「CMディレクターとして活躍する宮川博至監督(公式サイト)」の初長編映画です。主演は三浦透子さんと東出昌大さん、脇に小林薫さん、浅田美代子さんという映画です。
CMと映画
まったくのたまたま(偶然)ですが、正月休みに「光を追いかけて」という、CMディレクターとして活躍されている成田洋一監督の映画をDVDで見ました。この映画もCMディレクターの宮川博至監督の初の長編映画ということです。
手法が正反対です。
CMにおいて一視聴者(あまり見ないけど…)としての感覚では、CMは長くて1分、短ければ5秒という時間感覚でクライアントから求められるものを伝えるというかなり難しい映像世界だと思います。ですので、CMディレクターというのは研ぎ澄まされた時間感覚で映像を見ている人たちなんだろうと思います。
「光を追いかけて」では、そうした映像感覚の鋭さを感じたのですが、この「とべない風船」ではそれとは正反対の時間感覚を感じます。
よく言えばゆったりした余裕のある時間感覚、悪く言えば冗長ということです。映像構成も、よく言えばていねい、悪く言えば説明的です。
おそらく、宮川博至監督は日々の仕事とはまったく正反対の時間感覚でこの映画を撮ろうとしたんだろうと思います。
真面目さだけでは映画にならない
物語は瀬戸内海の島で進みます。
凛子(三浦透子)が父親の暮らす島にやってきます。派遣社員として働いていたのですが雇止めにあい、将来に迷いを感じています。もともとは教師だったのですが、うまくいかず鬱になり教師をやめたと言っています。ただ、今は教師への再挑戦の可能性があり迷っています。
凛子の決断が映画のひとつの軸です。
憲二(東出昌大)は何年か前の集中豪雨で妻と息子を失っています。自分のせいだと、今も悔やみ続けています。土砂崩れに埋まった妻と息子の姿が目に焼き付いて、ことあるごとにその姿がよみがえります。
憲二の再生への決断がもうひとつの軸です。
そのふたつの決断が100分の時間に描かれていく映画です。これはつくられた物語ですから、当然結末は想像がつきます。凛子は再度教師の道を目指すでしょう。憲二は一定程度の踏ん切りをつけて再生への道を歩み始めるでしょう。誰もが想像できる物語を、ただただ語っていくだけでは映画になりません。この映画は物語を説明しているだけです。
真面目さは伝わってきますが、映画的ではありません。
三浦透子さん
つい2週間ほど前に「そばかす」を見ている三浦透子さんです。
そのレビューでも書きましたが、いい映画といい監督に出会うといいですね。