そんなには褒めないよ。映画評

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ラビング 愛という名前のふたり

ジョエル・エドガートンのストイックさにしびれる

2017/03/11

「ラヴィング対ヴァージニア州裁判」という史実の映画化です。

アメリカには(1967年時点で)異人種間結婚を禁じる法律というものがあり、それに反して結婚したヴァージニア州の黒人女性ミルドレッド・ラヴィングさんと白人男性リチャード・ラヴィングさんが起こした裁判とのことです。

このことは初めて知ったことですが、あらためて考えてみれば、これ、アメリカという国の多面性を実感させられる話です。

自由の国アメリカなのに、ある日突然(と見えるだけにしても)トランプさんのような人が登場するというのもその多面性のひとつでしょう。

監督:ジェフ・ニコルズ

リチャード・ラビングは、恋人のミルドレッドから妊娠したと告げられ、大喜びで結婚を申し込む。時は1958年、ここバージニア州では、異人種間の結婚は法律で禁止されていた。二人は法律で許されるワシントンDCで結婚し、地元に新居を構えて暮らし始めるが、夜中に突然現れた保安官に逮捕されてしまう。二人は、離婚か生まれ故郷を捨てるか、二つに一つの選択を迫られる──。(公式サイト)

とてもシンプルに、ストイックにつくられており、いい映画でした。

基本の物語は、(多分)ほぼ史実に基づいているのだと思いますが、夫であるリチャードのキャラクターは、その俳優の見た目からは想像できないストイックさで、それがこの映画のすべてでしょう。

リチャードを演っているのはジョエル・エドガートンさん、キンキーブーツのチャーリーであり、「ザ・ギフト」の監督、そしてゴードを演じていました。

どちらかといいますとこわもて系の顔立ちですが、この映画では無口で朴訥な左官職人を演じています。

それもあって、いつリチャードが爆発するかとひやひやしながら見ていたのですが、結局最後まで一途に妻や子供を愛する夫で通し切り、つまりそれがストイックに見えたということです。

二度ほど逮捕されるシーンがありましたが、警察に対してはもちろんのこと、弁護を買って出るアメリカ自由人権協会の弁護士たちが、二人のことよりもむしろ主義主張を重要視しているようなところにも、そして、徐々に権利意識に目覚めていく妻ミルドレッドとの意見の相違にも、決して腹をたてることなく、忍耐強く対して、結局それが妻や子どもたちへの愛情として表現されるというとても素晴らしい演技でした。

そしてまた、こういう歴史を変えたと言われるような物語をこれだけシンプルに撮ったジェフ・ニコルズ監督もすごいと思います。過剰にドラマチックなシーンがなくとも、俳優たちの力で映画全体に静かながらもぴーんと緊張の糸を走らせることができるということです。

ジェフ・ニコルズ監督、38歳、これからどういう映画を撮っていくのか楽しみですね。

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