そんなには褒めないよ。映画評

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知らない、ふたり/今泉力哉監督

アイドル映画ぽいけれど、意外にもシニアにもいけますよ、この恋愛シミュレーション映画(笑)。

2016/02/26

今泉力哉監督、名前は何年か前から見聞きしていたのですが、機会に恵まれず見逃していました。

で、「知らない、ふたり」、上映館の解説のチラシ画像、下の引用と同じものですが、それが結構いい感じだったのと「恋愛群像劇を得意とする」とのコピーに惹かれて見に行きました。

で、結果ですが、多分、次からの書き出しにあまり良いことを書けそうもありませんので、先に書いておきますと、良かったです(笑)。本がよく練られています。

『サッドティー』(14)で男女の一筋縄ではいかない恋愛模様を描き注目された今泉力哉監督。『知らない、ふたり』は、国内に留まらず世界でも注目される監督だけに韓国からも俳優陣を迎え入れ、見るものを惹き付ける独特な会話のテンポと巧みな時間軸の表現で、彼の真骨頂でもある恋愛群像劇の新たな到達点となる作品へと仕上がっている。(公式サイト)

ただ、前半はかなり危なく(笑)、後悔が頭をもたげ始めていました。

なにせ、始まってしばらくは「何これ? アイドル映画?」と、場違いなところへ来てしまったかもと思わせる作りだったんです。

事実、今知ったんですが、レオンを演っているのは、NU’EST というグループのレンくんというアイドル(かな?)なんですね。綺麗ですし、金髪のせいもあるのでしょう、透明感があり、いい感じなんですが、何となく画の中の収まりがよくないんです。

まあそれも、彼が悩みを抱えていることの現れでもあるのですが、冒頭からしばらく続く彼の日常、アパートと仕事場との往復や昼食のためのおにぎりを握るところやそれをひとり公園で食べるという画の繰返しが単調で集中できないんです。

さらにその後も、彼が公園で出会った女性に恋をし、毎日後をつけるシーンが同じ撮り方で幾度も繰り返されたりします。

今は、その手法も(今でもなぜかは分かりませんが)何か意図があってのことだろうとは思いますが、見ている時は何か工夫はないの?と思い続けていました。

物語の展開は、今となってはコトの順番など記憶していませんが、男4人女3人、誰かが誰かを好きになるとその誰かが実は別の誰かを好きで、その別の誰かはまた別の誰かを好きなるという、わけの分からない(笑)話で、結局、ここら辺りまできますと、「恋愛シミュレーションゲームか!?」と、ゲームなどスーパーマリオしかやったことがないのに、あるいはゲームやアニメってこんな感じ?と思わせられ、ふと、見方を変えてみたらどうだろう?と自分に言い聞かせ、たとえば、普通は一度会っただけでラブレターは渡さないよな、ではなく、渡したらどうなんるんだろう? また、普通は今付き合っている人がいるのですが、あなたを好きになりましたとは言わないよな、ではなく、言ってみたらどうなるんだろう? と考え始めたのが中盤で、それが理由というわけではないのですが、何やら映画自体がよく分からないけれど興味深く(おもしろく)なってきたのです。

多分、おもしろさの訳のひとつは、7人の人間関係をうまく絡めた脚本のせいでしょう。その絡みがみえない前半は退屈ですが、中盤辺りではっきりしてくる絡みきった関係が徐々にほどけてくる後半はとても気持ちいいです。

シーンをとことん7人の関係に絞り、余計なシーンを入れず、エキストラもほとんど使わず撮っているのも、この恋愛ゲーム的ドラマによくマッチしており、また韓国人のミュージシャン(俳優?)を使うことで告白のベタさが薄まっているのも、結果として成功していると思います。

ただ、今泉監督、人間関係のリアリティさには何やらこだわりがあるようで、加奈子(木南晴夏)と荒川(芹澤興人)の会話シーンは、かなり力を入れて撮っているのではないかと想像します。アドリブっぽく感じますが、多分脚本にある台詞でしょう。うまいです。台詞自体は忘れてしまいましたが、相手を思いやることなのか自分へのエクスキューズなのかといった台詞も結構深いですね。

レオンを好きになる小風役の青柳文子さん、別の男性からの告白を断るあたりから突然キャラを変えたように見える妙な自然さも監督のこだわりなのか、仕事とプライベートを分ける女性の演技なのかよく分かりませんが、いい雰囲気の俳優さんでした。

ただ、そもそも告白に断るのに飲みに誘っちゃダメでしょう(笑)。

ということで、恋愛のある一面を浮かび上がらせている映画ではありますが、恋愛もこうやって思った矢先に告白してしまえば楽なものとはいえ、それですと残念ながら、アドレナリンがドバっと出て突然息苦しくなったり、居ても立ってもいられなくなったり、寝こんだりする(かどうかは知りませんが)恋の病を味わうことは出来ませんよ(笑)。

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