それから

といっても大したネタはないけれど、ほんと、これはラディカル・ホン・サンスだ。

ホン・サンス監督らしい映画だとは思いますが、さすがにこれはやり過ぎではないかという(笑)、そんな感じでした。言い方を変えれば、ラディカル・ホン・サンス映画といったところでしょうか。

ホン・サンス監督の映画は、もう十数年前になりますが「女は男の未来だ」を見たのが最初で、かなり新鮮な印象を受けた記憶があります。 

その後、「ハハハ」「よく知りもしないくせに」「3人のアンヌ」「自由が丘で」と見ていますが、あらためて、ウィキペディアを見てみましたら、他にもたくさん撮っており、かなり多作の監督ですね。

監督:ホン・サンス

公式サイト

誤解されるかもしれませんが、この映画の基本的なネタはワイドショーネタです。ただ、それもホン・サンス監督の一つの手でしょうから批判というわけではありません。 

ある男(クォン・ヘヒョ)がいます。男は自分の会社の社員チャンスク(キム・セビョク)と不倫関係にあったのですが、ひと月くらい前に、おそらく女性から去ったのでしょう、別れています。社員ひとりの会社ですので、新たにアルム(キム・ミニ)を雇います。

その日です。朝、妻から、不倫しているのではないかと問い詰められます。男はしらばっくれて出勤します。

会社にはアルムがいます。男は出かけています。妻が、男がチャンスクに書いた愛のメッセージを見つけ問い詰めようとやってきます。当然、妻はアルムをそうだと勘違いし殴りつけます。

男が戻り、誤解だと説得し、そのメッセージの相手チャンスクはもう辞めていて会ってもいないと白状します。妻は半信半疑で帰っていきます。

アルムは辞めたいと言いますが、男は続けるように説得し、アルムは受け入れます。

チャンスクが会社にやってきて、男にやり直したいと言い、もう一度一緒に働きたいと言います。男は受け入れ、アルムに辞めてほしいと言います。アルムは怒って辞めます。

そして、いつかはわからない後日、アルムが男の会社を訪れます。男はその後の顛末をアルムに語ります。

その後、家を出てチャンスクと一緒に暮らしていたが、ある時、妻が子どもを連れてやってきた、その子どもを見て、自分はこれからこの子どものために生きるのだとチャンスクと別れた、そう語ります。また、チャンスクの家がふた部屋しかなく狭かったとも付け加えます。

という話です。

書いてみましたら結構長くなりましたが、この話を、ほぼすべてのシーン、一対一のダイアログで描きます。男と妻、男とアルム、男とチャンスク、その会話を定型の横からのツーショット、時に顔にズームアップもありますが、それぞれのシーン、ワンカットで撮っています。

それはそれ、すごいことで、舞台劇みたいなもので、俳優はすべての台詞を入れなくてはいけませんので、映画俳優としては大変なプレッシャーでしょう。

という映画です。

タイトルの「それから」は、夏目漱石の「それから」からとっており、ラストシーンで、男がアルムにこの本をあげると手渡すのが「それから」です。ほとんど関連性はありません。

ホン・サンス監督の映画は、だいたい男がしょうもない奴で、その上、本人はそのことに全く気づかないということが多く、この映画もそうですね。

食べながら話すシーン、やたらタバコを吸う、そういうシーンも多いです。

ただ、もう少し遊びが多いのもホン・サンス監督だと思いますが、 ほんと、この映画は、その意味ではラディカルですね。

ということで、リアル・ワイドショーネタでもそうですが、こうした人間の日々のあれやこれやから、ある種人間の本質的なところを読み取ったりもできるのでしょうが、ただ、それをしたところでどうなるものでもありませんし…と、思うしかない映画でした。

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3人のアンヌ(字幕版)

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