ローリング/冨永昌敬監督

映像的にも、音楽的にも、編集にしても隙がなく完成度は高い。三浦貴大も柳英里紗もいい。が…

映画の中のナレーションというのは、説明的になったり、流れのリズムを壊したりすることが多く、あまり良い印象はないのですが、この映画は使い方がうまいですね。

導入でうまい具合に人間関係をわからせ、「そして、これが今の私」とつがいの鳥を見せ、「ん?何が起きるの?」と興味を持たせます。

権藤を演じている川瀬陽太さんの声のリズムも映像にぴったりで、その後に続く草むらをパンしていくタイトルバックもいい感じです。

続いて登場する寛一役の三浦貴大さんが自然体でいいですね。山口百恵さんの息子くらいの認識しかなく、出演作の何本かは見ているようですが、ほとんどこれといった印象はありませんでした。

そして、みはり役の柳英里紗さん、こちらも2本見ているようで、「惑星のかけら」のあの女性の俳優さんでした。

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この映画では、やや水っぽさを出しつつ、ボブの髪からのぞく横顔が魅力的で、男の庇護対象と思わせつつ、いやこの子はきっとしっかり考えているよと男に思わせるタイプの女性をうまく演じていました。このキャラは、なるほどねと最後に納得させられます。

といった感じで映画は進み、 

水戸のおしぼり業者で働く貫一は、10年前学校内で盗撮事件を起こし行方をくらましていた元高校教師の権藤と再会する。

権藤はかつての教え子たちにつかまり糾弾され面目を失い、さらに東京から連れて来ていたキャバクラ嬢みはりに貫一が一目惚れし権藤から奪ってしまう。

一方かつて権藤の盗撮した動画に録画されたある人物に目を付けた貫一の悪友たちによって、芸能事務所を巻き込んだ思わぬ騒動へと発展していく…。(公式サイト

のですが、さすがに中盤から飽きてきます(笑)。

ソーラーパネルへの投資話や芸能プロダクションのマネージャーが出てくる後半になりますと、やたらギャグが多くなり、笑えはするものの、映画としてはとたんにつまらなくなります。

前半の雰囲気のまま、後半にもうひとつ山場をつくってテンポを上げればよかったのではと思います。

映画づくりの完成度は高いです。隙がありません。映像的にも、音楽的にも、編集にしても、粗を探すのが難しいでしょう。

でも、終わってみれば、面白かったけど、で、何なの?という感じで残念ではありました。

考えてみれば、冨永作品を劇場で見たのは初めてで、「パビリオン山椒魚」はDVDでしか見ておらず、といっても途中で挫折、「乱暴と待機」は、やはりDVDで、面白かったのですが、なぜか冨永監督より原作者の本谷有希子さんに興味を持つという、結局、あまり性に合わないということのようです。

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