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盗まれたカラヴァッジョ

(ネタバレ感想)イタリア人のイタリア人によるイタリア人のための映画

2020/02/16

「カラヴァッジョ展」が大阪で開催中です。昨年2019年の8月から札幌、名古屋と巡回しているようです。また、これとは別の企画なんでしょうか、今年の10月には国立新美術館で「カラヴァッジョ《キリストの埋葬》展(仮称)」も開催されます。

そのカラヴァッジョの作品「キリスト降誕」は、シチリア、パレルモのサン・ロレンツォ礼拝堂の祭壇画として描かれたものらしいのですが、それが1969年に何者かに盗まれたまま今も行方不明になっているとのことです。

その謎に迫ろうという映画です。

盗まれたカラヴァッジョ

盗まれたカラヴァッジョ / 監督:ロベルト・アンドー

いや、迫っていませんでした。余計に謎が深まってしまいました(笑)。

監督は、「ローマに消えた男」「修道士は沈黙する」のロベルト・アンドー監督です。ただ、この2本、どんな映画だったかなあと思いだそうとしても、ところどころのシーンは思い浮かぶのに映画の全体が思い出せません。読み返しても、ああそうだったという感じでは思い出せません。

この「盗まれたカラヴァッジョ」もそういう映画です。映画のラスト、小手先でごまかされてしまったような、なんともすっきりしない後味の悪い映画です。

映画が二重構造になっており、ラストに、それまで2時間にわたって語ってきたことは実は映画でしたと明かされます。ラストひとつ前のシーンがぐーんと引かれるとスクリーンになり、カメラが客席を捉えるとそれまで映画の主人公だった男女とその男女に似たふたりがその映画を見ているというシーンになり終わります。

ただ、この「似たふたり」というのは見間違いかもしれません。確か、その「似たふたり」が客席を振り返ると(多分)その二役のふたりが同じく映画を見ており、「似たふたり」のうちの女が男にあなたのほうがいい男ねと言っていたような、いないような、とにかくよくわかりませんのでとても気持ち悪いです(笑)。

オチはそういうことなんですが、それ以前の本編もかなりわかりにくいです。

基本は、映画プロデューサーの秘書であるヴァレリアと脚本家アレッサンドロのふたりを軸に進む「キリスト降誕」盗難事件を題材にした映画制作の話なんですが、後半になって、マフィアがその絵画を時の政権に売りつけようとし、政界とマフィアの癒着のような話が絡んできます。さらにややっこしいことに、ヴァレリアの母親がその政権の文部大臣(だったかな?)の裏のスピーチライター(みたいなこと)をやっているのです。

ヴァレリアは映画プロデューサーの秘書であり、脚本家アレッサンドロのゴーストライターでもある。ある時、ラックと名乗る謎の男から、今も未解決の〈カラヴァッジョの名画「キリスト降誕」盗難事件〉はマフィアの仕業だとのシナリオを書くことを提案される。アレッサンドロが提出したシナリオは傑作だと絶賛され、映画化が決定する。

しかし、アレッサンドロは、マフィアに誘拐され昏睡状態となってしまう。

映画制作は頓挫しそうになるが、ヴァレリアは、“ミスター X”の名前でアレッサンドロのアドレスからシナリオを送り続ける。それを妨害しようとするマフィアはあらゆる手を使って“ミスターX”が誰かを突き止めようとする。

やがてヴァレリアは、ラックがシナリオだけでなく、現実でも「キリスト降誕」盗難事件を解決しようとしていることに気づく。果たしてラックの正体は? 50年の時を経て、世界は再び名画を見ることができるのか──?(公式サイト) 

公式サイトにはこうありますが、謎が徐々に明かされていくとかを期待しないほうがいいかもしれません(笑)。むしろ楽しむとするなら、ラテン的(個人の意見です)人間関係の機知を楽しむべき映画かと思います。

たとえば、アレッサンドロはかなりの能天気さで、女性に対してもヴァレリアだけではなく、女性とみればすぐに口説こうとするイタリア人気質(個人の意見です)の人物です。かなり早い段階でマフィアに拉致され暴行の末昏睡状態に陥ってしまいますが、ラスト近くには昏睡状態から目覚めるも、昏睡状態を装ったままヴァレリアに愛を告白して(いたような気がする)いました。

ヴァレリアは、“ミスター X”が誰かを調べに来たマフィア絡みの男性に対して、突如「女」を武器にする行為に出るという、おそらくこれはイタリアでは大受けじゃないかと思いますが、そんな感じで進むのです。

こんなことを書いていても意味がないですね(笑)。

とにかく、映画はとらえどころなく進み、上に書いたように、これは映画でしたと終わってしまいます。個人の意見ですが、この映画はイタリア人的ラテン気質がないと楽しめない映画ではないかと思います。

で、カラヴァッジョの「キリスト降誕」の謎は明かされたかといいますと、結局のところ、現在でもマフィアが奪ったのではないかと噂されているそのままを映画にしただけということでした。

見終えて思うことは、これは映画ではなく舞台劇でやるべきシナリオじゃないでしょうか。ロベルト・アンドー監督のキャリアを見てみますと舞台劇やオペラをたくさん手がけているようですので、そうした志向がそもそものシナリオに現れているのではないかと思います。

そうそう、映画の中の映画を撮る監督役としてイエジー・スコリモフスキ監督が出ていました。何となく風格があるのに素人くさいなあと思いながら見ていたのですが、スコリモフスキ監督の顔を知りませんでしたのでわかりませんでした。

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