サウジアラビアでは映画館の設置が法律で禁じられているらしい。と聞いて、びっくり! ドバイでは映画祭も開かれていますから、イスラム圏全般ということはないでしょうし、イランはある意味映画大国ですし、それにしても、サウジアラビアでは全く映画は見られないのでしょうか、あるいは闇の映画館があったりするのでしょうか? そういえば、「111人の少女」というイラン映画では、酒場の奥で男たちがアバターを見ているシーンがありましたが、あれはきっと闇の上映会だったんでしょうね。
じゃ、このサウジアラビア映画はどこ向けに撮ったのだろうと思っていましたら、ハイファ・アル=マンスール監督のインタビューがあり、「サウジでは公の場では上映されませんが、文化センターで限定公開されました。DVDになってから見るのを待っている方もたくさんいます」とのことでした。それに、ヴェネチアやロッテルダムで賞を取っているようですし、アカデミー賞のサウジアラビア代表にも選出されているようですので、海外向けということでもあるのでしょう。
とてもシンプルで爽やかで気持ちいい映画でした。
そうした気持ちにさせられるのは、主人公の少女ワジダ(ワアド・ムハンマド)の様々な行為が、決して反抗的なものとして描かれていないからだと思います。幼なじみの男の子と自転車競争をしたくて、自ら買うために手製のミサンガを売って貯金をしたり、黒靴ではなくスニーカーを履いたりと、女性に多くの制限が課せられているサウジアラビアの社会では、大人たちが顔をしかめるそうした行為も、ワジダのごく自然な欲求や感覚としてシンプルに描かれています。
その点についても、上のインタビューに、「ワジダは生きることへのエネルギーに満ちたハッピーな女の子。賢く抜け道を見つけて、やりたいことに向かっていく子です」と語っています。
ワジダのお母さんとお父さんの関係やお母さんが働きに出る時の運転手の話など、イスラムの家族関係や日常生活の一端を知ることもでき、とても面白かったです。
いい映画でした。