予告編を見れば、内容はわからないまでもおおよその傾向は想像がつきますので、まあパスやねと思っていたのに魔が差したように劇場の予約サイトをポチッとしてしまいました(笑)。
ブラック・コメディ?
なぜこんな映画を作ろうとしたのかに一番興味がありますね(笑)。
そもそも初っ端から馬鹿げた設定で始まりますので、いくらなんでも作る側ものめり込んで見させようとしているとも思えず、必然的に一歩引いたところから客観視できるように作られている映画です。
つまり、ブラック・コメディのジャンル映画かと思いますが、かと言って風刺や皮肉も殆ど感じられず、いや、あるにはあるのですが風刺や皮肉に普遍性がありません。早い話ドキッともしないということです。
ドキッとする人、いる? いないでしょう。シェフ(レイフ・ファインズ)の詰めが甘いですので無理じゃないでしょうか。
指を詰められた高齢の男性夫婦も何を咎められて何に復讐されているのかわかりませんし、料理評論家の女性はその評論で何軒かレストランを潰したからと言われていましたが、もっと具体的にその悪行を詰めていかないと反省もできませんよね。売れなくなった俳優やそのレストランのオーナーの部下たちはそもそもこの大掛かりな仕掛けにしてその設定がしょぼすぎるでしょう。
主演のマーゴ(アニヤ・テイラー=ジョイ)のパートナーのタイラーは何に復讐されたんでしょう、その知ったかぶりですかね。シェフの囁きで自ら首をつっていましたのでその行為に値する罪悪感が何だったのか興味がありますが、映画は教えてくれません。
客の前で自ら拳銃で頭を撃ち抜いたスーシェフはきっと催眠術にかけられていたんでしょう(笑)。
グルメ・エリート批判?
たしかこのレストランの料金は一人1,250ドルと言っていたと思いますが安すぎません? 全て込みでしょう、ワインだって何本もあけているわけですからね。
もちろん映画の設定として安すぎるという意味で、多分この映画のベースは料理に関するエリート主義のようなものを皮肉っているんだとは思います。
マーゴがシェフの純真な心根(?)を刺激してチーズバーガーを作らせるシーンでそれまでの馬鹿げたディナーと対比させていましたが、ブラックものにしては単純過ぎます。
このネタならブラック・コメディではなく王道のコメディで描くべきです。
奉仕する者とされる者?
シェフはマーゴだけがこの場にふさわしくないと異様にこだわります。その理由にマーゴは奉仕する側だからと言っていたのは、マーゴがセックスワーカーだからということなのか、単にタイラーに性的な対象としてしか見られていないということなのかはよくわかりませんでしたが、奉仕する側かされる側かを問題にするのなら、売れない俳優だって奉仕する側ですし、3人組だってオーナーの虎の威を借りて横柄ではあるにしても基本奉仕する側です。
シェフは自分の料理への思い、客へのサービスが報われないからと自分を奉仕する側に位置づけていましたが、自分はあのレストランの権力者であり、あの軍隊調の料理人たちに奉仕されていることに気づかないんですかね。ああ、催眠術でした(笑)。
やっぱり王道のコメディでやるネタです。