俳優の無駄遣い。新しい女性アクション映画を。
このところ日本映画を見ることが続いていますのでちょっと気分転換にということと、ジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ファン・ビンビン、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴという錚々たるメンバーということと、そして、さらに女性が主人公のスパイアクションものということで見に行ったのですが…
気分転換には軽やかさがいる
気分転換にはならなかったです(涙笑)。
理由は簡単です。スパイアクションものといいながら、この映画にあるのは銃撃シーンと格闘シーンと追跡シーンだけです。ハラハラもありませんし、ドキドキもありません。スタントや映像処理でつくられたアクションシーンを延々見せられても面白くはないですし、気分転換にはなりません。
結局、この映画がやっていることは、これまで男性が演じていたアクションものを女性がやっているだけです。せっかく女性の俳優を主人公にしたアクションものを志向しているのなら、もうちょっと軽やかな物語にできないんでしょうか。
#MeToo movement が意識されている?
ジェシカ・チャステインさん自身の制作会社「Freckle Films(フレクル・フィルムズ)」が企画から製作に関わっているようです。本人もプロデューサーに名前を連ねています。
これまで男性のものだったスパイアクションもの、あるいはドリームチームものの中心人物を女性にしているわけですから、おそらく #MeToo movement を意識した映画だと思います。
もしその意識があるとしたら、こんな使い古されたプロットの物語ではなく、もっと新鮮な発想で企画をスタートさせるべきです。隠れた才能など、アメリカならいくらでもいそうな気がします。いや、アメリカにこだわる必要もないでしょう。
ネタバレあらすじ
率直なところあらすじなど意味がありません。ただ、後々思い返すことがあるかもしれませんので(ない)できるだけ記憶を掘り起こして書いてみます。
CIA(アメリカ)、BND(ドイツ)、MI6(イギリス)、DNI(コロンビア)、CHN(中国)の5人のエージェントが、世界を掌握できるというデジタルデバイスを激しい銃撃戦や格闘、そして追跡(まさしく走る)を経て悪党の手から守るという話です。そこになんのひねりもありません。いわゆるスパイ的な裏の話もありません。ただただ撃ち合い、殴り合い、追い掛けあう超アナログ世界です。
CIA はジェシカ・チャステインさん、BND はダイアン・クルーガーさん、MI6はルピタ・ニョンゴさん、DNI はペネロペ・クルスさん、CHN はファン・ビンビンさんです。
ボゴタ(コロンビア)
まず、スマホサイズのデジタルデバイスがコロンビアで開発されます。理屈はよくわかりませんが、といいますかもともとないんでしょうが、USBでパソコンにつないで操作し、今まさに空を飛んでいる飛行機を空中で爆破していました。世界中のあらゆる通信や電源を遮断できるということのようです。わざわざパソコンに繋がなくちゃ機能しないみたいです。すべてデバイスに内蔵すればいいのに(笑)と思いますが、まあ、そんなことはどうでもいい話です。それにネット回線が必要なんですから自己矛盾のような気もします。
で、そのデバイスの取引現場を DNI の部隊が急襲し銃撃戦になります。デバイスは DNI のエージェント DNI男の手に渡り、よくわからないままにパリに移動します。
パリ
そうした動きを嗅ぎつけた CIA と BND が悪党の手に渡らぬように(だと思う)と動き始めます。CIA は CIA女と CIA男のペアで行動します。ふたりは個人的にも関係を持っています。BND は父親がソ連(ロシアだったか?)の二重スパイであったことから組織内でも孤立しており、父親代わりのような上司のみとは信頼関係があるようです。
パリのカフェでは、DNI男、CIA、BND のデバイス争奪戦のようなことが始まりますが、誰がなんの目的で動いているのかはわかりませんでした。とにかく、CIA と BND の地下鉄線路内での追跡の見せ場があり、CIA男が殺されます。
これは誰でもわかると思いますが、後にあらゆる追跡シーンの映像があるのに CIA男が殺されたところの映像だけないと言っていましたので嘘です。伏線のつもりでしょう。
モロッコ(都市不明)
そして、場はモロッコに移ります。
その前に、残った CIA女 に MI6 の助っ人が入ります。MI6 はすでに現場(って何? 銃撃と格闘?)は引退した情報処理の専門家であり、ロンドンには一般人のパートナーがいるとの設定です。
モロッコでは DNI女が登場します。これはペネロペ・クルスさんがやっており、エージェントではなく心理学者という設定で拳銃も持ったことがないという設定です。本国では夫と子どもたちが帰りを待ちわびており、これがしきりに強調されています。
