最後まで行く

え?!どこまで行くの?

特に見たいと思える映画もなく、迷いに迷ってポチッとしてしまった映画(笑)。

なぜ迷ったかと言いますと、藤井道人監督の映画は「新聞記者」、DVDで「光と血」、そして「ヤクザと家族 The Family」と見てきていますが、この監督には人間の内面を描くことは無理だなと見きったからです(ペコリ)。ですので、見ておいてなんですがこの映画もいいことは書けません。

最後まで行く / 監督:藤井道人

コメディなの?

物語豊富なのでごちゃごちゃしていますが、結局、工藤(岡田准一)と矢崎(綾野剛)の闘いが終わることなく「最後まで行く」ということのようです。あの超大金も元の鞘に収まったようですので…、ん? ヤクザの手に渡っちゃうのかな? と、よくわかりませんが、そうしたあれこれが放って置かれて、二人が橋の上で車をぶつけ合って終わっていました。どちらかが急ブレーキをかけて相手が海へ突っ込むのかなと思いましたが、それはなかったです(笑)。

ですので、やっぱり二人で最後まで行くんでしょう。どこへ?

私が言うまでもなく韓国映画「끝까지 간다」のリメイクです。オリジナルの英題は「A Hard Day」で、ハングルをGoogle翻訳にかけますと「最後まで行く」と出ます。オリジナルの邦題も「最後まで行く」です。

冒頭のシーン、工藤を演じている岡田准一さんの演技がコメディです。でも笑えません。とにかくそのままのコメディ風オーバーアクションで最後まで突っ走ります。

岡田准一さんは昔風の渋い演技の似合う俳優さんとの印象があり、それなりにたくさん見ているような気がしていましたが、「永遠の0」と「来る」しか見ていないようです。何からそんな印象をもったのかわかりませんが、コメディは無理ですね。え? コメディのつもりはない? じゃあ、演技が嘘っぽいというだけじゃないですか。

片や、矢崎を演じているのは日陰の男の印象が強い綾野剛さん、この映画ではエリート官僚かつ暴力男に変身しています。が、しきれていません。それに、これは監督の責任ですが、キャラがダサいです。

二人とも、そろそろイメージチェンジ(私の印象からだけかも…)の頃合いかという映画だったのでしょうか、その中途半端さは止む得ないのかも知れません。

ところで、冒頭のカットに雨の中の車を外から捉えた画がありましたが、車停まっていますね。スタジオですね。スピード感が全くありません。ああいう画で満足できることが映画を薄っぺらくしている原因でしょう。

内幕ものなの?

元ネタがあるわけですから仕方ないことかも知れませんが、警察の裏金つくり? マネーロンダリング? プロットが陳腐です。

それにマネーロンダリングの方はよくわからなかったのですが、政治家が宗教法人にお布施としてお金を出し、その宗教法人が政治家に献金するってこと? それじゃあんな大金は無理ですし、ロンダリングにならなくてお金の流れが見え見えですよね。政治家が裏金を裏金として宗教法人に渡して献金してもらう? それ、見え見えの犯罪です。いまどきそんな大金を寄付したら一発で疑われます。檀家から100万ずつ寄付させるとか、それだってバレますよ(笑)。

なにか方法があるのかも知れませんが、ちゃんとシナリオで整理されています?

ヤクザの描き方もいつの時代? って感じです。それに言っちゃなんですが、柄本明さん、もういいです(ごめんなさい…)。

犯罪ものなの?

某県警では本部長と矢崎(綾野剛)が政治家の手先となって裏金を資金洗浄する役目をになっています。その大金は某お寺のお堂のような金庫(よくわからない…)に保管されており、その金庫を開けるには IDカード(テラカ?)と矢崎の指紋認証が必要です。

ある時、矢崎の手先となって働いていた男が矢崎の結婚式のイベントの手形作りから矢崎の指紋を盗み、指紋認証を自分の指紋に変えてしまい逃げます。

この映画、基本は犯罪ものですが、こうした手口に一切触れずにすっ飛ばしています。そもそもあんな手形で認証をクリアできる指紋はとれないと思いますし、その手形をどうやって手に入れたのか、そして、その認証変更をPCでやっていましたが、どのサイトにどうやってログインしたのか(矢崎の指紋認証でログインかもね…)、使いっぱしりがなぜそんなことを知っていたのか、そうした細部を一切描きません。

それでは犯罪ものにはなりません。

とにかく、それに気づいた矢崎は手下の男を追い、逃げた男は工藤の運転する車に轢かれて死にます。もちろん矢崎はその一部始終を見ています。

映画はここから始まります。そして中ごろになり、実はこういうことでしたと、この項で書いたその前段に戻るという構成です。

誘拐もの?

