花まんま

「花まんま」ってそういうことなのね…

今年2025年4月の劇場公開時には、鈴木亮平さんと有村架純さん主演ということでちょっと気になっていた映画、DVDレンタルのキャンペーンがありましたので借りて見てみました。

花まんま / 監督:前田哲

鈴木亮平さんと有村架純さん

主演のふたりが気になったという点では、鈴木亮平さんのうまさは感じられましたが、有村架純さんはあまり見せ場がなかったです。それよりもふたりの子ども時代の子役のうまいこと、そちらのほうが目立っていました。

それにしても鈴木亮平さんは本当に器用です。鈴木亮平さんを初めて鈴木亮平さんとして認識したのは「ひとよ」ですが、その後見ているのが「孤狼の血 LEVEL2」に「エゴイスト」ですからねえ、笑っちゃいます。

有村架純さんの場合も有村架純さんとして知ったのはかなり遅く、4年前にDVDで見た「花束みたいな恋をした」です。もちろんそれまでも名前は知ってはいたんですが意識に上ることはなく、なんと、その前に「何者」を見ているにも関わらず初めて見たようなことを書いています。

有村架純さんは多分長く活躍できる俳優さんになると思います。私にはあまり強い印象のない俳優さんですがどことなくいい感じがします。

その後は「前科者」、 DVD で見た「ちひろさん」ときていますが、この俳優さんは本当に裏を感じさせません。それだけに迷いのない人生を生きている役柄がよく似合います。

この「花まんま」もそうですね。迷いのないフミ子です。

ネタバレあらすじ

物語はリアルとファンタジーを融合したような話で、死んだ人の魂が子どもに乗り移り、その子どもが二つの人生を生きる話です。ただ、その子どもの人生を描いているわけではなく、そのふたつの人生のふた家族を描いています。

俊樹(子役、鈴木亮平)とフミ子(子役、有村架純)の兄妹は、早くに両親を亡くし、俊樹が親代わりとなってフミ子を育ててきています。俊樹にはそれがある意味生きている証しのようなところがあります。これがリアルなひとつ目の家族です。

ふたりとも成人し、フミ子が結婚することになります。それを機にフミ子の幼い頃の奇妙な出来事が明らかになっていきます。フミ子はフミ子でありながらもうひとりの女性喜代美の人生を生きてきたのです。

フミ子にはフミ子が生まれるときに死んだ二十歳くらいの女性喜代美の魂が乗り移ってしまっています。喜代美はバスガイドとして働いていたときに乗客を守ろうとして自らが命を落としたといいます。

フミ子は10歳くらいの頃、自分が喜代美でもあることを自覚し、俊樹とともに喜代美の父親のもとを訪ね、喜代美がよく作っていた花の弁当「花まんま」を父親に届けます。それまで娘喜代美の死を受け入れられなく、ろくに食べずに骸骨のようにやせ細っていた父親は、喜代美であるフミ子との出会いで再び生きる気力を取り戻したのです。これがファンタジーなもうひとつの家族です。

それ以降、フミ子は俊樹に内緒で喜代美の父親と手紙のやり取りを続け、結婚式を前にフミ子でありながら喜代美として結婚の挨拶に行くのです。

という、なんの迷いもなくふたつの人生を生きるフミ子=喜代美に対して、自分の妹を取られたような気になった俊樹の一人相撲が描かれていく映画です。そりゃまあ、兄妹として、その関係が生きがいである俊樹にしてみればたまったものじゃありません。

それはそうなんですが、ある意味、それは身勝手な思い込みというもの、行き過ぎちゃだめよという映画でもあります。

フミ子は喜代美の父親を結婚式に呼びたいと言います。俊樹は、俺達にはちゃんとした父ちゃんと母ちゃんだいるんだぞ! と怒り心頭です。

もうエンディングはわかりますね。俊樹が心をあらためて喜代美の父親を結婚式に呼ぶことになります。そして大団円、と思いましたらおまけがついていました。披露宴も終わり、新郎新婦がお見送りに立っているところに喜代美の父親が立ちますと、フミ子はどちらからいらっしゃいましたかと言うのです。

ドラマとしてはフミ子についていた喜代美があの世に旅立ったということですが、フミ子はフミ子として喜代美がついていることを認識していたわけで人格が入れ替わっていたわけではありませんので奇妙なことです。フミ子の俊樹への思いやりということも考えられますが、いずれにしてもこの手の映画としてはあまりいい終わり方ではありませんね。

感想:「花まんま」ってそういうことなのね

という、スピリチュアルな内容でありながらなんの衒いもなく現実の話として描かれていく映画です。その点はおもしろいのですが、兄妹愛や家族愛が普遍のものであるかのような描き方はドラマとしてはちょっとファンタジー過ぎるということも言えます。

感動ものとしてはラストで失敗しています。俊樹の新婦側代表あいさつも意図不明のグタグタ挨拶ですし、すでに書いたフミ子の記憶喪失もドラマ内の人物たちと同じように見ていてもシラーっとなります。

一ヶ所、子役の兄妹ふたりが喜代美の家に行き、「花まんま」の弁当を差し出したときにはさすがにウルっときました。「花まんま」ってそういうことだったのねと。