そんなには褒めないよ。映画評

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マチネの終わりに

(ネタバレ)平成のすれ違いメロドラマは非日常に飛び立たず

2019/11/01

究極の「平成のすれ違いメロドラマ」見てきました。

原作を読んでいますので、もっと気恥ずかしく感じるかと思いましたが、以外にもあっさりしており、「福山さん、この台詞だけはやめて…」と思っていたシーンもなんとかクリアし(笑)、逆に、オイオイ普通すぎるだろみたいに茶々入れたくなるくらいでした。

マチネの終わりに

マチネの終わりに / 監督:西谷弘

ストーリーはほぼ原作通りです。詳しいストーリーは原作の読後感にありますのでよろしければどうぞ。

映画としては無難にまとまりすぎていて、どちらかといいますとテレビドラマ的です。本来むちゃくちゃ非日常的な物語なのに、蒔野聡史(福山雅治)も小峰洋子(石田ゆり子)も隣のお兄さん(おじさん?)やお姉さん(おばさん?)にしか見えません。

おそらくそれはストーリーを追いすぎているからでしょう。

世界的な天才ギタリストと、クロアチア人映画監督の娘で、今はフランスの通信社のイラク特派員というふたりの恋愛ですよ、それも数年間すれ違いを繰り返し、最後にやっと結ばれるという、どう考えても気恥ずかしくって、それが映像化されれば覆った指の間から覗き見るのがやっとのような物語なんですから、もうちょっと映画的な冒険をしてほしいですね。

この物語を映画にするのなら、見ていて、この世のものとは思えないくらい徹底的に気恥ずかしくなるようなものにするか、あるいは、聡史と洋子の個的なシーンを軸に据えて、その周りで起きる出来事をすべて後景に押しやってしまい、すべてをまるで幻のようにしてしまうか、どちらかかなあと妄想していたのですが、結局、この映画は非日常ドラマを極めて日常的な次元に引き下ろしてしまっています。

聡史が演奏するシーンには、福山雅治さんがコンサートで演奏し歌う以上の、緊張感も、陶酔感も、そして絶望感も感じられません。

洋子が、テロ現場でどんなに叫び悶絶しても、そこからは火薬の匂いも、血の匂いもしてきません。

そうした非日常世界があればこそのすれ違いメロドラマなのに、ふたりが福山雅治さんと石田ゆり子さんにしか見えない、俳優たちの日常ドラマでは映画にする意味はありません。原作を読み妄想する世界に勝てない映画では映画化の意味がありません。

文字媒体(文化)と映像媒体(文化)の違いをどう捉えるかという問題なのかもしれません。

文字媒体、たとえば小説を読むということは、それを何万人、何十万人が読むことになるとしても、結局のところ読み手にしてみれば、それぞれの個的作業ですので、どんなに自分の中でイメージを広げようと自由な世界です。

一方、その文字媒体を映像化する作業は、その小説から広がる無限のイメージのその無限さを見せることであり、その小説を飛び出してまったく異なった世界を見せてもいいわけです。というよりも、そうしてこそ初めて映画化の意味があるはずです。

ちょっと話を広げすぎました。

要は、これなら映画化しなくても本を読めばいいんじゃないのということにつきます。

ただ、テレビドラマと考えれば、とても見やすいですし、家族で見ても、カップルで見ても、ひとりで見ても、その後気持ちよく眠りにつくことができます。

ただひとつ、ラブシーンが美しくありません。

マチネの終わりに (文春文庫)

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