工藤(岡田准一)は危篤の母親のもとに駆けつけようと雨の中車を飛ばしています。頻繁に電話が入ります。ひとつは妻(広末涼子)が母親の病状を知らせてくるもの、妻は工藤に三行半(古い…)をつきつけています。何も語られませんが、工藤がいい加減だからでしょう。

もうひとつの電話の主は上司からのもので、工藤たちは組織ぐるみでヤクザ(柄本明)から賄賂を受け取り裏金づくりをしており、それがバレて県警本部からの査察が入ることになり、その監察官が矢崎です。ただ、この件は本筋には絡んできませんし、どうでもいい話(映画の中でです…)です。あんな警察官たちのコント芝居(ペコペコすり寄る演技のこと…)のようなものどうでもいいです。

で、工藤は轢き殺した男をトランクに詰め込み、病院に駆けつけ、その後葬儀へと進むなかで母親の棺の中に男を入れて焼却してしまおうとします。そしてなんだかんだがあり、その男が矢崎の探している男であり、その指紋がないと金庫が開かないことがわかります。

母親の葬儀の日、一部始終を知っている矢崎は工藤の娘(4、5歳…)を人質にとり、工藤に轢き殺した男の死体をもってこいと脅します。

映画はこの後、一旦前段に戻り、工藤がボコボコにされつながりで(笑、省略しています…)ここからパート3になります。

ところで、工藤の娘が誘拐されたことに関して母親である妻(広末涼子)のシーンが適当ですね。時間の経過がはっきりしませんが、とっくに娘がいないことに気づいているはずです。それにそもそもあんな怪しい矢崎に子どもをも預けるはずがありません。仮に怪しくなくても初対面の男には預けません。

藤井道人監督の映画の女性や子どもはどれもおまけ程度の扱いしかされません。藤井道人監督のジェンダー意識の現れでしょう。

それはそれとして山田真歩さんが矢崎の妻として出ていました。出番も少なく、見せ場もないですのでその実力が発揮できずもやもやして終わっているんじゃないでしょうか。

結局、何もの?

工藤は母親の棺から男の死体を引き出し、IDカードを手に入れ、男の人差し指を切断し、その死体を持って娘を誘拐した矢崎に相対します。ただ、その死体には爆弾を仕掛けています。

取引の緊迫感を見せつつ(ほとんど緊迫しない…)死体を渡し、娘を取り戻します。矢崎は車を走らせます。そして、爆発します。

工藤は娘を妻に渡し、IDカードと男の指を持ってお寺に行きます。金庫は何の問題もなく簡単に開きます。そこには超大金がつまれています。

あれ、いくらあるのでしょう。アナログ!

そこに不死身(大笑)の矢崎がやってきます。工藤と矢崎の死闘です。あれこれあり、工藤がバックドロップで矢崎を仕留めます。

そして、翌日、工藤はどこへ向かっているのか海に掛かった長い橋の上で妻に電話をし、もう一度やり直せないかと言います。妻はまんざらでもないようです。

オイ、オイ。元ネタにあるのかも知れませんが、藤井道人監督はこういう価値観の人なんでしょう。

で、やはり不死身(超大笑)の矢崎が車で追っかけてきます。二人で車をぶつけ合いながら仲良く「最後まで行」きます。

藤井道人監督

なんだか書いていて藤井道人監督に恨みでもあるのかというような内容です。不思議です。

多分これですね。

言葉としては自分は新聞をとったことがないと言っているだけなんですが、この人、新聞を読んだことないですね。今や新聞もネットに押されていますので、そういうこともありかなとは思いますが、問題は文字情報にどれだけ接しているかということですし、それに、「政治を勉強したことないし」と言っていますが、政治は勉強するしないの問題ではなく、興味を持って注視しているかということです。まったく政治に興味がないと言っているわけですので、そんな人が作っている映画にはやはり興味は持てません。

ということです。それにもしてもこんな無茶苦茶書いていいのでしょうか(ペコリ)。