高良くん、力入りすぎ、多部未華子さん、着物が似合ってます。
「〝巨匠〟中島貞夫監督 20年ぶりの最新作 59年の映画人生を次世代に受け継いだ、日本映画史に残る新しい「ちゃんばら映画」が誕生!」なんて宣伝コピーですのでかなり期待して見に行ったんですけど…。
といっても、実は中島貞夫監督の映画、見たことないかもしれません。見ていたとしてもかなり昔のことで記憶にありません。
もうひとつ期待は「クライマックスの30分に及ぶ大立ち回り。そこで躍動する多十郎/高良健吾の肉体、そして殺陣。」とある、高良健吾さんの殺陣と立ち回りです。
んー、申し訳ないですが、これもまったくもって物足りなかったです。
物語は幕末の話です。
多十郎(高良健吾)は長州藩を脱藩して京で暮らす浪人です。剣の腕も相当なもののようですが、絵を描くのがうまく、西陣の反物屋(だったと思う)が多十郎を訪ねてきて、多十郎の描いた夏みかんの下絵をこれじゃ売れないどうのこうのと話をするシーンがありました。それが多少の食いっぷちなのでしょう。
居酒屋の女将おとよ(多部未華子)がいます。
この映画、宣伝コピーはアクションものっぽい打ち出しなんですが、タイトルは「殉愛記」なんですよね。実際、エンディングもそっち系が強調されています。
当然、相手はおとよということになりますが、これも立ち回りや殺陣と同じように実に物足りないんです。「殉愛」なんて文字を使っているのですからもっとクサくすればいいのにと思いますが、抵抗があるんでしょうか。
二人とも、というより今の20代、30代の俳優さんは皆見た目が整っていて美しいですし、コイいーところがありませんので、そもそも「殉愛」なんて言葉が似合わないです。
ただ、それとは別に多部未華子さん、着物が似合っていてよかったです。かつらは使わず地毛だと思いますが、出で立ちが美しかったです。
で、そのおとよは、もともと身寄りがなく、金貸しのおばさんに育てられていたのを男に騙されて駆け落ちした過去があるという設定で、今は居酒屋をまかされています。多十郎は、用心棒というわけではありませんが、たまたま飲んでいる時に乱暴者(役人?京都見廻組?)をやっつけていました。
このシーン、最初、おとよは気を張ってその乱暴者に相対していたのですが、その者らが実力行使におよべばそりゃ怖いですわね、多十郎がその者らを追い出した背中に泣きじゃくるように抱きついていました。これ、悪くなかったんですが、考えてみれば、この映画を象徴するようなシーンでした。
何ていうんでしょう、漫画のようなシーンなんです。おとよが抱きついた後ろからのカット、多十郎が目をくるくるさせる正面からのカット、取り囲む客たちが目を丸くしているところをなめるカット、てな感じです。
中島貞夫監督のことは全く知りませんが、この映画が中島監督の思うように作られているとすると、85歳という年齢から考えればそれはそれすごいことですが、私はあまり力を入れていないんじゃないかと思いますし、他の人物の、ひとりとは限りませんが、とにかく今どきの軽いセンスが入っているように思います。
ま、とにかく、この二人のシーンは何シーンかあり、設定としては多十郎はニヒリストですのでわざと避けているわけですが、ある時、おとよに告白されて押し倒していました。ただそこまでです。ニヒリストですからその先へは進みません(笑)。
ただ、クライマックスの大立ち回り(?)になる前の別れのシーンでは多十郎が思いっきりキスをしていました。今どきっぽいですね。
話が後先になっていますが、大立ち回りになる理由は、まず背景として、幕末ですので尊王攘夷派の長州藩から脱藩組がたくさん京に入っており、また新選組も活動しています。一方、幕府も京都見廻組を組織して警備にあたっています。という設定だと思います。
もともと多十郎も尊王攘夷派の藩士に誘われて脱藩したのですが、なにせニヒリストですのでそんなことどうでもいいわけです(笑)。ただ、その兄を慕って弟数馬(木村了)がやってきます。
そんな折、(多分)居酒屋でのいざこざを恨みに思った役人(見廻組?)が多十郎は長州の尊王攘夷派であるとして襲撃します。長屋での立ち回りがあり、その際、数馬が顔面を切られ失明します。多十郎はおとよに、自分が囮になって時間を稼ぐので数馬を連れて逃げるように言います。
そして、いよいよ30分にわたる大立ち回りです。
ですが、最初に書いたようにまったくもって物足りません。一対多数の殺陣も美しくありません。ラストに見廻組の隊長との一対一の殺陣もありますが、わずか1分ほど、それもかなり細かくカット割りがされています。
多十郎、隊長、相打ちとなり、ともに崩れ落ち、多十郎は捕縛されます。
「おとよー」と叫ぶ多十郎。ニヒリストなのにマジですか!?
山の中を逃げるおとよと数馬、その時、おとよは多十郎の呼ぶ声を聞くのです。
であるなら、殉愛ものに純化してつくればいいのにと思った映画です。
高良くん、力が入りすぎています。それに、どちらかといいますと「月と雷」とか「横道世之介」といった現代もの向きです。多部未華子さんはすでに書いていますが、着物が似合っていしましたしいい感じでした。
脇は吉本の芸人さん?