牡蠣工場/想田和弘監督

観察映画なら、何も語らず、映画で観察眼を主張すべきでしょう。

想田和弘監督、初めてです。「選挙」を何となく知っている程度なんですが、ウィキを見ましたら華々しい活躍なんですね。

「観察映画」というスタイルでドキュメンタリーを撮っているとのことで、こちらでその意味合いについて語ってみえます。

観察映画とは (想田和弘著 『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』 (講談社現代新書)より抜粋)

想田版「純潔の誓い」といったところでしょうか。

舞台は、瀬戸内海にのぞむ美しき万葉の町・牛窓。岡山は日本でも有数の牡蠣の産地だ。しかし、かつて20軒近くあった牛窓の牡蠣工場は、いまでは6軒に減り、数年前から中国人労働者を迎え始めた工場もある。
東日本大震災で家業の牡蠣工場が壊滅的打撃を受け、宮城県から移住してきた一家は、ここ牛窓で工場を継ぐことになった。そして2人の労働者を初めて中国から迎えることを決心。果たして牡蠣工場の運命は?(公式サイト

145分、約2時間半、やや長めの映画ですが、見ていて長さは感じませんでした。

後は…、正直書くことはないですね(笑)。 

牛窓にはああいった生活があり、労働力としてやってくる中国人にはああいう生活があるんだということ以上に感じることはありませんでした。上の「観察映画」の意図を読む限り、それはそれで良いということなんでしょう。

ただ、本人が書いているように、どこまでいっても作られたものは「主観」の産物なんですから、想田監督の「観察眼」をはっきりさせてもらった方がいいとは思います。

公式サイトには「グローバル化、少子高齢化、過疎化、第一次・第二次産業の苦境、労働問題、移民問題、そして震災の影響」などと書いておきながら、映画では、たとえば、中国人労働者(研修生制度なのかどうかもよく分からないのですが…)の立場に何のツッコミも入れることもなく、過疎化と言いながら、実はさほど過疎化しているようにも見えなく経営者は皆若いですし、震災の影響と言いながら、渡辺さんがなぜ牛窓に移住してきたのかツッコむこともせず(放射能が怖いと語っていましたが、南三陸町は東京ほど離れています)、ただ「観察」するだけというのは、なぜあなたはカメラを回すのかとの違和感があります。

結局、撮って公開するものは、どこまでいっても、その人の主張(声高に叫ぶという意味ではない)なわけですから、そこに主張はありません的10箇条の方法論を語って、でもやっぱり主観が入っていますよ、なんてのは、悪く言えば言い訳、居直りの類です。

言い過ぎました。