吉高由里子さんに感動する…
2年前に NHK BS で放映されたドラマの劇場版だそうです。時代もの(大正時代ですが…)のテレビドラマはきれい過ぎて現実感がありませんのでどうしようかと思ったのですが、伊藤野枝の話ですので見ておくべきか…という映画です。
吉高由里子さんに感動する…
映画はともかく、吉高由里子さんがよかったです。
やはり、人が全身全霊(と見える演技…)で人間の尊厳について訴えようとする姿には感動します。
これまでの吉高由里子さんには、あまりはっきりした印象がなく、「横道世之介」とか「検察側の罪人」に出ていたと言われれば、ああと思い出した程度ですが、この映画で記憶に残ると思います。
映画は、伊藤野枝15、6歳くらいから憲兵隊によって虐殺される28歳までの10年くらいが描かれています。そもそもが伝記映画ですし、10年という短い半生の割にはとにかくエピソードの多い人物ですのでそれらを並べていくだけでも2時間は潰れてしまいます。
それこそウィキペディアでも読んでいるようなものですし、それによく知られた生涯(多分…)ですので、以下、ストーリー的なことは何も書いていません。
というよりも、映画について書くことはあまりないということで(ゴメン…)、吉高さんが女性の尊厳や自由について声を振り絞って主張している姿に感動できれば、そこに意味がある映画かと思います。
声質が少し鼻にかかったような感じなんですね。それがうまく役にはまっていたんでしょう。
現代ドラマのよう…
このレビューの最初にテレビドラマはきれいすぎると書きましたが、本当にその通りで、皆人物がきれい、言い方を変えればかっこよすぎるとも言えますが、生活感がまるでありません。
その意味では、現代ドラマのような映画とも言えます。特にジェンダー観は現代のもので、伊藤野枝が大杉栄の女性観にダメ出しするところなどはまさに現代のジェンダー意識です。
それに、あまり人間のきたないところやドロドロした人間関係に迫りますと引かれそうということなんでしょう。日陰茶屋事件も事件そのものはすっ飛ばしていました。映画では伊藤野枝を退席させていましたが、たしか伊藤野枝もその場にいたんじゃないかと思います(未確認…)。
大杉栄との生活もあんな優雅なものじゃなかったと思います。伊藤野枝21歳から亡くなる28歳までの7年間一緒に暮らして5人の子どもを産んでいるんですからね。7年間で5人ですよ。その間にかなりのものを執筆していますし、社会活動もやっています。
この間の伊藤野枝を突っ込んで描かないと本当の伊藤野枝は見えてこないと思います。
でもまあ、それでいいのかもしれません。よく知られた生涯とは書きましたが、きっと、今では伊藤野枝や大杉栄のことを知っている人もそれほど多くはないでしょう。この映画で伊藤野枝や大杉栄がより多くの人に知られればそれはそれでいいことだと思います。