ぼくらの家路/エドワード・ベルガー監督

これ、エンディングも「希望に満ち(公式サイト)」てはいないよね。日本にもジャック&ベティはたくさんいるんだろうな…。

冒頭、大きなベッドにふたりの幼い子どもが気持ちよさそうに眠っています。カメラはその姿をじっと捉えています。至福の時はゆったり流れる、と思いきや、突然映像は切り替わり、部屋の中を慌ただしく動きまわる子供を追いかけるように、カメラもまた手持ちのまま激しく動きまわります。

おお、いけるじゃない、この映画! この切り替えはいい感じでしたね。

2014年のベルリン国際映画祭は、新しい才能の誕生に沸いた。「並外れた演技力」「忘れがたい」「彼を見るための映画」とメディアから絶賛されたのは、これが俳優デビュー作となるイヴォ・ビッツカー。ドイツ中で6ヵ月もの間、毎日開かれたオーディションの最終日に、何百人という応募者の中から見出された逸材だ。(公式サイト

母親( ルイーズ・ヘイヤー)は、男との関係が第一義で子どもたちのことを気にかけてはいません。「いい男に当たらない」といった台詞があったと思いますが、男遊びというよりも男性依存性といった感じです。

下の子マヌエルの面倒もジャック(イヴォ・ビッツカー)がみる生活が続いており、マヌエルが火傷をする事故が原因でジャックは強制的に養護施設に預けられます。

いわゆる育児放棄の母親なんですが、この母親、もちろん映画的にということですが、いい感じに描かれていました。男といる時は男しか目に入らず、子どもが目の前にいる時には本当に愛しているように見えます。育児放棄が特別なことではない感じがよく伝わってきます。

で、夏休み、施設に迎えに来るはずの母親が来ません。当然男とどこかへ行っているわけですが、ジャックは弟を連れて母親を探し回ります。家の鍵もなく路上生活の3日間です。

ということで、この映画はジャックを演ったイヴォ・ビッツカーにつきます。

不安感と責任感が綯い交ぜ(ないまぜってこの漢字ですか!?*1)になった切迫感や意志の強さ、演技というより、今のところ、もって生まれたというべき雰囲気や存在感が素晴らしいです。

子役で評価されますと俳優として成長していくのもなかなか大変のようですが、良い俳優に育ってほしいものです。

で、映画ですが、最初に書きましたように出だしは結構引きこまれますが、正直、後が続きません。イヴォ・ピッツカーくんで持っているようなところもあり、何なんでしょう? 何かが足りなく、飽きてきます。

テーマや手法はダルデンヌ兄弟監督に似てはいますが、カメラの目線が違います。見たいものを撮ろうとする意志が感じられません。

言うなれば、物語を作ろうという意志はあっても、物語が生まれてこないという感じでしょうか。ラスト、ジャックの行動があまりにも大人目線なのはそのせいでしょう。

*1:あまり良い意味では使わない言葉かもしれません。