EO イーオー

イエジー・スコリモフスキ監督いきあたりばったり

イエジー・スコリモフスキ監督、現在84歳です。前作の「イレブン・ミニッツ」が2015年ですので、7年ぶりです。昨年2022年のカンヌ国際映画祭のコンペティションに出品され審査員賞と作曲賞を受賞しています。

EO イーオー / 監督:イエジー・スコリモフスキ

EO どこへ行く

イエジー・スコリモフスキ監督がロベール・ブレッソン監督の「バルタザールどこへ行く」にインスピレーションを得て撮ったという映画です。同じくロバをめぐる話で、あまり集中力を持って見られる映画ではありません。気をそらしますとどうでもよくなってしまうかも知れません。

EO はサーカスのロバです。冒頭、赤い閃光の中で始まります。具体的にはどんなパフォーマンスかはよくわかりませんが、カサンドラ(サンドラ・ジマルスカ)が EO にささやきかけますと、横たわっていた EO が勢いよく立ち上がります。観客の大きな拍手です。

後日、団員が荷車を EO に引かせようとして動かない EO を鞭で打っています。カサンドラが駆けつけ怒りをぶつけますが団員は構わず EO に荷車を引かせていきます。何を捨てにいったのかわかりませんが、スクラップ置き場で何かを捨てていました。

帰ってきますと、動物愛護団体がサーカスの曲芸は動物への虐待だとプラカードをもちシュプレヒコールを上げています。サーカスは解散となり、EO を含め動物たちが連れて行かれます。輸送中、EO は草原を気持ちよく走っていく馬の集団を見ます。

もうこのあたりから編集が散漫になり、何をやっているのかよくわからないシーンが多くなります。画もEOの見た目ということでもなく、そのカットごとで視点がバラバラです。

その街では動物の虐待が禁止される法律ができ、それとともに大きな厩舎をつくり、動物たちをそこで飼育(というわけでもなさそう…)するということで、EOは人参をいっぱいぶら下げていました。

というのも間違っているかも知れません。結局そこではEOは以前と同じように荷馬車に繋がれてこき使われていました。どういうことだったんでしょう?

その後の記憶をたどってトントントンと書きますと、その厩舎の白馬が暴れたすきにEOは逃げ出します。ここのつながりもわかりませんが、農場(といっても地面はドロドロの穴ボコだらけでした…)へ行き、その夜カサンドラが会いに来ます。でも酔っ払っていましたし、そのまま去っていきましたので気まぐれでしょう。EOはカサンドラを追っかけていったんでしょうか、森に入り、街に行き、店先の水槽を見、サッカー場へ行き、これもよくわかりませんが、EOがどちらかの味方をするような動きをしたらしく、勝ったチームに勝利の女神だ(そんなことは言っていないけど…)と連れて行かれます。

その後、勝ったチームの祝勝会に相手チームが殴り込みをかけ、EOも暴行されて病院行きになります。回復後、屠殺場行き(多分…)のトラックに載せられ、そのトラックの運ちゃんが殺され、警察が取り調べている間に、若い男に一緒に来るかと言われて連れて行かれます。

男は母親(違うかも…)を前にして礼拝をしています。神父ってことなんでしょうか。母親に電話があり、逃げ出した(多分その男…)だの、お金がどうのこうのとか、そして、私はフランスへ帰る、この家は処分した、でもあなたの取り分はない、なんて言っていました。この母親はイザベル・ユペールさんでした。何でもやってくれる俳優さんですからね。

EOは逃げ出し(そこを去り…)草原に出て、放牧されている馬たちに紛れ込みます。馬たちは柵に沿って追い立てられ建物の中に入っていきます。EOも馬たちに続いて追い立てられていきます。

ドン! というような音がして暗転になって終わります。屠殺場ということでしょう。

スコリモフスキ監督 どこへ行く

どこへ行くって言っても、もう84歳ですからやりたいこともやり尽くしているのでしょう。

イエジー・スコリモフスキ監督は、1960年代から70年代にかけて三大映画祭でいろんな賞をとっている監督で、1985年以降は2008年の「アンナと過ごした4 日間」まで映画を撮っていません。もともと自分の映画に出演している方でもあり、1985年以降は俳優としていろんな映画に出演されています。

全盛期(かどうかはわからない…)の映画を見ていませんのでどういう傾向の映画を撮る監督はわかりませんが、「アンアと過ごした4日間」以降の「エッセンシャル・キリング」や「イレブン・ミニッツ」を見ますと、結構遊んでいる映画だと思います。

ですのでこの「EO」にしても、映画の流れからいけば不自然であっても面白い画が撮れたと思えばそれでいいという判断じゃないかと思います。冒頭のサーカスシーンなんて赤の閃光でもたせていますが、サーカスの曲芸としては意味不明ですし、夜の街のシーンも美しいのですがそこがどこであるかななんて関係ないのでしょう。ダムの放水シーンもオー!とはなりますがそれだけですし、その後の逆回しもよくわかりません。面白いと思ったのでしょう。それにドローンを頻繁に使っていました。

ロベール・ブレッソン監督の「バルタザールどこへ行く」にインスピレーションを得たということですが、コンセプトが似過ぎていて新鮮味がありません。バルタザールの方は人間の悪行もそれなりに描かれていましたが、このEOはたしかに悪いやつはいますがそれほどでもなく、全体としてEOがどうしたいのか見えてきません。自由を求めているのか、カサンドラに会いたいのか、結局、流れに身を任せていたらサラミにされてしまったということにしか見えません。

ああ、それを描いているのかも知れません。

巨匠の映画に無茶苦茶書いてしまいました。ごめんなさい。