短編については2020年に「ヒューマン・ボイス」を撮っていますし、多くの監督がそうであるようにアルモドバル監督もメジャーになる1980年以前にはたくさん短編を撮っています。
でも、なぜ今この企画? と思いましたら…
サンローラン プロダクション企画…
サンローランのクリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロさんの企画でした。
サンローランは2019年にアートプロジェクト「Self」というプロジェクトを立ち上げ、その一環としてギャスパー・ノエ監督が「ルクス・エテルナ 永遠の光」を撮っています。他にも劇映画だけではなく数本の映像作品が発表され、ウォン・カーワァイさんのプロデュースというものもありました。
この「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」の日本の公式サイトには「ペドロ・アルモドバルと(略)サンローランの子会社「サンローラン プロダクション」とがタッグを組み製作」したとありますので、その「Self」が発展的に解消して法人化されたのかもしれません。
「Self」については「ルクス・エテルナ 永遠の光」でも少し触れていますし、サンローランのサイトのメニュー SL PRODUCTIONS にも残されています。
このサンローラン プロダクションは今年のカンヌ国際映画祭のコンペティションに3本の映画を送り込んでいます。ジャック・オディアール監督「Emilia Perez」、デヴィッド・クローネンバーグ監督「The Shrouds」、パオロ・ソレンティーノ監督「Parthenope」です。資金のことなど詳細はわかりませんがすごいですね。
Saint Laurent Productions is a registered subsidiary of the house, marks the first fashion house to count the full-fledged production of films among its activities.
(SL PRODUCTIONS)
「サンローラン プロダクションは正式な子会社であり、本格的な映画制作会社である」と書いてあります。
アルモドバル監督は短編向きじゃない…
で、映画ですが、なんだか中途半端ですね。
アルモドバル監督は、基本、ストーリーテラーですので、きっと本人も語りきれていないと思っているしょう。
内容はアルモドバル監督らしいクィア西部劇です。
25年前、つかの間の愛に溺れた男たちが再会し、老後をともに生きる(かもしれない…)という物語です。ただし、そこに西部劇らしい(かな…)銃撃戦が絡んできます。
シルバ(ペドロ・パスカル)が25年ぶりに西部の小さな町で保安官をやっているジェイク(イーサン・ホーク)を訪ねてきます。ジェイクは手作りのシチューでもてなし、酒を酌み交わし、昔を懐かしみ、そして愛し合います。
25年前、ふたりは娼婦たちと戯れてワイン蔵に忍び込み、拳銃で樽を撃ち抜き、ワインシャワーを浴びるように飲みます。次第にふたりは盛り上がり濃厚なキスを交わし始めます。娼婦たちはあっけにとられ去っていきます。
そして、2週間、ふたりは愛し合ったといいます。また、ふたりで牧場をやろうとも言い合ったようです。
しかし、翌朝、口論になります。実は、その町では殺人事件が発生しており、シルバの息子がその容疑者となっています。ジェイクはシルバが息子を逃そうとやってきたのではないかと疑い始めたのです。
シルバは息子のもとに向かい、お金を渡し、逃げろといいます。そこにジェイクがやってきます。三つ巴で銃を向け合う状態になります。息子はジェイクに、シルバは息子に、そして、ジェイクは戸惑いつつ息子に発砲しようとしたその時、シルバがジェイクの脇腹を狙い発砲します。ジェイクは倒れます。
シルバは息子を逃し、ジェイクにわざと急所をはずしたと言います。そしてジェイクを家の中に運び込み、ベッドに寝かせて介抱します。ふたりはかつて牧場をやろうとしたことを思い出します。
タイトルの「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」は劇中で歌われていた曲からです。ポルトガルのアマリア・ロドリゲスさんの哀愁漂うファド「Estranha forma de vida(Strange way of life)」です。下の動画をスタートさせますと、冒頭エレキギターのジャカジャーンが入っていますのでご注意。
※スマートフォンの場合は2度押しが必要です
映画では、カエターノ・ヴェローゾさんの歌に合わせて俳優のマニュ・リオスさんが口パクで演じているらしいです。確かに下の動画の感じでした。
※スマートフォンの場合は2度押しが必要です
パエリア・ウェスタンへの第一歩…
という映画なんですが、さすがにちょっとばかり物語が荒すぎます。でもまあ、アルモドバル監督のことですので、これはパエリア・ウェスタンといったものの第一歩で、いずれ本格的な西部劇を撮ってくれることでしょう。
なにせマカロニウェスタンはロケ地としてはパエリア・ウェスタンですのでなにか考えているんじゃないかと思います。
この映画はスペインのアルメリアのタベルナス砂漠で撮られています。「夕陽のガンマン」などマカロニ・ウェスタンの多くのロケ地であり、その時のオープンセットがミニ・ハリウッドの名でテーマパークになっています。テキサス・ハリウッドというテーマパークもあるようです。ググってみてください。