SISU/シス 不死身の男

不死身ではなく、死ぬことを拒否した…に大ウケ

フィンランドのアクション映画です。普段アクションものに興味を持つことは少ないのですが、フィンランド映画であることと、そしてもうひとつ、予告編のある台詞がツボにはまってしまったからです(笑)。

SISU/シス 不死身の男 / 監督:ヤルマリ・ヘランダー

死ぬことを拒否する…

その台詞は下の動画の38秒くらいのところです。

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男が「(あの男は)不死身なのか?」と尋ねますと、女が「ただ死なないだけ」と答えます。

なにー?! 死なないのかよー。

「he just refuses to die.」直訳しますと「彼はただ死ぬことを拒否しているだけだ」です。

まさしくその通りの映画でした。主人公のアアタミ・コルピ(ヨルマ・トンミラ)は、機関銃で撃たれても、地雷が爆発しても、ロープで首から吊り下げられても、長時間水中にとどまっても、もちろんどんなに殴られ痛めつけられても、そして、なんと!飛行機ともども地上に激突しても、死にません(笑)。

拒否すれば死さえも恐れを為す、それが「SISU」です。

日本で言えば「根性」でしょうか?

アンノウン・ソルジャー…

映画の背景は1944年、第二次世界大戦末期です。この戦争に対するフィンランドの立ち位置は結構ややこしく、私は「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」というフィンランドの戦争映画を見たときに知りました。

現在のフィンランドを含めこの地域はスウェーデンとロシア(ソ連邦…)という大国に挟まれていますので、スウェーデンの支配下になったりソ連邦に侵略されたりという状態にあり、第二次世界大戦では、当初はドイツやイタリアの枢軸国側についてソ連邦と戦っていたのですが、1944年にソ連邦と休戦してナチスドイツを追い出す戦略転換をしています。

映画の背景はこの時期にあたります。が、その背景に意味がある映画ではありません(笑)。

早い話、戦う相手はナチスドイツであろうが、ソ連邦であろうが変わりのない映画です。単にナチスドイツにしたほうが映画的であるということだと思います。

実際、ウィキペディアによれば、ヤルマリ・ヘランダー監督はソ連邦と戦った実在のフィンランド軍狙撃兵シモ・ヘイヘからインスピレーションを受けているとのことです。

なお、上に上げた「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」は第二次世界大戦勃発後、ソ連邦と戦った1941年から1944年の「継続戦争」を描いている映画です。4年前に見た映画ですが結構記憶に残っている映画です。

SISU は根性みたいなものか…

映画のつくりは、ハリウッド系アクションものとは異なり、各カットかなり粘ります。台詞もほとんどありません。物語もあってないようなものです。

アアタミ・コルピが荒野(ラップランド)で金探しをしています。1mほど掘ったところで数十個のナゲットを掘り当てます。

えー、そんなことあるの? と思いましたが、ググりますとラップランドのゴールドラッシュなんて記事もヒットします。それ以上は調べませんでしたがたしかにラップランドには金がある(あった?)ようです。

で、アアタミは町へ引き上げていくのですが、その途中で撤退するナチスドイツ軍の小隊と遭遇し、ナチスドイツ軍の隊長ブルーノ(アクセル・ヘニー)が金を欲しがって戦いになるという、ただそれだけの話です。戦争ではなく、金をめぐる戦いということです。ただ、これも金でなくても何でもいいと思います(笑)。

とにかく「死ぬことを拒否した」男を見せる映画です。よほどウケたようでこればかり書いています(笑)。

こうしたところからかなり異質なアクションものの印象です。スカッとした感覚は味わえないかも知れません。笑えそうなシーンも多いのですが、どこか間合いが笑わせてくれないという感じがします。アキ・カウリスマキ監督の間合いでアクションが繰り広げられるという感じと言えばいいのでしょうか(違うか…)。

ドイツ兵が、いわゆるナチスものらしくないのも特徴的です。一応親衛隊の設定のようですが、ほとんど与太者の雰囲気です。まあ戦争末期ともなれば規律なんてものはなくなってしまうものですからあんなものかも知れません。戦車もドイツのティガー(タイガー…)じゃないみたいです。それに親衛隊はあんな最前線には出ないんじゃないでしょうか(未確認…)。

また、こういう映画の常で女性たちは性奴隷的な存在として登場させられています。ただ、最後にはアアタミによって解放され、オーシャンズ風と言いますか、アマゾネス風と言いますか、横一列に小銃をもって歩いてくるシーンもあり、その後、トラックを横付けしてドイツ兵に向かって乱射し撃ち殺していました。

アアタミの素性は女性のひとりが説明してくれます。

アアタミはフィンランド軍の特殊部隊の一員だったのですが、ソ連邦に侵略されて戦った1939年の「冬戦争」で家族を殺されて復讐の鬼と化し、特殊部隊でもコントロールが効かなくなって放り出され(違ったかな…)、ひとりで何百人というソ連邦の兵士を殺害したという人物です。

映画の最後は、ブルーノが乗った飛行機につるはしを打ちつけて一緒に飛び上がり、さらにそのつるはしで機体の鉄板を打ち破って中には入り、ブルーノとの格闘技戦の末、ブルーノを爆弾と一緒に突き落としたものの、コントロールを失った飛行機とともに地上に激突します。

しかし「死ぬことを拒否した」アアタミは、なぜか泥の中から蘇り、町の銀行で金を高額紙幣に交換してもらうのです(出来ません…)。

ということで、おもしろいといえばおもしろいのですがスカッとはしません。フィンランドっぽいと言えばフィンランドっぽい映画です。