メドゥーサ デラックス

この映画、トレーラーがよくできています(笑)。

メドゥーサ デラックス / 監督:トーマス・ハーディマン

カメラはメドゥーサの蛇のように…

年に一度のヘアコンテストでひとりのヘアスタイリストが頭皮を剥がれて殺されたという設定で、一体犯人は誰だとカメラが会場内をワンカット(ワンショット)で、それこそメドゥーサの蛇のように狭い廊下やら階段やらをクネクネと動き回る映画です。

あえて「設定で」と書いたのは、あまり、いやほとんど殺人事件はどうでもよくなっている映画だからで、多分やろうとしていることはヘアスタイリストたちを人間生態学的に描こうとしたんだと思います(笑)。

死体もでてきませんし、犯人が誰かもどうでもいいようですし、警察がきているらしいのですが誰も事情聴取されることもなく進みます。ですのでミステリーというわけではなく、ヘアスタイリストたちの裏話や噂話が次々に人が変わって繰り広げられていくだけです。ただ、会話内容はまったく記憶していませんので、あるいは重要なことが語られていた可能性もあります。まずないとは思いますが…(笑)。

ワンカット(ワンショット)撮影…

ワンカットというかワンショットというかはこの際置いておくとして、時々この撮影手法に囚われる監督、あるいは撮影監督がいます。

最近ではレストランのオープニングを90分ワンカットで見せるという「ボイリング・ポイント/沸騰」がありましたし、過去には「ヴィクトリア」「マジシャンズ」、それにワンカットで撮ったように見せていた「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」や「1917」という映画もありました。

この映画も90分くらいはカットを割らずに連続した映像のように見せて撮られています。

たとえばこんな感じです。コンテスト会場の控の一室でヘアスタイリストがモデルのスタイリングをしながらもうひとりのスタイリストと駄弁っています。しばらくすると警備員の男がティッシュはないかとやってきます。ティッシュをもらった男が部屋を出ていこうとしますとカメラもその男の後について出ていきます。前後正確ではありませんが、その男が廊下をグルグルしたり、階段をグルグル下りたり上がったりするとしますとカメラもそれについてグルグルします。そしてその男が次の誰かに出会いますとカメラはその次の誰かについていき、その人物がどこかの部屋に入りそこにいる人物と駄弁ったりするところを撮るといった具合でどんどんとつながっていきます。

たしかに面白いところもありますが、さすがにパターンが同じですし、会話内容もさして重要とも思えませんし、一番の問題は、移動シーンがかなり長い上にただただ人物の後をついていくだけというところかと思います。さらにその移動シーンが何度も出てくるというのもその意図をはかりかねます。

ディスコダンスシーンのセンスで撮っていれば…

結局、最後になり警備員の男がなにか告白していましたが記憶がありません(笑)。クスリでいっちゃっていました。

そして、多分一年後でしょう、ヘアコンテストが行われます。ゴスペルが歌われたりと盛り上がっているようないないような、で終わります。

エンドロールは出演者全員のディスコダンスです。使われている曲は1970年代にヒットしたジョージ・マックレーの「Rock Your Baby」と「Don’t you feel my love」です。

ワンショットではなく、このエンドロールのセンスを軸に描けば結構面白い映画になったように思います。いずれにしても初の長編で BBC Films と BFI が製作についているのであれば、きっとなにか光るものがあるのでしょう。次回作期待です。

※スマートフォンの場合は2度押しが必要です

※スマートフォンの場合は2度押しが必要です