この段階でデバイスは DNI男が持っています。モロッコでも CIA、MI6、BND、そして悪党五つどもえの追跡劇になります。ただ、なにがどうなったのかよくわかりません。ストーリー自体もうまく描かれていなかったんだろうと思います。結局、DNI男が殺され、デバイスは悪党の手に渡り、しかし、DNI男は DNI女の指紋でしか開かないデバイスの追跡のためのまた別のデバイスを渡していました(なんじゃ、こりゃ?)。
ドリームチーム355誕生
デバイス追跡劇は悪党の手に渡るという最悪の結果となりますが、追跡劇の果てに、CIA、MI6、BDN、DNIの4人が一同に会することになります。ライバル意識のある CIA と BDN も互いに認めあい、協力するのが得策との判断で「The 355」の結成となります。
「Agent 355」というのはアメリカ独立戦争時の女性スパイのコードネームとのことです。いくつかドラマ化などされているものがあるようですので「The 355(原題)」だけで一定程度の知名度はあるのでしょう。
4人が親睦を深めあう酒盛りがあり(笑)、その最中にどこかで飛行機が墜落し、街が停電するという一報が入り、その後、CIA の上司が殺害され(CIA男の指示かな?)、再びチーム355の追跡が始まります。DNI は自分はスパイでも何でもなく、早く家族のもとに帰りたいと駄々をこねます。ここで、デバイス追跡のデバイスが DNI の指紋がないと開かないことが使われています。ただ、この追跡デバイスはこの後なんの役にもたっていません。
そして、場は中国へ移ります。4人が悪党のひとりを捕まえて拷問して口を割らせていました。なにか違うアイデアはないの?と思います。
上海
このあたりまできますともう話もむちゃくちゃですので説明不能ですがここでやめるわけにもいきませんので要点だけにしますと、なぜかデバイスは上海でオークションにかけられます。壺の中に隠されているそうです。そのオークションを仕切っているのがファン・ビンビンさん演じる謎の中国人(CHN)です。
オークションは、チーム355 と CHN のドレスアップを見せるためのシーンみたいなものです。また、ここで死んだはずの CIA男が登場します。CIA男は別の悪党に雇われて動いているということのようですが、死んだふりして今までなにをやっていたんでしょう?
結局デバイスは CIA男によって落札されます。なにも激しい銃撃戦までして何十人という人が死ななくてもよかったのにとは思います。
CIA男は雇い主にデバイスを渡しますが、偽物でした。CIA男とチーム355の対決です。CIA男は、すでにチーム355のメンバーのそれぞれ大切な人を人質に取っています。CHN にデバイスの在り処を言わなければ人質を殺すと脅します。順番は忘れましたが、MI6 のパートナー、BDN の上司があっさりと殺されます。次は DNI の家族です。DNI が泣き叫びます。CHN が教えると言い CIA男と出ていきます。CIA男は CIA女に一緒に来ないかと誘っていましたが、CIA女はきっぱり断っていました。突如モニターに CIA男たちの車の中が映し出されます。CHN の眼鏡からの映像です。
チーム355と CIA男チームの激しい銃撃戦です。チーム355の勝利、そしてデバイスは破壊されます。CIA男は撃たれたと思ったのですが…
2ヶ月後
よくわかりませんが、CIA男は CIA内部で出世しています。CIA男が家に戻りますと、チーム355が待ち構えています。CIA女の策略で毒をもられます。多分、死んでいないのでしょう。
チーム355はそれぞれのもとに帰っていきます。また会うことになるかもしれないと言い残しながら…。
続編などやめろ!(笑)
やるなら今の映画界に媚びないものにしてくださいね。
ジェシカ・チャステインさん、いろいろ見ている割には印象に残っていません。検索してみましたら、最近では「女神の見えざる手」「ユダヤ人を救った動物園」「モリーズ・ゲーム」と皆主役です。なのに不思議です。
ペネロペ・クルスさんはまるでアルモドバル監督とセットのような感じで見ていますので他の監督のものはアスガー・ファルハディ監督の「誰もがそれを知っている」くらいです。
ダイアン・クルーガーさんは、ファティ・アキン監督の「女は二度決断する」を記憶していますが映画自体はあまりよくなかったです。
ファン・ビンビンさん、脱税容疑で失踪なんて言う騒ぎがありましたが復活しているんですね。「ブッダ・マウンテン」くらいしか見ていないので、その後の派手な感じに驚いた記憶があります。
ルピタ・ニョンゴさん、「それでも夜は明ける」は見ていますが俳優としては記憶がありません。
ということで、女性主役のスパイアクションものを撮るのであれば、男性俳優の代わりをする女性俳優ということではない映画を撮ってほしいものです。