面白いです。全編パソコンの画面で物語が進む謎解きミステリー。
面白いです!
スクリーンに映し出されるのは、全編下の画像のようなパソコンの画面だけです。それで映画になるのかと思ってしまいますが、なるんですね、最後まで飽きません。
この映画の面白さは、作り手、そのほとんどはアニーシュ・チャガンティ監督の力だと思いますが、その緻密な構成力につきます。
これまでにも Facebook など SNS を効果的に使った映画はありましたし、この映画で使われているそれらひとつひとつの利用の仕方はさほど目新しいものではないでしょう。でも、全編パソコンの画面で映画を作ろうとは誰も考えなかったでしょうし、それにここまで完璧に構成できる人もそうはいないでしょう。
ストーリー自体は、行方不明になった娘を父親が必死で探すという、特別どうこうということもないミステリーものですので、一般的なつくりの映画であれば、逆にここまで面白くなかったかも知れません。見ているうちに、パソコン上の画面で構成されていることなどまったく気にならなくなり、実写もの、というのも変ですが、よく出来たミステリー映画のようにどんどん引き込まれていきます。
普通、こうしたストーリーを映画にしようとすれば、警察も出さなくてはいけないでしょう、仮に娘がどこかでトラブルに巻き込まれているとすればその場所の画もいるでしょう、さらに娘が殺されているとすれば犯人も出さなくちゃいけないでしょう。さて、パソコンの画面だけでどうやって映画にするんでしょう?
Facebook、Instagram、Tumblr、Youtube、Twitter、Messenger、skype、ネット中継などなど、聞いたことのないアプリも出てきましたので、あるいは創作のものもあるかもしれませんが、それらを駆使して見事に謎解きミステリー映画に作り上げています。
デビッド(ジョン・チョウ)は、高校生(大学生?)の娘マゴット(ミシェル・ラー)と二人暮らしです。妻は亡くなっており、愛し合っていた家族なのでしょう。パソコンの中の懐かしい映像から始まります。まだWindowsXP です。マゴットの成長記のようにたくさんの写真や動画が保存されています。生前の妻も登場します。二人が料理をしているところ、マゴットがピアノを弾いているところ、幸せな家族写真や動画ばかりです。
これは、デビッドが見ているということなのか、ある種の説明的な画なのかよくわかりませんでしたが、おー、WinXPだ! と一瞬感動もし(まだ2台時々使っています…(笑))、とにかくかなり速いテンポでウィンドウが変わっていきますので、しばらくは置いていかれないようにと集中力を要するかも知れません。
その後もいろいろな SNS が次から次へと出てきますので、たとえば Facebook はどんなことができるのかくらいは知っていないと置いてきぼりを食うかもしれません。まあ、そんな人がこの映画を見ようとするとは思えませんが…。
で、映画がどのように作られていくかと言いますと、次々にウィンドウが開かれたり閉じられたりしていくわけで、skype なのか Messenger なのか、デビッドとマゴットの通話、デビッドと弟ピーター(かな?)との通話、そしてマゴットの失踪事件の担当捜査官ヴィックとの通話がビデオ通話アプリの映像として次から次へと映し出されます。
マゴットが今日は友達と徹夜で勉強するからと話しています。心配しながらも娘を信じているのでしょう、わかったとデビッドは通話を切ります。スクリーンセーバーの画像、これはちょっと笑ってしまいました。深夜(早朝?)、マゴットから何度が着信(画面に出ます)がありますが、デビッドは眠っています。それ以後、マゴットとは連絡が取れなくなります。
デビッドは、弟に電話したり、保存されたファイルを開いてマゴットの友人関係を探ったりします。妻が親しかった家族やマゴットがピアノのレッスンに通っていた教室を探し出し電話をします。
手がかりは何もつかめません。むしろ、良くないこと、毎月マゴットにレッスン料を渡しているにもかかわらず、すでに半年前にピアノ教室をやめていることを知ることになります。このお金の件も事件を複雑化されるために使われていますが省略です。
警察に捜索願を出します。警察の動きは素早く、ヴィック捜査官が担当につきます。
