無伴奏/矢崎仁司監督

成海璃子さんが良かったのですが、映画は時代背景などあまり関係のないメロドラマでした。

予告編で見た、70年頃の時代背景、ファッションや街やそもそもの人物感覚に微妙なズレを感じて、それでも見てみようかなと迷いに迷って(それほどでもない(笑))、結局見てきました。

映画はともかく、成海璃子さんが良かったです。名前は知っていましたが、こんな大人の女性だったとは知りませんでした。この映画では高校生役をやっており、さすがに大人っぽすぎるでしょうとは思いますが、その違和感を存在感でカバーして、迷いながらも自分自身を失わない女性をいい感じで演じていました。

1969年、反戦運動や全共闘運動が起きていた激動の時代。高校3年生の野間響子(成海璃子)は、親友に連れられて入ったバロック喫茶「無伴奏」で、大学生・渉と、渉の親友・祐之介、祐之介の恋人・エマの3人に出会う。いつしか響子は渉に惹かれていく。初めてのキス、初めてのセックス。ある日、思いもよらない衝撃的な事件が起こる――。(公式サイト

時代背景の描写は、正直、もう少しお金をかけてこだわって欲しいと思いますが、まあ物語の主題がそこではなく、男女四人の恋愛物語ですから、仕方ないところかも知れません。

映画の展開としては、一貫してリズムが同じですので、ちょっとばかり2時間超え(132分)は苦しいですし、中ごろでしたか、渉(池松壮亮)と姉(松本若菜)の関係が匂わされた段階で、ああ、ひょっとして渉と祐之介(斎藤工)の関係がキーポイントか?と頭をよぎりますし、原作がどうなのかは知りませんが、ラスト、四人の関係(響子をのぞいて三人か?)すべてがメロドラマというのは、あまりにも残念過ぎます。

ということで、収穫は成海璃子さんという映画でしたが、それにしても焦点の定まらない映画です。

なぜ、今、この映画を撮るのかがみえません。

1969年、70年という時代を描こうという意図もなさそうですし、その時代、同性愛がどう受け止められていたかにコミットする気などまるでなさそうですし、響子以外の三人を全く生活感のない、響子の日記の中だけの人物のように描いて(あるいはこれが意図か?)、挙句の果てにメロドラマで落ちをつけるというのは、さすがにちょっとまずいでしょう。

原作を読んでいないのでどうこう言うのもなんですが、原作の何に感じて、今、これを映画化しようとしたのでしょうか? もちろん、企画の立ち上げには多くの人間か関わっているのでしょうから、監督がどうこうという意味ではありませんが、やはりもう少し時代感覚といいますか、2015年に撮る1969年の映画の意味合いを見せていただきたいとは思います。

成海璃子さん、もっと大人の女性の役で見てみたい俳優さんと思ったのですが、考えてみれば、今の日本映画、そんな役柄、もっとも需要がなさそうですね。

無伴奏

無伴奏

  • 発売日: 2016/12/02
  • メディア: Prime Video