ラプソディ・ラプソディ

知らない間に結婚していた!? よりも心に傷を持つ者同士のラブストーリーだった

知らない間に結婚していたという基本プロットが面白いなあと思って観た映画です。それに俳優でもある利重剛監督って誰? と思ったことも観ようと思ったひとつの理由です。この映画にも俳優として出演もされており、ああこの人かとわかりました。たくさん見ていますが名前と顔が結びついていなかった方でした。

ラプソディ・ラプソディ / 監督:利重剛

ネタバレあらすじ

監督作もたくさんあるんですね。知りませんでした(ゴメン…)。

「クロエ」「さよならドビュッシー」などの監督作と紹介されていますのでどちらか一度観てみましょう。

で、この「ラプソディ・ラプソディ」です。

本人が知らない間に結婚していた! がドラマの発端となれば、一般的には、誰が? なぜ? とドラマは進んでいくんだろうと想像します。

でも、この映画は違いました。もちろん、誰が? なぜ? は明らかになりますが、このドラマのポイントは赤の他人であった二人が紆余曲折を経て実の夫婦となる過程を見せるところにありました。その点ではラブストーリーですね。

ブラックホール幹夫

知らない間に結婚させられたのは夏野幹夫(高橋一生)、映画冒頭は叔父大介(利重剛)との会話シーンから始まり、幹夫は結婚というものをまったく考えていないことが明らかにされます。人物像としては結婚どうこう以前に何を考えているかわからない空虚な人物に見せています。ただ、いつもニコニコしています。

その幹夫がパスポート取得のために戸籍謄本を取りますと、妻繁子の記載があります。ここでも驚いたり、職員に抗議したりの態度を示すわけではなく、とにかく淡々と目の前で起きることはそのまま受け入れるブラックホールのような幹夫です。

繁子はあっけなく見つかります。あれは通勤途中の店でしょうか、繁子は花屋で働いています。幹夫を見た繁子は逃げます。幹夫は追っかけます。逃げられます。

後日、ふたたび花屋を訪れますと、店長ゲイチ(芹澤興人)が繁子には遠くへ行ったと言うように言われているが実は自分の家にいると教えてくれます。ゲイチは自分はゲイであると言っています。

それにしても、男女の関係がないことを示すためにゲイであることを使ったり、ましてやいわゆるオネエ言葉の人物にするのは価値観がが古すぎますし、よくないですね。

とにかく、幹夫はゲイチの家で繁子と対面します。

エナジーバンパイア繁子

その後の展開はあまり細かくは記憶していませんが、二人のまわりに大介とゲイチを置いて二人の関係が進むように後押しするというドラマパターンです。

繁子が勝手に婚姻届を出した理由は単になにかいいことがあるかも知れない、何かが変わるかも知れないということでした。なぜ幹夫にしたかはレンタルビデオ屋で働いているときに幹夫は必ず丁寧にありがとうございますと言っていく人だったからということです。

その後、幹夫が妻の戸籍(改製原戸籍…)を取ることで繁子の過去が明らかにされます。繁子は親のネグレクトでいろいろあり、最後は祖母(義理の父の母…)に育てられています。あるいは児童養護施設で育ったのかも知れませんが、この映画はそうしたことは説明で済ませており、繁子が自分のまわりからみんないなくなってしまうということから人を信用しない考え方になっているとしています。

そしてあれこれあって繁子が怒り出し店長の家を出ていくとなり、でも行き先がないからと幹夫の住まいにやってきて仕事が見つかるまで置いてくれと言い、二人の共同生活が始まります。

トラウマ症候群の幹夫

繁子は常に攻撃的で幹夫でなければ1時間もあれば関係は破綻しているだろうエナジーバンパイアです。

大介によってエナジーバンパイアにも耐えられるブラックホール幹夫の過去が説明されます。幹夫の母は精神を病んでおり自殺で亡くなっています。幹夫は母親の自殺はその前日に自分が母親を責めたことだと思い込んでいます。それ以降幹夫は絶対に怒らないと心に決めており、そのためにまわりで起きることに過度に反応しないよう自分をコントロールしているということです。会社であだ名にされている鼻をこすることもそのひとつと言っていました。

しかし、ついに幹夫の堰が切れました。挑発しまくる繁子に覆いかぶさり怒鳴ります。あれ、なんと言ったんでしょう? 聞き取れませんでした。

幹夫は叫び、暴れ、物を壊しまくります。そして入院です。鎮静剤を注射され眠る幹夫、繁子は涙を流しながら幹夫の頬にキスをして去っていきます。

再会、そして…

幹夫は日常に戻ります。

幹夫の会社に毒島りずむ(池脇千鶴)という女性社員がいます。映画前半から幹夫に気がある人物として登場し、手作りのぬいぐるみをいくつもプレゼントしてきています。

そしてある日、りずむが弁当をつくってくれて一緒に食べながら話すことになります。幹夫が自分は結婚しているといつもどおりに何の衒いもなく話すことでりずむが驚くというパターンを見せた後、妻は自分のクレジットカードを持っていなくなっており、2ヶ月に一度の頻度で100円、1,000円程度の買い物をしていると話します。

りずむは、それは探しに来て欲しいということだと思うと言います。

幹夫は買い物履歴から地方の花屋で働く繁子を見つけ連れ戻します。そして二人は幸せに暮らしましたとさ。

とはいかずにもうひと山ありました(笑)。幹夫が会社を辞めます。罷めさせられたと勘違いした繁子は会社に殴り込みます。誤解だとわかり自分が嫌になった繁子は幹夫の前から逃げようとします。幹夫は追いかけ、繁子に花屋をやろう、花を好きだろ、根をはってどこにもいかないからと言い、繁子の頭をナデナデします。繁子は毎日ナデナデしてくれるならと答えます。

オイオイと言うしかないラストシーンでした(涙)。このナデナデは対等じゃない関係を示すナデナデですね。

感想、考察:面白いけれども心に残らない

結局、知らないうちに結婚届を出されたことやなぜそんなことをしたのかにはほとんど意味はなく、単に二人が出会うためのきっかけに過ぎなかったようです。

心に傷も持つ者が出会い、心の扉を開いていくラブストーリーでした。

ドラマとしてはテンポよく展開させていますので見やすいです。ですので映画よりもテレビドラマ向きの話だと思います。大介、ゲイチ、りずむといった脇役の人物像も二人を結びつけるために作り込まれていますので映画全体としても現実感は薄いです。

ですので、面白いけれども心に残るものはあまりない映画ということです。

ところで繁子を演じている呉城久美さん、たくさん見ている俳優さんですが記憶に残っているものはなく、でもこれからは見れば名前と一致することになるでしょう。