「海辺の彼女たち」の藤元明緒監督、ロヒンギャ難民を撮ってみたが…
2021年に「海辺の彼女たち」という映画を観ている藤元明緒監督の最新作、ロヒンギャの姉弟が難民キャンプからマレーシアの親族を頼って密航する様子を描いたドラマです。様子、まさしく様子でしかない映画です。

映画的技術が足りない
前作の「海辺の彼女たち」は技能実習生として来日した女性が思わぬ妊娠をするという映画でした。
数年前の技能実習生に関する問題といいますと多くは過酷な労働環境やそもそもの来日システムに注目があたっていましたが、この「海辺の彼女たち」はその問題も描きつつ、3人のうちのひとりが思わぬ妊娠をして結局堕胎するという点に焦点を当てた映画でした。その点では、ある意味先進的だったのかも知れません。
書いたレビューに的はずれな点があったような気がしていましたのでよく覚えています。先進性があるとして、その先進性がうまく表現できていないと感じたんだろうと思います。
読み返してみました。的外れじゃなかったかも知れません。今回の「ロストランド」でも同じことを感じているのです。
「率直に言って、見ていても強く伝わってくるものはありません」
結局、どちらの映画も何をやろうとしているのかが不明確ということです。映画の製作環境は自主映画的と思われますのでつくり手に強い思いがなければ続けられないわけですから、言い方を変えれば、その思いを表現する映画的技術が足りないということになります。テクニック的な意味を含めたトータルな表現技術が足りないという意味です。
特にこの「ロストランド」はダメですね。
ロードムービーと言われてしまった
難民が生死をかけて自らの生きる場所を求める旅を「ロードムービー(映画.com)」と表現されてしまうことにこの映画の持つ問題点が明確に現れています。
出発点は難民キャンプだったみたいですね。そうだとわかるなにかを言っていたのか記憶がありませんが、姉ソミーラ9歳と弟シャフィ5歳は叔母(らしい…)に連れられてマレーシアに向かいます。
公式サイトにはバングラデシュの難民キャンプとあります。マレーシアには家族(とだけある…)がいるとあります。
バングラデシュからマレーシアに陸路で向かうにはミャンマーとタイを抜けなくてはいけませんのでまずは海路ということなんでしょう。1週間ほどかけて上陸します。
タイです。なぜタイなのかはわかりませんが密航斡旋業者がタイ人ということなんでしょう。上陸中に警察か国境警備隊に追われて姉弟と他2、3人になります。タイからは陸路でマレーシアに向かいます。そしてあれこれあって姉弟ふたりだけになり、リヤカーを引きながらのサバイバルロードムービーとなり、森の中で同じくマレーシアを目指すロヒンギャたち集団に助けられるも最後には弟シャフィひとりとなり、当て所なくさまよう姿で終わります。
感想:ドキュメンタリーで撮ってみたら
それらしき画を撮って並べてみても映画にはなりません。
ところで藤元明緒監督のコメントを読みますと、「十数年間、私は東南アジアのミャンマーで映像制作の仕事を通じて関わって」きたとあります。さらに、
ミャンマーではロヒンギャの話題を口にすること自体がタブーとされる風潮があり、私自身、仕事を失うことへの恐れから、声を上げることができませんでした。自分の立場を守るために、身近で起きている異常な出来事を見て見ぬふりをしていたのです。
その罪悪感こそが、『LOST LAND/ロストランド』制作の原点となりました。
(https://www.lostland-movie.com/)
とあります。
あまり厳しいことを言うのもなんですが、残念ながらこの映画から藤元明緒監督の罪悪感を感じることはありません。
ミャンマーを活動拠点としているとありますので、ドラマではなくロヒンギャの生の声を撮ってほしいものだと思います。
ドラマで撮るのであればこんな映画もありますということで。