そんなには褒めないよ。映画評

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ヴィクトリア/セバスチャン・シッパー監督

140分ワンカットが売りのひとつだとは思いますが、100分に編集すればもっと良くなったかも…

2016/07/05

ネタバレになりますが、ストーリーを書きますと、

やや訳ありでスペインからベルリンに来て3ヶ月のヴィクトリアは、さみしさを紛らわそうと出掛けたクラブで、4人組の青年たちと出会います。多少の戸惑いを感じながらも、人恋しさゆえか、誘われるままに、4人とともに夜明け前のベルリンをふざけ合いながらさまよい、やがて、そのうちのひとりゾンネに親しみを感じるようになります。
まもなく夜も明けようかという頃、仲間のひとりボクサーが、刑務所で世話になった男から銀行強盗を強要され、ヴィクトリアも巻き込まれてしまいます。
強盗そのものは成功するも、そのまま逃げおおせるわけもなく、警察に追われ、ついにはヴィクトリアとゾンネの二人となり、ホテルに逃げ込みます。しかし、すでにゾンネは銃弾を受けており、やがて息をひきとります。ヴィクトリアは号泣しつつも、ふっと立ち上がり、お金の入った袋を手に夜明けのベルリンの街へひとり出てゆきます。

クライム・サスペンスという形式を突き破り、スリルと臨場感を体感させる衝撃作。ベルリンを舞台に、夜明け前のストリートで出会ったスペイン人のヴィクトリアと地元の若者4人組が、予測不可能な極限状況へと突き進んでいく2時間余りの出来事を、全編ワンカットという驚異的な手法で描出。視覚効果に頼ることなく、完全リアルタイムの撮影を成し遂げた映像世界は、まさに奇跡と言うほかはない。(公式サイト)

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この映画、全編140分がワンカットで撮られていることが売りになっています。

それが事実かどうかは分かりませんが、というより、ワンカットであるかどうかなど、見ていて頭をよぎることなどほとんどなく、むしろそれにこだわっているとするなら、それがマイナスになっているように思います。

見るものを圧倒する素晴らしいシーンがいくつもあります。

ヴィクトリアがマドリッドからベルリンへやってきたわけは、ピアニストとして挫折したからですが、彼女が、ゾンネの前でリストのメフィスト・ワルツを弾くシーンは本当にしびれます。まあ、映画の流れ的には、あそこまでマジで弾くか?(笑)といった場面ではありますが、とにかくグッときます。

ゾンネら3人とヴィクトリア、ひとりが酔いつぶれたために3人となり、ヴィクトリアが運転手として銀行強盗に行くんですが、怖そうなお兄ちゃんたちから銀行強盗を強要された後の車の中のパニック状態、このシーンもかなりいいです。

その他、成功した後のクラブでのハイテンション加減も面白いですし、街中のちょっとしたシーンでもハッとするところがたくさんあります。

反面、ワンカットにこだわっているからでしょう、いらないんじゃないのと思えるシーンもたくさんあります。

ベルリンの街を動きまわるような物語ですから、当然手持ちカラメラで追うことになり、内容から言っても激しく動きまわりますので、ブレも激しく、時にピントもずれたり(気になることはほとんどないけど)します。

ですから結局、ワンカットであるかどうかなんてどうでもよくなります。逆に言えば、あの映像ならワンカットで撮らなくても、そう見せることだって難なくできるでしょう。

ただ、俳優たちがワンカットを意識しているから(だと思う)撮れた画もたくさんあると思います。ですから、それを活かすためにも、ベストのタイミングに編集して、圧倒的な緊迫感のクライム・サスペンスにすればよかったのではないかと思います。

たとえばラストシーン、こうしたクライム映画のラストとしては、「俺たちに明日はない」に勝るものはないのですが、でも、この映画のラストも、ああ、もうちょっとなのに……と、悔しくなるくらいには良かったです(笑)。

ワンカット撮影で思い出すのは、ソン・イルゴン監督の「マジシャンズ」ですね。あれはワンカットが活きていました。

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