この警察の動き、たかが(というのもなんですが)ひとりの女性が、1、2日連絡が取れなくなったからといって、ましてやアメリカ(ペコリ)、あんな機敏に、それも大掛かりに動くわけはないよなあと、実はちょっとだけ違和感を持って見ていました。案の定、これがオチでした。
デビッドはマゴットの MacBook を立ち上げて友達を探そうとします。たとえ父親とはいえ、いやいや、むしろ父親ゆえにパスワードなどわかるはずもありませんので、それを探っていくところは、正直、そんなに簡単には無理だろうとは思いましたが、それでも、手際よく、画面上でとんとんとんと進めていきますのでさほど違和感はありません。
といった感じで、その後のヴィック捜査官とのやり取りやデビッドがマゴットの交友関係を SNS の中から探し出していく様子が、実にテンポ良く、くどいようですがパソコン上だけで繰り広げられていきます。
とにかく、その構成力はすごいです。うまいです。
マゴットはどうしたんだろう? といった、普通こうした映画に抱く興味よりも、むしろ構成上の手際良さの方に惹きつけられます。
捜査の進展状況が時にネット中継されたりします。SNS では、同情の書き込みや誹謗中傷の書き込みが上がり始めます。中には動画を Youtube に投稿するものまで現れます。
ヴィック捜査官から、マゴットの車の目撃情報として防犯カメラ映像が送られていきます。 google のストリートビューで場所を確かめます。
デビッドは、マゴットの残した写真や書き込みを探り続けるうちに、マゴットは車である湖に行ったのではないかと考え捜索を依頼します。湖から車が引き上げられますが、マゴットは見つかりません。それらがネット中継されます。
あれ? 違ったかな? 車はここじゃなかったかな? もしこのあたりで車が見つかったのなら、当然湖の中を捜索しますからね。車が見つかったのは、もっと後の犯人の自白から湖を捜索したのかも知れません。とにかく、ツッコミを避けるためか(笑)パソコンの上は結構忙しく動き回ってごちゃごちゃしているんですよ(笑)。
さらに新たな事実が発覚します。マゴットが弟ピーターと頻繁にチャットしており、失踪する直前にも、「お父さんに怒られる」「兄貴に知られたら殺される」などといったやり取りを残しているのです。
デビッドがピーターの住まいに問い質しに行くのですが、ここもうまくつくられており、と言いますか、もうこのあたりまできますとちょっとした違和感など気にならなくなるということもあるのですが、ピーターが怪しいと思い始めたデビッドは、証拠の映像を残すということでピーターの家の中に2、3台のパソコン(スマホ?)を仕込み録画します。スクリーンにはその映像が映し出され、まあ監視カメラでのぞいているような感じですね。
デビッドの意識としては、何も語りはしませんが、弟がマゴットと性的関係を持っていてその縺れから、あるいは殺したということまで考えたのではないかと思います。でも、結局大麻でした。時々二人で吸っていたということです。
ヴィック捜査官から、マゴットを殺したとメモを残して自殺した男がいるとの連絡が入ります。男は動画を残していたのです。車の捜索はここだったかも知れません。
ちょっと不可解とは思いますが、結局、マゴットの死亡が「認定」されたと発表があり、え!? 死体が見つかっていないのに? などというツッコミ無用状態で話は突っ走り、マゴットの告別式の中継まで進みます。
まあ当然、どんでん返しのオチは何だろう? ということになるのですが、ヴィック捜査官でした。伏線も張られていましたし、そもそも、犯人が誰かということがこの映画の面白さではありませんので、まあ納得というところでしょう(笑)。
アニーシュ・チャガンティ監督、公式サイトによれば、現在27歳のインド系アメリカ人で、23歳の時に Google Glass だけで撮影した2分半の「Seeds」という短編を発表しており、YouTube で24時間の間に100万回以上再生されたらしく、その後、グーグル・クリエイティブ・ラボに招かれて2年間グーグルのCM制作などに携わっていたということです。
「Seeds」って、これのことですかね?
‘Seeds’ – a short film via Google Glass by Ginger Times
監督の実話でしょうか、子どもが出来て、妻から預かったエコー写真をインドの母親に届けるというストーリーですね。
Vimeo の方がきれいです。
とにかく、才能を感じる監督です。今後映画を作っていくのかどうかはわかりませんが、次回作があれば楽しみですね。