ノースマン 導かれし復讐者

ネタバレレビュー・あらすじ・感想・評価

ライトハウス」のロバート・エガース監督です。そのレビューに書いた通り、かなり苦手な映画だったのですが、なぜかこの「ノースマン」を見てしまいました(笑)。理由は怖いもの見たさ(苦手なもの見たさ)ということではなく、この映画が「ハムレット」の元ネタと言われているスカンジナビアのアムレート伝説を題材にしているらしいということからです。

ノースマン 導かれし復讐者 / 監督:ロバート・エガース

喜劇的ハムレット

元ネタの「アムレート」がどんな物語なのかをウィキペディアを読んでみましたが、映画はあまり元ネタに基づいていないですね。むしろ「ハムレット」を意識しているんじゃないかと思います。一般的な会話は比較的簡単な英語なんですが、ところどころに詩的な台詞が入ったり、何語かわかりませんが英語字幕(日本語字幕付き)のついた台詞が入ります。IMDb には「Norse, Old」北欧の古語? となっていますし、アムレートの伝説はサクソ・グラマティクスの著作『デンマーク人の事績』に書かれているとのことですので、そこからの引用かも知れません(未確認)。

ただ、多少そうした神話的な空気はあるにしても、やっていることは単純な肉体アクションの復讐劇です。

結末も「ハムレット」とは決定的に違います。「ハムレット」は一族滅亡の悲劇ですが、この「ノースマン」は、アムレートとオフィーリア的存在のオルガの間に双子の子どもが生まれ、王国の再建という希望が託されて終わっています。

主人公のアムレートを始め男たちの筋肉はすごいです。CG でしょう。

映画の基本は、物語の整合性よりもそうした肉体派エンターテインメントのつくりですので、脈略なくいろんな奇妙なことが起きます。なんじゃ、こりゃ? とか、なにやってんだろう?! みたいな感じでツッコミどころも多く結構笑えます。

俳優が誰だかわからない(笑)

物語は、王たるアムレートの父が叔父に殺されるところから始まります。

父親のオーヴァンディルを演じていたのはイーサン・ホークさんだったらしいです。多くのシーンが暗い上にヒゲもじゃですので気づきませんでした(笑)。母親はよくわかります。ニコール・キッドマンさんです。久しぶりに見ました。時々しょうもない役にキャスティングされますので、またか?!と思いましたら、後半になり、オー! いい役じゃん、と思いました…が、最後は簡単に殺されてしまいました。

日本の公式サイトではスラヴ族の預言者となっているビョークさん、あれじゃ、誰だかわかりませんし、ビョークさんじゃなくてもいいんじゃないの?と思います。

オフィーリア的存在のオルガはアニャ・テイラー=ジョイさん、このところよく見る俳優さんです。「サラブレッド」「ラストナイト・イン・ソーホー」「ザ・メニュー」などなど、「ラストナイト・イン・ソーホー」は結構記憶しています。

アムレートのアレクサンダー・スカルスガルドさん、ググって出てくる写真は優しそうなのに映画では血管切れそうなシーンが多かったです(笑)。

復讐が復讐を生む復讐劇

9世紀、スカンジナビアのある王国、オーヴァンディル王(イーサン・ホーク)が、戦いからでしょうか、王国に帰還します。王子アムレートは15歳くらいの設定でしょうか、成人の儀式が行われます。その直後、オーヴァンディルは弟フィヨルニル(クレス・バング)に殺され、その妻グートルン王妃(ニコール・キッドマン)も略奪されます。アムレートは復讐を誓いながらひとり船で逃げます。

数年後、アムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)はバイキングの戦士となっています。いきなりオッチャンやん?! のツッコミ無用です(笑)。

ある日アムレートは、スラブの預言者(ビョーク)から、あんた、何やってんの?! 復讐しなくっちゃダメでしょ! と叱られて、ああそうだったと思い出します。

ひょっとして数十年後の字幕を見間違えましたかね? いや、そうならおじいちゃんになっていますね。

アムレートは奴隷船に紛れ込み、フィヨルニルの元に向かいます。フィヨルニルは王になったもののノルウェイ(だったと思う…)のなんとかに国を追われて今は羊飼いをしているらしいです。アムレートは、通りすがりの誰かがそんなことをボソボソと漏らしたのを聞いて、即断で海に飛び込み奴隷船に乗り移っていました。その船がフィヨルニルの元に行かなかったらどうするんだろうと思いました(そういう映画ではありません…)が、とにかく、その船で奴隷として売られていくオルガ(アニャ・テイラー=ジョイ)と出会い、ともにフィヨルニルに買われます。

多分このあたりで映画の1/3くらいだったと思います。実際の復讐が始まるのはほぼ終盤なんですが、その間に何があったのかほとんど記憶していません。母とフィヨルニルとの間に幼い子どもがいるのを知ることとオルガと関係を持つくらいでしょうか。とにかく、終盤にことの真実(かどうかは?)が明らかになるまではつまらないです。

アムレートの復讐が始まります。フィヨルニルの息子(前妻の子)を寝ている間に殺します。そして、母のもとに忍び込み、自分はアムレートだと名乗ります。しかし、母は思わぬことを話し始めます。

お前は私がデンマーク(だったかな?)から嫁いだと思っているが、本当はお前の父親にレイプされ無理やり妻にさせられ、その時お前が生まれた。お前の父親は悪党であり、お前は呪われた子だ。そして、私がお前の父親を殺してほしいとフィヨルニルに頼んだのだと明かします。さらに、フィヨルニルは優しい男だと言いながらも、自己保身という設定なのか、母はアムレートに擦り寄り、お前とともに私たちの王国を築こうとアムレートにキスをします。

なんとも中途半端な人物設定ですね。このまま母グートルンの望みを叶えてしまえば母が主役になってしまいますし、アムレートにそれほどの精神的負荷をかけるほどの人物設定はしていないしというところからの成り行きなんでしょう。ちょっとはハムレット的に苦悩したらと思いますが、あっけなく母を殺します。

アムレートと、今度は息子と妻を殺されて復讐に燃えるフィヨルニルの最後の死闘が火の山を背景にして繰り広げられます。相討ちで二人とも死にます。

後日、オルガはアムレートの双子の子どもを生み、白馬(だったかな?)に乗って未来へと駆けていきます。