そんなには褒めないよ。映画評

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はじまりの街

(ネタバレ)監督の自伝かと思うくらい感傷的で共感は難しい

2017/11/20

なんとなく見に行った映画ですが、今、公式サイトの監督紹介を読んでいましたら、「2012年に発表した『幸せのバランス』は、ヴェネチア国際映画祭に出品され」なんてあり、あれ、それ見ていますよと、この自分のブログを検索してみましたら、ありました。

「幸せのバランス/イヴァーノ・デ・マッテオ監督」イタリアの公務員は、月収1,200ユーロ、1ユーロ140円として168,000円?

で、読み返してみましたら、映画のことよりも日本の労働環境について「官製ワーキングプア」まで持ち出していることに自分ながら笑ってしまいました。

監督:イヴァーノ・デ・マッテオ

人生の新たなスタートに向けて歩もうとする母と子、そしてその二人をさりげなく見守る心優しき人たち。『はじまりの街』は、住み慣れた世界を捨て、見知らぬ土地で生きていく親子が、嵐を乗り越え、 確実に未来へと進み始めていくまでを描いた珠玉の人間ドラマだ。(公式サイト)

物語は、上の引用のように、ローマで暮らすアンナ(マルゲリータ・ブイ) と息子のヴァレリオ(アンドレア・ピットリーノ )が、夫のDVから逃れて、トリノの友人カルラ(ヴァレリア・ゴリーノ)のもとで暮らし始めるところから始まります。

序盤から中盤にかけては、なかなか映画の焦点が定まらず、もたもた感が強く、やっと終盤にかけて、ああ、この映画はヴァレリオの成長物語なんだなと分かってきます。

分かるのが遅い!と突っ込まれそうですが、それは一概に私のせいというわけでもなく、そもそもの夫のDVに対する映画のコミットが中途半端でよくわからないこと、つまり、冒頭に夫のアンナに対する暴力シーンがあるのですが、それが突発的なものなのか恒常的なものなのかがわからないこと、そして、ヴァレリオが、逃げた後でも父への愛情を持ち続け、そのことでアンナとの諍いに発展することの位置づけがいまいち整理されていないのです。

序盤に、トリノのアンナのもとに実の父親経由で夫からの手紙が来ます。手紙の内容は、もう一度やり直したいといった程度のものなんですが、後に、ヴァレリアがそれを見つけて、アンナが隠したことを責めて一悶着あります。

DVシーンが、夫の暴力シーンのワンカットとそれを見たヴァレリアの失禁シーンだけですので、なぜその程度の手紙をアンナが隠すのか、なぜヴァレリアは母親よりも父親への思いが強いのかがよくわかりません。

たしかに、多感な年齢ですので、どんなことであれ、大事になるのはわかりますが、映画なんですから、もう少し、親子関係やそれに関連する夫婦関係を描いてくれませんと、ヴァレリアにしてもアンナにしてもどんな人物で何を考えているのか見えてきません。

結局、見終わって整理してみれば、起きた出来事は全てヴァレリオに関わることだったのですが、映画としてうまく導かれていないということです。

さらに言えば、ヴァレリオに起きることが、監督の自伝ではないかと思うくらい感傷的なことばかりです。

ヴァレリオは新しい土地に馴染めずなかなか友だちもできず、ある日、公園近くで見かけた娼婦(街娼)に恋心に近い感情を持ち、最初はそっけなくあしらわれますが、幾度か会話を交わすうちに、デート(に近い感じ)の約束を交わし、遊園地で遊んだりします。

そして、後日、その娼婦が客をとり、その現場を目撃することでショックを受け、自暴自棄になったりします。

ありがちな(と言っても想像上の)少年時代の感傷的な思い出です。

これが唯一はっきりしたエピソードで、それ以外は、元セリエAの選手だったらしい向かいのレストランの主人との交流や学校へ行ってもなかなか友達ができなかったのがサッカーをきっかけにラストで友だちができたりすることくらいです。

ただ、それぞれの描写は結構丁寧ですので、その点に注目すればそれなりに納得できる映画ではあるのですが、如何せん、映画に芯がなく、DVにしても、親子関係にしても、思春期の悶々にしても、突っ込みが浅く、何やらはっきりしないまま最後までいき、あららあっけなくハッピーエンドにしてしまったのねという感じです。

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